スティーブ・ジョブズ氏、あのこだわりを捨てる!? author=Yoichi Yamashita title=iTunesのロゴからCDが消えた日 - Appleスペシャルイベント詳報 tag=Apple,アップル,iTunes,iPod,iPod nano,iPod touch,iPod shuffle,Apple TV,iOS lead=Appleの音楽・映像関連スペシャルイベントは「これまでで最も大きなラインナップの変化」というiPod新製品の発表で始まり、メインはiTunes 10の音楽ソーシャルネットワーク「Ping」の発表だった。同社はiTunesのロゴを変更し、01年から積み重ねてきたiTunes/iPodの成功を土台に、ポストCD時代の新たな音楽戦略を打ち出した。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@001.jpg,001l.jpg| |M@登壇した直後、客席にSteve Wozniak氏を見つけて話しかけるJobs氏。タートルネックじゃない……| 1日(米国時間)に米サンフランシスコで開催されたAppleの音楽・映像関連スペシャルイベント。キーノートのステージに現れたSteve Jobs氏の雰囲気がいつもと違っていた。どこかスッキリとしている。おなじみのグレイのニューバランスのスニーカーにジーンズ、そして黒い長袖の……んっ、タートルネックじゃない。すごく微妙だが、Jobs氏のファッションが変わったのは個人的にはいきなりサプライズだった。それが予兆だったとは言わないが、この日のキーノートでは大部分の時間で"チェンジ"が語られた。 まずアップルストアの最新情報を紹介したあと、Jobs氏は最初に来週リリース予定の「iOS 4.1」を取り上げた。近接センサーとBluetoothの問題のほか、iPhone 3GでのiOS 4のパフォーマンスの問題を修正したという。さらに写真のハイダイナミックレンジ合成、HD動画のWi-Fi経由のアップロード、TV番組レンタル、GameCenterなど、マイナーアップデートながら数多くの新機能を備える。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@002.jpg,002l.jpg|I@003.jpg,003l.jpg| |M@アップルストアは、月に数日は1日の来店客が100万人を超えるという|M@アップデートを含まない新規のみのiOSのアクティベーション数| |I@004.jpg,004l.jpg|I@005.jpg,005l.jpg| |M@露出を変えた複数の写真を合成し、暗い部分の黒つぶれや明るい部分の白とびのない写真を実現するハイダイナミックレンジ合成|M@Epic Gamesが開発中の「Project Sword (コードネーム)」で、GameCenterを使った対戦をデモ。モバイルデバイスとは思えないグラフィックスがスゴい| 続いて「iOS 4.2」を初公開と、前半からサプライズ登場だ。同バージョンはiOS 4のすべてをiPadにもたらすアップデートになるという。またあわせて、印刷機能と「AirPlay」を追加する。AirPlayは、Wi-Fi経由でオーディオをストリーミングするAirTunesが進化したもので、新たにビデオと写真も扱えるようになる。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@006.jpg,006l.jpg|I@007.jpg,007l.jpg| |M@iPadにiOS 4の機能をもたらすiOS 4.2。11月リリース予定。iOSのアップデートを通じて、iOSデバイスは夏から秋にかけて変化し続けていく|M@iOS 4.2の印刷機能| ;;page;; 「iPod touch」ポータブルゲーム機市場でシェア50%超を達成 author=Yoichi Yamashita キーノートは早いペースで進み、開始から20分程度で「今日のアントレー、iPodに移ろう」(Jobs氏)となった。 iPodのこれまでの累積販売台数は2億7500万台を超えた。iPodが成功してきた理由の1つとしてJobs氏は「高い市場シェアを獲得しても、われわれは安住することなく、ユーザーにとってよりよい製品になるように、毎年iPodの改善に挑戦し続けてきたからだ」と述べた。そして「今年は、これまでで最も大きなiPodのラインナップの変化になる」と続けた。 まずiPod shuffleは、世代が進むごとに小型化を達成してきたが、第3世代のボタンレスは使いにくいというユーザーが多かった。だがVoiceOverとプレイリスト機能は歓迎されており、そこで最新の第4世代では、第2世代のコントロールパッドと第3世代のVoiceOver/プレイリストのいいとこ取りをした。コンパクトで操作しやすく、手頃な価格というshuffleに求められる条件をすべて満たしたとアピールする。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@008.jpg,008l.jpg|I@009.jpg,009l.jpg| ||2.M@iPod shuffle第2世代のボタンと、第3世代のVoiceOver/プレイリストをともに採用| iPod nanoは、もっとも人気があり、もっとも成功しているiPodだ。第5世代に至るまでに成熟しており、大胆な変化に挑まなければ改善は難しい。それは主力製品を失うリスクもはらむが、第6世代で新デザインにふみ切った。改善の方向は「より小さく、より使いやすく」。現行モデルから小型化するにはクリックホイールを捨てるしかない。画面だけが残された形で快適な操作を実現するために、nano向けのマルチタッチ・ユーザーインターフェイスを開発した。本体は46%小さく、42%軽量と"小型化"を達成、あとは"より使いやすく"の部分に対するユーザーの反応を待つ。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@010.jpg,010l.jpg|I@011.jpg,011l.jpg| |M@完成度の高くユーザーからの評価も高いiPod nano。それゆえに手を加えにくい|M@小型化を実現するために、クリックホイールを省くところからスタート| |I@012.jpg,012l.jpg|I@013.jpg,013l.jpg| |M@新iPod nanoのメイン画面(上段/ 下段左)、音楽ブラウズ画面|M@ラジオ(上段左/ 中央)、時計(上段右)、写真(下段左/ 中央)| iPod製品シリーズの歴史の中ではiPod nanoがトップセラーだが、昨年以降に限ればiPodの人気トップは「iPod touch」だという。「携帯機能のないiPhone」と揶揄されたりもするが、契約にしばられずにiOSデバイスを使いたいという理由からtouchを選んでいるユーザーは多い。またティーンエイジャーでも買いやすいiOSデバイスになっている。そうした背景が、touchを使ったiTunes Storeからのゲームおよびエンターテインメント・タイトルのダウンロードが15億件という数字に現れている。Jobs氏によると、ポータブルゲームプレイヤーとしてtouchの売上げは、任天堂とソニーを合わせた数字を上回り、米国とグローバル規模の市場シェアでどちらも過半数を達成しているそうだ。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@014.jpg,014l.jpg|I@015.jpg,015l.jpg| |M@ポータブルゲームプレイヤー市場におけるiPod touchの市場シェアは50%超|M@iPhone 4に相当する機能を搭載する新iPod touch| 最新モデルは、エンターテインメント・デバイスとして一段と進化させた。RetinaディスプレイとA4チップを備え、Game Centerを利用できるiOS 4.1搭載で登場する。ユーザー待望のカメラを内蔵し、iPhone 4に続くFaceTime対応デバイスになる。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@016.jpg,016l.jpg|I@017.jpg,017l.jpg| |M@iOS 4.1、A4プロセッサ搭載でモバイル版iMovieも利用可能|M@iPhone 4を含むFaceTimeデバイスとのビデオ通話が可能| ;;page;; Appleがソーシャルネットワークに乗り出す理由は? author=Yoichi Yamashita さて、この日のメインはiTunes 10。より正確には同メジャーバージョンアップで追加された音楽ソーシャルネットワーク「Ping」だった。好きなアーティストや、そのファン、友だちなどをフォローし、また自分の音楽関連のアクティビティも公開できる。音楽でつながることで、新しい音楽と出会えるチャンスが広がり、また最新の音楽情報に触れられる。口コミ効果も大きい。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@018.jpg,018l.jpg|I@019.jpg,019l.jpg| |M@iTunesで現在、もっとも力を入れているのが"発見"だとJobs氏は語る|M@Pingは音楽のためのソーシャルネットワーク| Jobs氏がPingを「FacebookやTwitterがiTunesに組み込まれたようなもの」と説明したときに、会場から「いまさらソーシャルネットワーキング!?」という反応が返ってきた。FacebookやTwitterがすでに存在するし、音楽分野に限ってはMySpaceも健闘している。これ以上のソーシャルネットワークは必要ないという雰囲気だ。 だが音楽専門のソーシャルネットワーク提供ならば、Appleはこれまでにないサービスを提供できるユニークな立場にある。いまiTunesユーザーは、iTunesライブラリに数多くの音楽を収めている。iTunesで音楽を聴く、iTunes Storeから音楽を買うなどのユーザのアクティビティをソーシャルネットワークに深く反映できるのはAppleの強みである。またソーシャルネットワークを活用する上で、近年モバイルデバイスの役割が重要になってきている。たとえば写真を撮影して、その場でポストする、GPS機能を使って写真にジオタグを付けるなど、モバイルデバイスによってSNSとより便利につき合えるようになり、情報の伝播力も高まっている。AppleはiPhone/ iPod touch/ iPadという人気の高いモバイルデバイスを提供している。これも強みだ。さらにMacがあり、SafariというHTML5サポートに優れたWebブラウザを提供し、ユーザーのアクティビティに対して商品を提示できるオンラインストア(iTunes Store)も持っている。SNSはほとんどがクローズドなサービスであり、サービスのコントロールがユーザーの利用体験を左右する。こと音楽に関してAppleは、コンテンツからソフトウエア/ ハードウエア、ビジネス機会までくまなく揃えており、他のどのようなソーシャルネットワークよりも広範かつ完璧にサービスをコントロールできる。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@020.jpg,020l.jpg|I@021.jpg,021l.jpg| |M@ミュージシャンのジャック・ジョンソンのアクティビティ・ぺージ。写真やビデオ、音楽などメディアリッチなフィードが流れる|M@Jobs氏のプロフィールページ| 2001年に登場したiTunesとiPodが、なぜ成功できたのか? その理由はiTunesのロゴに記されている。CDだ。当時、音楽好きなら誰でも山のようにCDを所有していた。それらをパソコンに取り込んで、自在に管理し、簡単にポータブルプレイヤーへ転送できる仕組みをAppleは用意した。もしCDからの取り込みがご法度で、DRM付きのデジタル音楽を購入するしかなかったらiTunes/ iPodは成功しなかっただろう。すでにユーザーの手元に存在した膨大なコンテンツ(=CD)が金脈だった。同様にいま1億6000万人のiTunesユーザーと、そのライブラリは、iTunesが今後も音楽ファンを引きつけていくための金脈になる。 AppleはiTunes 10で、iTunesのロゴを変更し、これまでのCDをやめて音符を採用した。Jobs氏は、来年の春頃に米国においてiTunesの売上げがCDを上回る見通しだからと説明したが、これはCDを買ってパソコンに音楽を取り込む時代が落日に近づいていることを意味する。音楽は最初からネット上で提供され、これまでCDショップの顧客だったユーザーを含めて音楽ファンをネット上でどのように引き込むかが、これからのオンライン音楽ストアの課題になる。今やいくつものオンライン音楽ストアがDRMフリーの音楽を販売している。どこから買うかはユーザー次第。そこでユーザーが自分の好みの音楽を効率的に見つけられるのはiTunesという環境を、AppleはPingで実現しようとしている。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@022.jpg,022l.jpg|I@023.jpg,023l.jpg| |M@CDを取り入れたバージョン9.xまでのiTunesロゴ|M@バージョン10から採用される新しいiTunesロゴ| ;;page;; 熱心なApple TVユーザーはパソコン嫌い? author=Yoichi Yamashita この日のワンモアシングは「Apple TV」だった。ストレージを無くしたストリーミング専用デバイスになって価格は99ドル。現行のApple TVでは映像コンテンツを購入できるが、ストレージのない新モデルではレンタルのみ。Mac/ PCのiTunesとの同期機能もなくなり、Mac/ PCからのストリーミング再生のみをサポートする。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@024.jpg,024l.jpg|I@025.jpg,025l.jpg| |M@今回はワンモアシングならぬワンモアホビーとして「Apple TV」の新モデルを発表|M@2006年の発表以来、成功を収めていないApple TV。しかしユーザーは気に入って使っている。そうしたユーザーの声を新モデルに反映した| 興味深かったのは、こうしたApple TVの変更に至った理由だ。従来のApple TVユーザーは「TVの横にまでコンピュータを求めていない」という。TVでは映画やTV番組を楽しめれば十分であり、そのためにわざわざTVの横に別のコンピュータを設置する必要はないというのだ。このことをコンピュータ産業の関係者はなかなか理解できないが、消費者にとっては自然な発想だという。さらに「(Apple TVの)ストレージ管理は余計な悩み」、「コンピュータとの同期は複雑で面倒な作業」などのユーザーからの反応が紹介された。 |table class="Photo1" width="50" align="right" |I@026.jpg,026l.jpg|I@027.jpg,027l.jpg| |M@新モデルは現行のApple TVの1/4程度のサイズで、ストレージがないため発熱が少なく、動作ノイズがない|M@米国ではHD品質のTV番組のレンタルが1エピソードあたり99セント| 従来同様にApple TVとMac/ PCのiTunesとの連係は維持されているものの、ストレージ管理やiTunesとの同期をApple TVのデメリットと認めているあたり、Appleはパソコンと切り離してApple TVを使うスタイルを重んじているように思う。パソコン通を納得させる複雑な機能よりも、一般消費者が単純に映画やTV番組を楽しめるシンプルさが不可欠と考えているようだ。 これはApple TVだけが直面している問題だろうか? iPhoneやiPadでもユーザー層が広がれば、パソコンに関心のないユーザーも増えてくる。パソコンでコンテンツを管理せず、もっと簡単・シンプルに使いたいという声が大きくなってきてもおかしくない。TVの横にわざわざ専用のコンピュータを設置する必要がないと考える消費者は、多機能携帯やタブレットを使うのにパソコンが必須なのはおかしいというようにも考えるのではないだろうか。新しいApple TVは、コンテンツハブとしてパソコンを中心に据えたApple製品の関係図からはみ出しかけている。日本での展開は不透明だが、その成否は気になるところだ。 ;;link;; /news/2010/09/02/067/index.html /news/2010/09/02/056/index.html /news/2010/09/02/051/index.html /articles/2010/09/02/apple1/index.html /news/2010/09/02/002/ /news/2010/09/02/001/ Apple http://www.apple.com/ アップル http://www.apple.com/jp/