いやー、こんなにもクレイジーでクソッタレな連中は久々だ。

何の話かというと、間もなく公開になる映画『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のヤツらのこと。

タイトルを聞けば、30代以上なら、あるいはもっと若くてもピンとくる方は多いだろう。そう、80年代にアメリカからやってきて巷を賑わせたあの伝説のTVドラマが、このたび満を持して映画化されたのである。

ファンにとっては"満を持しすぎ"かもしれない

……と派手に煽っといて何なのだが、実は僕はTVドラマ版「特攻野郎Aチーム」を見たことがない。

なので旧作と比べてどうとか、キャストを比較してどうとか、そういう難しい話は全部放り投げて、ここでは"特攻野郎Aチームを初めて見る男の素直な感想"を綴っていこうと思う。実際そういう方もたくさんおられるだろうし、思い出補正のないレビューとしてご覧いただければ幸いである。

さて、そんなわけで特攻野郎Aチームだが、本作を一言でいうと「濡れ衣を着せられてお尋ね者になった米軍最強の特殊部隊の4人が大暴れするアクションムービー」だ。チームのリーダーは、葉巻がトレードマークで奇抜な作戦を次々と考案する"ハンニバル"。ほかにはプレイボーイながらも口八丁手八丁で物資を調達してくる"フェイス"や、メカニックで怪力の"B.A."、挙動不審の天才パイロット"マードック"など個性豊かな面々がそろっている。

作戦会議のシーンが出てきたら、それは……

これだけならまぁ別に何てことはない設定なのだが、この4人の"仕事ぶり"がそれはもう、規格外というか、そりゃ米軍ももてあますよな……と思わず彼らの上司に同情してしまうほどクレイジーなものなのである。では試写室で思わず笑い転げた場面をいくつかご紹介しよう。

1.熱追尾ミサイルを避けるため、飛行中にヘリコプターのエンジンを停止する斬新な発想!

なぜこんなことになってしまったのかというと……

マードックが運転するヘリに乗って緊急脱出した4人を、敵のヘリが追ってくるこの場面。迫り来る熱追尾ミサイルをかわすためにマードックがとった方法とは「空中でヘリのエンジンを停止する」という斬新なもの。これならたしかに熱による追尾はされなくなる……だけど、当然ヘリはプロペラが止まれば、落ちる。いやはや、その発想はなかった。さすがは天才(?)パイロットである。

この場面は動画でご覧いただけるので、ぜひご試聴を。

この動画の最後でハンニバルが「作戦は奇を以って良しとすべし」という決めゼリフをドヤ顔で言っているのだが、どう考えても奇を以って良しとしすぎである。

2.墜落する飛行機から戦車に乗って脱出し、そのまま空中戦を繰り広げる!

戦車と雲の位置関係が明らかにおかしい

続いては飛行機で逃げる途中、敵の攻撃をもろに食らってしまったこの場面。間一髪で機内に積んであった戦車に乗り込んだ4人は、そのままパラシュートを開いて戦車ごと高度数千メートルから落下していくのだが(ここですでにかなり狂っていると言わざるを得ない)、途中追いかけてきた敵機にパラシュートを攻撃され破かれてしまうのだ。もちろん戦車はそのまま地上へとまっしぐらである。僕ならあきらめて遺書をしたためるところだが、Aチームの4人は違う。なんとそのまま戦車のハッチを開けて身を乗り出し、空中戦を繰り広げるのだ。さらにその後、落ちていく戦車がどうなるのかについてはここではネタバレになるので触れないが、映画史上に残る(かもしれない)珍場面が待っているので大いに期待してほしい。

この"戦車で空中戦"(変な日本語だ……)の場面も動画でご覧いただけるが、これを思いついたスタッフは頭のネジが2、3本ぶっ飛んでるんじゃないかと思った(良い意味で)。

3.ビルに潜入し要人を拉致するミッションでは、窓からダイナミックにお邪魔します!

敵側もまさかこんなやり方で特攻してくるとは思わないよね……

敵の要人を拉致するために密会場所へと潜入したAチーム。だけど変装して裏口から入り込んだり、通風口からこっそり潜り込んだり、そういう面倒なことは一切やらない。ご覧の通り地上数十メートルのビルの窓を叩き割り、ワイヤーロープを使ってターザンのごとくダイナミックにお邪魔するのがAチーム流なのだ。さらに拉致した敵を窓から外に投げ捨て(!)、下で待ち構えていたヘリで華麗にキャッチ! え? 失敗したら? ……知らん!

この場面も動画でご覧いただこう。一連の流れだけ見るとすごく効率の良いやり方に見えるから不思議だ。某スパイ映画も監視カメラをハッキングとかそんなややこしいことしないでこの方法を採用していれば1分もかからなかったのにね!

――という感じで何かもう色々とめちゃくちゃなのだが、しかしこれこそまさに"アクション"映画である。

無駄に世相を斬ったりしないし、社会派なネタも盛り込まない。人生について考えさせたりもしないし、忘れかけていた大切な何かを思い出したりすることもない。でも、見た後はスカッとした気分で家路につける。『特攻野郎Aチーム』はそんな映画なのだ。

さらに本編の内容について知りたい人は、nifty映画の解説記事「真夏の男祭!『特攻野郎Aチーム』大解剖!」も合わせてご覧いただきたい。

『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』は、8月20日よりTOHOシネマズ 有楽座ほかで全国公開。

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