高校生を対象とした世界最大規模の科学コンテスト「Intel ISEF (Intel International Science and Engineering Fair)」についてお伝えするレポート第2弾では、開会式やシンポジウムなど、審査以外の各種イベントの様子にフォーカスする。

国際科学チャレンジ『Intel ISEF 2010』取材レポート

■世界の高校生サイエンティストは『Intel ISEF』に挑戦している - ISEF 2010
■Googleも熱い視線のワケ、"理系ロックスター"を育てる場に - ISEF 2010

インテルとグーグルがタッグを組んだ!

開会式は、審査用の展示準備が整った2日目の夕刻に、サンノゼ大学の講堂で行われた。

セレモニーの中で、インテルCEOのポール・オッテリーニ氏がファイナリストたちに向けたメッセージは、「世界が今後抱えることになる大きな問題を、皆さんが、解決に導いてくれることを願っている」というものだった。

オープニングセレモニーでのオッテリーニ氏(右)とペイジ氏の2ショット

そして、グーグルの創業者ラリー・ペイジ氏がサプライズゲストとして登場した。初めてメジャースポンサーを務めることになった理由を「まだまだテクノロジーには無限の可能性があるが、その分野に取り組んでいるのは一握りの人たちしかいない。だから、君たちのような若い人たちをもっともっと(科学技術分野に)巻き込んでいくのが、我々の役目だと思っている」と語った。

インテルは、「数学や科学の知識は、世界をより良く変えていくイノベーションのために、世界で共通に必要とされる重要なもの」というメッセージを掲げ、Intel ISEFを始めとする科学コンテストや教員向け支援活動などを行っている。この10年間で、10億ドル以上の費用と、インテル従業員の時間を250万時間以上費やして、50カ国以上へ教育支援を行ってきた。「すべて明日を担う革新者たちを支援したいという思いからだ」。配られたフェアのプログラムの中でそう述べている。また、ISEFへのタイトルスポンサーとしての支援継続を、2019年まで延長したことも発表した。

一方のグーグルだが、インテルが教育支援に取り組み始めた頃はまだ、新鋭ベンチャーとして急成長し始めた矢先だった。ふと思い立って昔の取材メモを見てみたのだが、2003年には従業員数1,500名程の企業であった。それが、いまや2万人という規模のグローバル企業に成長した。思い返せば、当時、次々に優秀な研究者や話題にのぼる科学者などを重用し、超エリート主義と言われたグーグルが、今度はハイテク業界全体の人材不足を危惧し、人材育成を支援する時代となった。


これまで地道に教育現場、とくに教員向けの支援を続けてきた「インテル」と、ネット時代の申し子的企業であり、現代っ子たちを引き込みやすい立場にいる「グーグル」とのタッグは、とても大きな意味があるような気がしてならない。10年前には想像できなかった今があるように、この先10年がどうなっていくのかは想像できない。だからこその人材育成であり、教育支援であるのだろう。インテルの教育担当者が語る「21世紀のスキル」の必要性にも通じるところだ。

Twitterを使って壇上のインテル技術者たちとディスカッション

さて、Intel ISEFでは「科学/工学や数学の分野でのロックスターになろう!」といったメッセージを投げかけている。セレモニー内で行なわれた「Meet the "Intel Rock Stars"」と題するパネルディスカッションは、インテルのVIP=ロックスター5人が登壇した。このパネルではTwitterが活用され、高校生たちから質問を受け付け、会場とやりとりしながら進められた。

インテルのVIP5人が登場し、会場の高校生からTwitterで質問を受けながらのパネルディスカッションの様子。司会(中央)がタブレットPCでTwitterを確認しながら進行

参加国別に呼ばれ代表者が自分たちの国を描いたパネルを手に舞台に上がっていく様子にオリンピックの入場式を思い出した。今年モロッコとパレスチナが初参加

オッテリーニ氏は、バレット氏のような派手な登場はしなかったが、インテルの社員がTシャツを投げ、会場の高校生たちがそれをキャッチしようと大変盛り上がった!

オープニングには、きらびやかなレーザー光線やスモークの中で、高校生たちによるダンス・パフォーマンスが繰り広げられた

ノーベル賞受賞者やシリコンバレーの女性VIPたちへ質問のチャンス

シンポジウムでは、協賛企業や大学による学生や教員向けの、さまざまな講演、パネルディスカッション、ワークショップが用意されていた。全部で約40セッションあり、どれに参加すべきか選択が難しいほど興味深いものとなっていた。

「Women in Science &Technology Panel」はシスコVP、インテルCIO、グーグルVP、シマンテックCTO、女性初のIBMフェローのFran Allen氏も参加。キャリア転機や将来に向けてのアドバイスなどを、会場からの質疑を交えて行った

物理・化学などのノーベル賞受賞者によるパネルディスカッションでは、直接質問ができるとあって長蛇の列となった。ある女子高生は「今日のパネル参加者の中に、1人も女性が入っていないのが残念です。なぜ科学分野では女性の活躍が少ないと思いますか?」と質問し、ノーベル賞受賞者たちを唸らせていた

「From NASA Astronaut to Google Engineer」Google Green Energy TeamのLu氏は、12年間のNASA勤務後、Googleへ転職した理由を語った。講演後は記念撮影やサインを求められていた

このほかにも、フェアディレクター(ISEF運営側の協力者たち。地元コミュニティなどからボランティアも多数参加)向けに、ユタ大学がMicrosoft Officeを使ったタスク整理の仕方を伝授したり、シノプシスが自社の最新タッチパッド事情をプレゼンしたり、ドイツのヨーロピアン特許事務局による「ヨーロッパの特許システム」の説明があったりと、内容は多岐にわたっていた。

ひとつ残念だったのは、英語圏以外の高校生や引率者たちの参加率が低かったこと。審査がスタートする前でもあるので、プレゼンテーションの練習を優先したい、英語がそこまで理解できないなどの理由からだ。滅多にない機会でもあり、何か興味あるひとつのセッションにだけでも参加できたら、貴重な体験になるのではないかと思うのだが……。

協賛企業のプロモーション

次にコンベンションセンター内に設けられた協賛企業の展示エリア「Vista Point」や「Intel ISEF Expoブース」の様子を写真で紹介しておく。これらの展示エリアは、企業側としてみれば、自社の技術や製品を説明できるプロモーションの場であるのだが、高校生たちにとっては先端テクノロジーに触れ、担当者から直接話が聞ける場であり、また、息抜きの場ともなっていた。

ISEFには、インテル、グーグル以外にも44の企業、団体などからスポンサーシップを得ている。写真は「Vista Point」と名付けられたグーグルエリア。奥にはあのストリートビュー撮影車も(第3回レポートで紹介します!)

シスコのブースでは「○×早押しマシン」を用いて、コンピュータについてのクイズ大会を行っていた。どの企業も高校生たちに楽しんで知ってもらうがモットーのようだった

US NavyとUS Armyの研究機関が、どのような研究を行っているかなどを紹介する目的で出展していた

自社の製品を展示するGE EnergyやMicrcomの社員たちに、特に経済大国以外からの高校生たちが熱心に質問していた様子が印象的だった

サンホゼ大学のコンピュータサイエンス学科や専門学校からは、在籍中の学生も参加し質問を受け付けていた

コンピュータ・ヒストリー・ミュージアムは手動で動かすコンピュータをデモンストレーションしていた

人気ゲームの「ロックバンド」やオバマ大統領との2ショット撮影を楽しむ高校生たち。シマンテックとアプライド マテリアルズのブースで

──レポート第3弾では、日本からの参加者たちの様子やアワード受賞について取り上げる。