出っ歯で不正咬合で滑舌の悪かった筆者が、ついに歯列矯正治療を始めてから約1年(前回記事はこちら)。ご記憶の読者はほとんどいらっしゃらないだろうが、その後も粛々と治療は進んでおり、今回治療開始一年後の様子をレポートすることとなった。目立っていた前歯がかなり改善されるなど、大きな変化が現れ始めている。

※以下は治療期間中における筆者の体験をもとにした内容です。治療に伴う症状などは個人差が大きいので、全ての人にあてはまるわけではありません。

虎穴に入らずんば虎児を得ず、まずは決意

はじめに、治療開始前の状態をおさらいしておこう。以前は上あごが前に出ている上に、前歯が傾斜している(垂直に立っていない)ため上下の前歯が合わず、ものを噛み切ることができないことが自分にとって最も大きな問題であった。イカフライは一口で放り込み、麺類は上の歯と下唇で切断、サンドイッチやハンバーガーは具だけを引っ張り出して途中で上下が分解してしまう日々に、矯正の必要性を感じるようになっていた。そこで、実際に矯正歯科医のカウンセリングを受けてみると、実は自分が思っていた以上に重症で、上下計4本の抜歯が必要だとの診断。治療期間は矯正装置を1年半~2年間装着、その後安定するまでさらに約1年~3年という長丁場。費用は全部で77万円を超える見積もりとなった。

膨大な時間と費用に正直言ってひるんだが、ここ数年で歯並びが悪化してきている自覚があったので、このままではより酷いことになるのではないかという考えから実行を決意したのだった。上の矯正装置取り付けまでの内容は前回記事をご参照いただき、ここではその後の様子をたどろう。

治療前のレントゲン写真。上の前歯が下唇に触れているのがわかる(2009年8月)

治療前の歯型。前歯が飛び出し、全体の並びが「V字」型になっている

千里の道も一歩から、その後の歩み

昨年8月以降の大まかな治療の内容がこちらの表だ。付けっぱなしのように見える矯正装置だが、実は毎月少しずつ調整が施されている。その内容を振り返ろう。

これまでの治療の歩み
2009年8月 上の歯2本を抜歯し、矯正装置を取り付け(詳細は前回記事に
2009年10月 上の歯ぐき(奥歯の上あたり)にスクリューを埋め込む
2009年11月 下の歯を2本抜歯、矯正装置を取り付け
2010年2月 犬歯を奥へ引き込むためのゴムを装着
2010年6月 前歯をより奥へ引く方向に調整

最初の装置取り付け時に使用した針金は細めの形状記憶合金だったが、翌月はステンレス、翌々月はより太いものへと変わっていた。針金交換後はしばらく痛みがあるが、数日で解消する(個人差あり)。10月には前方の歯をより強力に奥へ引くためのアンカーの役目を果たす「スクリュー」を取り付けた。これによって大きな装具が不要になり患者の負担を軽減できるというが、装着時には突起部分が頬の内側に触れてかなり違和感があり、慣れるのにひと月ほどかかった。

上の歯が多少動くのを待って、11月に下の歯の治療を開始した。手順は上の矯正装置の時とほぼ同様だが、奥歯は背が低くてブラケットが貼り付けられなかったため、あらかじめブラケットを溶接した金属のバンドを歯に巻き付ける形となった。装着時は上の歯の時と同様に痛んだが、数日で解消。しかし、奥のブラケットに頬の内側が引っかかって擦りむける状態がしばらく続いた。

下にも矯正装置を取り付け。上の端に見えているのがスクリューの頭(矢印)

こうした治療を続けるうち、目立っていた前歯は10月頃から徐々に動きが見え、2010年に入る頃には普通に口を閉じてはみ出ない状態にまでなった。また、上下ともV字に近かった歯列がU字に近いカーブへと整ってきたのもその頃だ。

治療開始から半年が経った2010年2月には、犬歯を強力に引き込むため、下の奥歯と上の犬歯に渡すゴムを追加した。これはごく小さな輪ゴムで、毎日自分で交換し食事の際は取り外すなど面倒が多いが、やがてその効果が現れた。3ヵ月ほどするうちに犬歯が確実に動いてゆき、その影響で前歯4本に大きな隙間ができることになる。

ごく小さな輪ゴムを上下の歯に渡す。ゴムの太さや直径を徐々に変えていく

そして6月、犬歯を引き込むことでできたスペースに、今度は前歯を引き込み始めた。抜歯した分のスペースもかなり詰まってきた。一方で、下の歯は前歯が高く奥歯が低くなっており、顎を閉じたときに奥歯の上下に隙間ができて噛み合わない状態なので、これを改善していく必要がある。現在はこの段階の治療が続いている。

当初の説明で、矯正装置を付ける期間が1年半~2年程度との説明だったため、早ければあと半年くらいかと密かに期待しつつ先生に尋ねてみたところ、「たぶん、あと1年近くはかかると思います」との回答……。前歯が改善して喜んだのは、ほんの一歩目にすぎなかったのだ。まだまだ道半ばである。

百聞は一見にしかず、使用前と使用中

では改めて、ここまでの変化を見てみよう。美しいものではないので、他人の口内なんぞ見たくないという方はここでページを移ることをお勧めする。

治療開始前。2本の前歯とその両脇に大きな段差があった(2009年8月)

治療開始直後。大きな変化はないが、前歯の角度はやや改善(2009年9月)

治療開始半年後。抜歯したスペースが狭まってきた。上下の前歯でものが噛み切れるようになった(2010年2月)

治療開始1年後。上の犬歯が良い位置まで移動した。前歯はより引き込み、下の歯は高さを調整中(2010年8月)

治療開始1年後のレントゲン写真。前歯がほぼ垂直になった。奥歯は顎を閉じても上下が合わない状態だ(2010年8月)

治療前後のレントゲン写真の比較。前歯の位置が大きく動いている

まだ治療途中ではあるが、徐々に整いつつあることがわかる。前歯でものを噛み切れるようになったため、常に負け戦だったモスバーガーにも対等に勝負を挑むことが可能となった。

こうした毎月のメンテナンスでは、針金が強化されたりゴムの掛け方が変わり、その影響で矯正装置取り付け時と同じように締め付けによる痛みが数日間続く。初回ほどの痛さではなく治まるのも早いが、この間は噛むことが不自由になり食事に苦労する。また、歯が動いてできた隙間や矯正装置の凹凸に食べかすが挟まりやすかったり、ブラケットや針金が当たる頬の内側に口内炎ができるなど、矯正中の生活は自分で気をつけなくてはいけないことも多い。次回はその生活の実態をレポートしよう。