前回、「"極上夜景"が楽しめるホテル」として紹介したANAインターコンチネンタルホテル東京。赤坂の一等地にそびえる超高層シティホテルの36階に、「厨房のピカソ」とも謳われる3つ星シェフ、ピエール・ガニェール氏によるレストランがオープンしたと聞きつけ、再び訪れた。

450本のワインが並ぶワインタワーを抜け、店内へ。東京タワーや、東京ミッドタウンタワー、国会議事堂など東京を代表する建造物が一望できる

もともとフランス料理とイタリア料理を融合したイタロプロバンス スタイルを提供していたレストラン「イタロプロバンス ダイニング」だった空間を、3月19日より新たに現代風フランス料理のレストラン「ピエール・ガニェール」としてリニューアル。客席数を従来の80席から60席に減少したという店内は広々として落ち着いた雰囲気。有機的な丸みのあるモチーフを用いたインテリアが目を楽しませてくれる。

「ピエール・ガニェール」のレストランの中でも、"天空"に最も近い位置にあるという同店は夜景も絶品。個室を2室、半個室を1室用意した

ビジネスパーソンのための「極上ランチ」

1981年に独立後、瞬く間にミシュラン2つ星、3つ星を獲得してしまったというピエール・ガニェール氏。彼が作り出す、独創的かつ芸術的な料理には世界中でファンが多い。日本に来ると、築地を訪れるのが楽しみだとか

溜池山王という場所柄、ビジネスパーソンの利用が多い同ホテルが今回用意した"目玉商品"は、平日限定のクイック・ランチ「エキスプレスグルメ」(3,800円)。美食の巨匠が手がける、日本のビジネスパーソンのための"スペシャルランチ"だ。小前菜とメインディッシュというワンプレートで提供されるメニューは日替わり。豊富な品数で知られる、ピエール・ガニェール氏の料理を多くの人に楽しんでもらいたい――、「1時間程度で食べられるボリュームを」とエキスプレスグルメを考え出したのは料理人自身だという。

ランチタイムのメニューは、エキスプレスグルメのほか、小前菜・魚料理または肉料理・小菓子・デザートがつく「セゾン」(6,000円)、そこに前菜が加わる「マルシェ」(8,000円)、魚料理も肉料理も楽しめる「グルメ」(10,000円)。ディナータイムは、「レス サンテール」(14,000円)と「エスプリ ピエール・ガニェール」(20,000円)、そのほかアラカルトを提供するが、8月19日には神宮外苑の花火を観賞しながらの「ドン・ペリニヨン2000を花火とともに」(ドン・ペリニヨン2000飲み放題、コース料理/35,000円)も展開するという。

水滴を垂らしたような波紋がユニークなお皿は、パリ本店と共通仕様。一度に出てくる皿数が多いため、テーブルもゆったりめの設計

では、注目のエキスプレスグルメを試食……。と思ったのだが、せっかくの機会なので、いちばん人気だという8,000円のランチコースを試食することに。次から次へと運ばれてくる料理の数々に目を奪われ、同行のグルメ担当・Hと歓喜の声をあげる。これは、女子には……たまりません! (男性陣のみなさま、大切な方と是非)

まずはアヴァン・アミューズ。ほうれん草のフィナンシェ、ベーコンとパルメザンチーズ入りのスティックなどスパイスが効いた一品も

その芸術センスでも高い評価を受けるピエール・ガニェール氏の料理は、味覚だけではなく、視覚も存分に刺激してくれる。キャンパスに絵を描くように、お皿の縁までを利用して盛り付けられたお料理の数々を写真にてご紹介したい。

Cocktail de poche.(小前菜)は「スイカのワルツ、チョリソーにエスプレット唐辛子を利かせて」など5品。赤ビーツのアイスクリーム(茄子グリエのピューレ添え)など夏を感じさせるメニュー

それぞれ食感が違う3種類のパン。前菜は「アモンティリャード酒でマリネした帆立貝のグリエ、ライムの香るアボカドと胡瓜のジュレと共に」。帆立貝の網焼きグリルに胡瓜のジュレがさわやか

ちなみに結納など記念日の利用者も多いという個室(中には、プロポーズ用にお花を用意して! という依頼もあるとか)は2室用意(そのほか半個室が1室)。個室利用料はとらない、という太っ腹な計らいも、「ちょっと奮発したい夜」を後押ししてくれるだろう。

8,000円のコースは魚と肉のいずれかをメインとして選択。肉料理は「仔羊鞍下肉のロースト、コリアンダーを利かせたパンポール産豆のフリカッセと共にエピスでマリネしたフィレ肉、レモンコンフィのアクセント」。魚料理は「皮面をカリカリに焼いたスズキのロースト、じゃがいもとズッキーニのムースを添えて アンチョビのトーストとブイヤベース」

6,000本を揃えるというワインから、特別な日のための1本をセレクトできる

さらに、グラスワインは1,500円~と良心的な価格設定もデート利用にはうれしい。ボトルも7,000円から用意されるが、「もちろん、特別な日のためのスペシャルワインも多数揃えております」とのこと。

デザートは全4種類。それぞれ濃度の違うカカオを使用したチョコレートスイーツ、りんごを模したかわいらしいゼリーなど

料理は季節ごとに食材を変え、新メニューに。ピエール・ガニェール氏の"正しい"味を伝えるため、自らメニュー更新ごとに日本に訪れるという。私たちが訪れた日もちょうど、夏メニューの入れ替えでピエール・ガニェール氏が来日していた時期。真っ白いコックコートで挨拶に現れた"世界のピエール・ガニェール"は、日本に到着したその日から厨房に立っているという。

「生粋の職人気質。ホテルに到着するとすぐにコックコートに着替えて厨房に立つ。スーツ姿でビジネス話を…というタイプではない。"料理人"ということに誇りをもっている」とホテルスタッフは話す。

ピエール・ガニェールを支えるスタッフたち

信頼するミッシェル・ドゥレピンヌ氏のとなりでは自然と笑みがこぼれるピエール・ガニェール氏

そして、まるでダリのようなクラシックなおひげが印象的なミッシェル・ドゥレピンヌ氏もこのお店に欠かすことができない、創造人のひとり。パリのピエール・ガニェール氏のレストランにて5年間仕事をしたという彼が、レストランマネージャーに就任したことで、サービスのクオリティもお墨付きといえる。

「陽射しが少しまぶしくて目を細めたら、すぐに気づいてミッシェルさんがブラインドを調節してくれたの!」と同席したHが耳打ちしてくれた。チャーミングかつフレンドリー、上品ながら堅苦しさを感じさせない応対は"料理のおいしさ"だけでなく、ピエール・ガニェール氏の"食事の楽しみ方"を体験させてくれる。

さらに、スタッフコスチュームを手がけたのは、日本を代表するファッションデザイナー、コシノジュンコ氏。ランチタイムのドレスもシックだが、ディナータイムは黒のロングドレス、と装いを変えるというから、そのこだわりに脱帽。アクセサリーもコシノジュンコ氏によるものだ。

「ピエール・ガニェール」のスタッフコスチュームを手がけたのはコシノジュンコ氏。写真はランチタイム用で、夜は黒のロングドレスとなる

シェフパティシエは森谷孝弘氏。パリのピエール・ガニェール氏のレストランにてスーシェフパティシエとして腕を磨き、今回の日本店オープンのために帰国した

自宅にも「ピエール・ガニェール」をお持ち帰り

7月26日には、ホテル内に待望のパティスリー「PAINS et GATEAUX(パン・エ・ガトー)」も登場(スイーツの担当は森谷氏)。パリ本店と同じレシピで作られるパン、ケーキの数々はホテルメイドの既存商品と価格はほぼ変わらない。「ピエール・ガニェール」にて提供しているフィンガーフードのセットなども、同店でお土産として購入できるという。さらに、8月8日からは同レストランでのウエディングパーティーの予約受付も開始。季節ごとに変わるという18,000円と23,000円の特別メニューは招待客を喜ばせるにはうってつけだ。

バラのギモーヴの入ったホワイトチョコレートとタヒチ産バニラのタルト「タルト・ア・ラ・ヴァニーユ・タヒチ」は1ピース546円、ホールで3,675円

招待客も満足まちがいなし? ウェディング用に提供されるスペシャルメニュー ※写真はイメージ

なお、お隣の「マンハッタン ラウンジ」も9月にリニューアルオープン予定(現在改装中)。スタンディングエリアを設けるなど、新たな試みに挑戦し「エリアごとのBGMを変えようかという案も」とのこと。「ピエール・ガニェール」ディナーの待ち合わせの間に、食前酒を一杯……、なんて優雅な時間を過ごせそうだ。