液晶パネルは、PC用の液晶モニタはもちろん、薄型テレビの大部分の製品に採用されており、名実共に、現在のディスプレイパネルの主流方式となった。

実は、一口に液晶パネルといっても、いくつかの種類があり、特殊用途を除けば、現在の主流はTN型、IPS型、VA型の3タイプに分類することができる。それぞれの方式には、その原理からくる特徴があり、各液晶パネルメーカーは、それぞれの方式の長所を伸ばしつつ、弱点を克服するための研究開発を行うことで、性能や画質の向上に努めてきた。

サムスンはVA型を推進していくメーカーの1つとして存在感を増しており、自社製品のPC液晶モニタや液晶テレビ製品は、もちろんVA型を採用した製品モデルを主力としている。また、補足すれば、サムスンのVA型液晶は日本メーカーの液晶テレビ製品にも採用製品が多く、いわばサムスンはVA型液晶メーカーの代表格の1つとなっている。

本稿では、このサムスンのVA型液晶に注目し、その特徴を総合的に理解するために、まずは今一度、液晶パネルの構造から再確認していこう。また、VA型液晶が他方式とどう違うのか、相対的にも理解を深めてもらうため、TN、IPS、VAの3タイプの液晶パネルの動作原理を再確認してみたい。

液晶パネルの仕組み

TN、IPS、VA、いずれの液晶パネル方式においても、共通するのは、液晶パネルの上に無数の液晶画素が配置されるという構造だ。この液晶画素は、「フルHDの1920×1080ドット」などといった形で表される映像の表示解像度よりも細かい単位であり、これらは、こうした1ピクセルよりも小さいピクセル……という意味からサブピクセルと言われる。1ピクセルを構成するサブピクセルは赤、緑、青(RGB)が1個ずつだったり、あるいはそれぞれが複数ずつある場合もある。

これらの液晶画素を形成する根幹物質が液晶分子で、この液晶分子を規則正しく配列させるために配向膜と呼ばれる素材でサンドイッチされる。液晶分子は電界が与えられると、ある特定の方向に動く特性があり、これを実現するために液晶画素の周辺に電極を敷く。

ちなみに、液晶パネルに用いられる液晶素材は、液晶パネル方式によって異なり、なおかつ、各社独自のレシピによって構成されている。また、電極の形成の仕方も液晶パネル方式によって変わってくる。

偏光フィルタとバックライトにより液晶分子をコントロール

液晶パネル方式によらず共通なのが、液晶画素を偏光フィルタ(偏光板)でサンドイッチさせる構造だ。偏光フィルタとは一定の振動方向の光だけを透過させる光学フィルタのこと。光は立体的な振動をする波動特性があるが、光を液晶で制御しやすくするために、偏光フィルタで二次元的な光波だけを取り出して、あとは捨ててしまう。

液晶画素はそれ自体が発光しないため、映像を表示するためには光源が必要になる。通常、この光は液晶パネルの表示面とは反対側の背面に設けられることからバックライトとよばれる。サムスンの製品をはじめ、最近ではこのバックライトにLEDが用いられるようになってきていることは知っている人も多いはずだ。

バックライトからの光は偏光フィルタを通り、光波の振動方向が整えられ、液晶画素に導かれる。この光は液晶画素内部で液晶分子と遭遇する。液晶分子の配列は周辺に敷かれた電極によって発せられた電界によって変化し、光はこの液晶分子の配列方向の影響を受けてねじ曲げられたり、屈折したりすることになる。映像出力側(映像表示面側、ユーザー側)にも偏光フィルタが仕込まれており、液晶画素に入ってきた状態の光は、そのままでは出られない(=黒表示になる)。しかし、前述したように液晶分子の配列方向の影響で光の振動方向が変化すれば、偏光フィルタから出られるような光も出てくる。

すなわち、各液晶画素は、バックライトからの光を、液晶分子の配列状態をコントロールして、出口からどれぐらい漏れさせるか……を行うことで明暗の表示を行う。明暗の表示だけでは白黒映像になってしまうが、実際には各液晶画素には各液晶画素サイズの赤、緑、青(RGB)の色つきセロハンのようなフィルタをあてがっている。つまり、赤(R)の明暗の表示を行う液晶画素、緑(G)の明暗の表示を行う液晶画素、青(B)の明暗の表示を行う液晶画素がそれぞれ個別にRGB光を出すことになり、結果としてフルカラー表示が行われるのだ。

液晶パネルの基本構造