大日本印刷と凸版印刷は7月27日、両社を発起人とする「電子出版制作・流通協議会」を設立したと発表した。発表前日の26日時点で89の企業/団体が参加を表明。印刷会社や新聞社、出版社、通信企業、ソフトウェア/ハードウェアベンダー、フォントメーカー、広告代理店など、幅広い業種から賛同企業が集まっている。

電子出版制作・流通協議会 会長の大日本印刷 代表取締役副社長 高波光一氏

同協議会は、「日本の電子出版ビジネスの成長と健全な発展のための環境整備」を目的としており、日本の文化を反映させた電子出版コンテンツの技術仕様や流通ビジネスモデルなどについて協議していく。

電子出版制作・流通協議会の会長を務める大日本印刷 代表取締役副社長の高波光一氏は、電子出版の現状について、「紙の世界では、書籍ならISBNコード、雑誌なら雑誌コードがふられていて情報/流通管理が容易になっているのに対して、電子出版コンテンツではそういった統一的な規格がない。また、出版物には、文字の種類や組み方など、日本独自の文化が色濃く残っており、海外のフォーマットでは対応できない部分もある」と説明。そのうえで、「以上の例に代表されるように、電子出版の世界はまだ環境が整備されていない。そういった状況を改善していき、最終的に読者が最も使いやすい電子出版環境を作ることが大きな命題」(高波氏)と設立の主旨を説明した。

電子出版制作・流通協議会の具体的な活動内容としては、次の5つが挙げられている。

  1. 電子出版制作/流通ビジネスに関連する情報共有
  2. 制作/規格/仕様/流通に関する協議
  3. 電子出版ビジネスの発展と普及に関わる活動
  4. 電子出版制作/流通ビジネスにおける日本モデルの検討及び協議
  5. 商業/公共/教育/図書館等電子出版関連分野に関する情報共有

電子出版制作・流通協議会 副会長の凸版印刷 常務取締役 大湊満氏

これらのうち、2つ目の「制作/規格/仕様/流通に関する協議」では、「中間フォーマット、書誌データフォーマット、コンテンツID、電子出版制作のワークフロー、関連企業におけるレベニューシェアの方法などについて検討していく」(電子出版制作・流通協議会 副会長の凸版印刷 常務取締役 大湊満氏)という。特に中間フォーマットについては、「電子出版コンテンツの制作は、これまでの紙の出版物と別ラインで行うのではなく、現在と同様のDTP作業の中で電子出版コンテンツも出力するかたちになると想像している。このフローを実現するために紙の出版にも対応した中間フォーマットについて今後話し合っていく」(大湊氏)と、力を入れて臨んでいくことを強調した。

また、4つ目の「電子出版制作/流通ビジネスにおける日本モデルの検討及び協議」に関しては、「日本の出版業界には、作家、出版社、印刷会社、流通会社、書店と、さまざまなプレイヤーがいて、彼らによる水平分業型のビジネスモデルが成り立っている」(大湊氏)と背景を説明。続けて、「欧米の垂直統合型のビジネスモデルを否定するわけではないが、現行のビジネスモデルを活かすかたちでストレスなく流通させられる形態が実現できないか、関係各社と協議していく」(大湊氏)と抱負を語った。

なお、国内ではすでに「日本電子書籍出版社協会」など、電子出版コンテンツについて協議する団体がいくつか存在するが、高波氏は「そうした団体とは当然、協力して進めていく」と説明。そのうえで、そもそも同団体の設立背景として「出版物の制作工程の中で最終的な作業を担う印刷会社が主導して最適な電子出版フォーマット作りをはじめてほしいという要望があった」(高波氏)とし、協力関係に不安はないことを明かした。

また、Amazon、Googleなどのすでに流通を手掛けている企業に対しても「参加はもちろん歓迎。ぜひ協議していきたい」(高波氏)とコメントした。

左から電子出版制作・流通協議会 代行理事の名和正道氏、副会長の大湊氏、会長の高波氏、電子出版制作・流通協議会 代行理事の北島元治氏