TVアニメ『かみちゅ!』(2005)で第9回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞するなど、数々の名作を手掛ける舛成孝二監督が、満を持して放つ初の劇場作品『宇宙ショーへようこそ』が、2010年6月26日、ついに公開日を迎える。

劇場アニメ『宇宙ショーへようこそ』は6月26日より全国ロードショー

脚本の倉田英之氏、キャラクターデザイン・作画監督の石浜真史氏、音楽の池頼広氏といった、現在のアニメーション界をリードする気鋭のクリエイターたちが集結した本作。アニメーション制作も、新進ながら『おおきく振りかぶって』や『黒執事』などの話題作をおくり出したA-1 Picturesが担当する。

■劇場アニメ『宇宙ショーへようこそ』ストーリー概要
都会の喧騒から離れ、美しい自然に囲まれた小さな村、村川村。小学校の全校生徒は、町から転校して来たばかりの小山夏紀を入れてもわずか五人。
それでもみんな仲良く元気に毎日を過ごしていた。そして夏休み、恒例の子どもだけの合宿で学校に集まった夏紀、周、康二、倫子、清の五人は、行方不明になったうさぎのぴょん吉を探しに裏山へと足を踏み入れる。
だがぴょん吉の代わりに彼らが見つけたものは謎の巨大なミステリーサークルと、その脇でケガをして横たわっていた一匹の犬。夏紀たちは犬を連れ帰り、手当てをすることにしたが、何と彼は犬ではなく、惑星プラネット・ワンからやって来た宇宙人だったのだ。はるか2100 万年光年の彼方から地球を訪れた彼、ポチの目的とは?
小さな村の子どもたち五人と一匹の宇宙人が繰り広げる宇宙最大の冒険がいま幕を開ける!

舛成孝二監督が語る劇場アニメ『宇宙ショーへようこそ』

すでに公開前から、世界三大映画祭のひとつベルリン国際映画祭ジェネレーション部門、そしてシドニー映画祭オフィシャル・セレクションへの出品を果たし、さらに主題歌をスーザン・ボイルが担当するなど、大きな話題を呼ぶ本作について、舛成孝二監督自らが語った魅力を紹介していこう。

――『宇宙ショーへようこそ』は、舛成監督にとって初の劇場作品となるわけですが、まずは劇場作品を作ることになった経緯を教えてください

舛成孝二監督

「以前やった『かみちゅ!』という作品があるのですが、それがありがたいことに、うっかり国から賞をもらっちゃいまして、僕ら、ベサメムーチョの連中がですね、ちょっと鼻が伸びちゃったんですよ(笑)。それで、『映画とかも撮れるんじゃない?』みたいな感じになりまして、そんな話で盛り上がっていたら、プロデューサーの落越が、『できるっぽいですよ』って言ってきて……。スタートはまあ、こういう感じです」

――作品の内容よりも、まず映画を作るというところからスタートしたわけですね

「一番最初の企画会議は、まず『何をする?』というところから始まりまして、本当に何も決まっていない状態だったんですよ。何かをやることは決まっているのですが、それがTVなのかOVAなのか映画なのか、まったく何もないまっさらな状態。そこで、劇場なんかどうかな、みたいな話が出てきまして、その次の会議で、落越から『劇場ができそうです』という話を聞いた。なので、内容などは本当にそこからのスタートなんです」

――何もないまっさらの状態から『宇宙ショーへようこそ』の原案はどのようにして生まれてきたのですか?

「とりあえず劇場でいくことが決まったので、次はストーリーの話になるわけですが、僕らは基本的に、何かひとつのキーワードが出たところで、そこにいろいろなアイデアを重ねていってストーリーを作り上げるというのがパターンなんですよ。それで、最初に出てきたのが『子ども』。じゃあ、小学生を主人公にしようかという話になったんです」

――『かみちゅ!』の中学生の次は小学生ということですね

「そうですね。『R.O.D』の読子が大人で、次に出てくる三姉妹が中学生から大学生ぐらい、そして『かみちゅ!』が中学生だったので、今度は小学生かなって。本当にそのレベルのアイデアなんです。あと、小学生が出てくる話にすれば、一般向けの作品が作れるかなと。映画を作るとなったとき、最初に考えたのは、やはりちゃんとマスに向けて作りましょうということだったんですよ。ファミリー層に向けての作品を本気で作ってみよう、それならやはり小学生がいいだろう、そんな発想から動き出した感じですね」

――宇宙をテーマにするのも最初からの構想ですか?

「まずプロットの段階で、落越から『SFにしてくれ』という要望があったんですよ。小学生でSF……さあ、どうしようという話になって、『じゃあ、宇宙にいけばいいんじゃね?』みたいな感じで(笑)、まずは『ザ☆宇宙ショー』みたいなタイトルが頭に浮かんできた」

――まずはタイトルからなんですね

「それで、うちの姪っ子が過疎の村に住んでいて、そこは本当に全校で5人しかいないようなところだったんですけど、そういう話を聞いていたので、じゃあ今回は、年齢層を変えてみようと。『かみちゅ!』では同学年の仲間内での話だったのですが、今回は、守るものと守られるものがはっきりと出てくるような年齢の幅が面白いかなと思って、まずは一年生から六年生までをそろえてみたんですよ。そこからスタートして、キャラクターの名前や性格付けなどを合宿で決めていって……」

――合宿ですか?

「赤坂プリンスでの合宿なんですけど(笑)、そこでポチやほかのキャラクターも全部出てきて、ストーリーをまとめていって、みたいな作業を行いました。もともとは、九州で拾った犬を北海道に届けるといったレベルの話だったのが、SFという要素が出てきたことで、結局宇宙にまで行ってしまうことになりました(笑)」

――「宇宙ショー」の構想もそのときに出来上がったのですか?

「最初はああいったショーではなく、あくまでも子どもたちが宇宙に行くショーでしかなかったんですよ」

――劇中に出てくるようなエンタテインメントのショーではなかったんですね

「結局、僕らのやり方って言葉遊びなんですよね。言葉として出てきた発想をいかに絵に変えていくか、みたいな感じ。それで、そうやっていろいろと出てきたアイデアをまとめて、(脚本の)倉田英之にぽーんと投げると、英之君のほうで、それを構成として上げてくる。その上がってきた構成を見て、ここはこういう風にしたほうがいいんじゃない、みたいなアイデアをまたいっぱい出していって、さらに大きな塊にしていく作業をやっていくわけですよ」

――そういった作業にだいたいどれくらいの時間をかけていますか?

「シナリオが完成するまでには、だいたい1年くらいかかっていますね。実は最初の企画会議から、『宇宙ショーへようこそ』のカタチが生まれるまで、3カ月ぐらい、ほかの作品、ほかの企画で動いていたんですよ。でも、3カ月ぐらい話をした結果、『うん、これ無理』っていう話になって、ほぼ僕の一存で全部を無くしちゃったんですよ。それで、こちらの企画にシフトしたんですけど、そこからシナリオの決定稿までに丸々一年ぐらいの時間がかかっていて、さらにそこから絵コンテが仕上がるまでに2年、正確にいうと2年とちょっとかかっています」

(次ページへ続く)