エプソントヨコムは9月9日、自動車の車体姿勢検出用途向けに125℃まで対応可能なジャイロセンサ「XV-9000」シリーズを開発したことを発表した。すでにサンプル出荷を開始、2011年12月からの量産出荷を計画している。

エプソントヨコムのプロダクトマーケティング部 部長である宮澤健氏

エプソントヨコムのプロダクトマーケティング部 部長である宮澤健氏は、ジャイロセンサの市場動向について、「iPhone 4に3軸デジタルジャイロが搭載されたことをから、今後、モバイル機器にジャイロセンサが搭載されることが多くなり、市場の急速な拡大が見込まれる」と説明する。中でも、「モバイル用途におけるセンサ活用アプリケーションのニーズは、"Motion""ナビゲーションDR(Dead Reckoning:推測航法)""IS(Image Stabilize System:手ぶれ補正)"の3つになると見ている」(同)ということで、ユーザインタフェース(UI)にISとDRが組み合わされたスマートフォンなどが主流になっていくと予測する。

しかし、これまでのカーナビゲーションシステムで搭載されてきた"Car DR"に比べて、人間の移動などを検知する"PDR(Pedestrian DR)"では、移動速度の問題や対象の大きさが小さくなる分の要求精度の向上が求められるようになる。そのため、例えば産業技術総合研究所(産総研)では、さまざまなセンサを組み合わせたデータを処理し、そこにGPSやRFIDなどによる絶対位置情報などと組み合わせることで推測する研究などが行われている。

スマートフォンにジャイロセンサが搭載されるようになったことから、今後は市場が急拡大していくとの予測へと見通しを変更。アプリケーションとしても、人間の動きにも対応できるような精度が求められるようになるものがでてくるとの見かたを示している

同社では、こうしたPDR用途にも対応可能な技術として独自技術である水晶素材をベースとしたMEMS「QMEMS」にダブルT型の素子構造を採用することで対応を図っている。これにより、駆動アームと検出アームを分離することが可能となり、「バランスのチューニングができるため、振動漏れを抑えることができるほか、駆動および検出の同一面内振動を利用することから、感度温度特性の向上が可能となっている。このためジャイロセンサに求められる止まっているときはきっちりと止まっていることを、早く動いているときは早く動いていることを幅広い温度範囲でできるようになっている」(同)と、自社の技術的な特長を強調する。

他社の水晶ジャイロおよびSi製ジャイロとの性能比較。ここにない項目として、コストはSiが有利、パッケージサイズもSiが小型化しやすいが、QMEMSも小型化はそれなりに可能としている。また、消費電力については、圧電素子を用いているため、ピエゾ素子などを用いるSi製に比べ、同一性能比で比べるとQMEMSが有利とのことで、高性能を求める分野での活用を中心に普及を図っていくとしている

こうした技術を同シリーズは搭載。ヨーレートセンサとしての検出範囲±100deg/sの「XV-9100XX」と、ロールレートセンサとして±300deg/sの「XV-9300XX」の2種類が用意されているほか、実装基板と検出軸方向の違いにより、水平方向検出用の「LP」パッケージ、鉛直方向検出用の「LV」パッケージの2種類のパッケージも用意しており、合計4種類のラインアップが提供される。

また、ダブルT型水晶センサ素子の採用により、-40℃~+125℃の温度範囲で安定した特性を実現することが可能となっており、AEC-Q100にも準拠、エンジンルームに設置することが可能となっている。

さらに、常時および起動時の故障診断回路を搭載。これにより、信頼性の向上が図られているほか、センサ素子とその支持構造の最適化を図ることで、耐振動特性や耐衝撃特性の向上を実現しているという。

「XV-9000」シリーズのパッケージ外観