アジア市場概況

米景気減速懸念が世界経済の発展を阻害するとの思惑が広がり、ユーロ円を中心にリスク回避の円買いが継続。

また、ウィール英中銀委員は英紙に『英国経済の二番底』について言及したことから、ポンドでも売り圧力が強まっており、対円では約1カ月ぶりの130円台へと下落した。クロス円の動きを受け、ドル円も再び85.00のラインを割り込む展開へ。円高に対して無策な政府をしり目に、午前中から何度も8月11日安値84.72レベルを試す場面が見られるも、かろうじて死守。

市場では、序盤の欧州勢の動向に注目が集まっている。円高の影響は日本225種を直撃し、輸出や資源株で売り優勢の展開を誘発。今晩発表予定の米住宅関連指標への悲観的な見方も投資家のリスク回避姿勢を強め、昨年の5月1日以来、1年4カ月ぶりとなる9,000円割れとなった。

ドル円チャート

主だったイベントがないと思いきや、野田財務相の会見予定。しかし、コメントは、「足元の為替の動きは明らかに一方向に偏っている。重大な関心を持ち、極めて注意深く見守る」と述べ、為替介入については「コメントしない」と。前日の菅首相・白川総裁との会談の結果のように、にわか警戒感が解かれた地合いとなって、円買いを誘発。ドル円は、欧州系からの売りが84.50以下のストップを誘発し、84.15まで下落。ただ、市場では円買いが積み上がっており、スペイン国債の入札が順調にこなされたことによるユーロの反発を受けて、クロス円の買い戻しでやや反発となっている。

市場ではリスクに対してやや敏感になっている模様。ユーロ圏における信用リスクの再燃、オーストラリアの政局不透明感、今週後半に発表される米経済指標の鈍化懸念、という材料があり、原油・金価格もリスク回避による堅調地合いではなく、利益確定の動きで反落している展開が気になる。

ただ、現金化が顕著になれば、通貨としてはドルの優位性が増してくる可能性があり、ドル買い・円買いの狭間でじわじわとクロス円同様に下値を模索すると思われる。テクニカル的には、ドル円のサポートポイント83円台半ば以下には1995年の79.75しかない。海外当局との連携が取れればよいのだが、単独の状態では当局の行動も絶好の売り場になってしまう危険性があるか。

また、今晩の住宅関連の指数の他に、マイナーながらもリッチモンド景気指数にも注目しておきたい。今週金曜日に米GDPの改定値が発表されるだけに、ウォール街株価指数(原市場ダウ平均)が大台を割り込んだ場合には、センチメントがかなり悪化する可能性が高くなろう。 

ウォール街チャート