AppleとGoogleの新たな対立構図がまた取りざたされている。以前のレポートでAppleがiPhone OS 4 (現在の「iOS 4」)の新SDK規約でサードパーティ製広告ネットワークの排除に乗り出したことを紹介した

しかし、All Things DigitalのMediaMemoコーナーを執筆するPeter Kafka氏によれば、Apple CEOのSteve Jobs氏は6月初旬に開催されたD8カンファレンスで「他社の広告ネットワーク排除に興味はない」とコメントしつつ、その翌週にあたるWWDCでiOS 4が正式発表された際には、改訂されたSDKの新規約で「独立系広告会社以外の広告ネットワーク排除」を明確に打ち出している。こうしたAppleの態度にGoogleとモバイル広告子会社のAdMobは苛立ちを隠さない。

Kafka氏は、以前にもMediaMemoの中でiOS 4 SDKのデータ収集に関するポリシーをまとめた、いわゆる「Section 3.3.9」について報じている。ここではアプリ内でのデータ収集に関する規約がまとめられており、アプリの目的に準じた以外のデータ収集が禁止されている。つまり、アプリ内部に組み込まれた広告システムが視聴者の行動データを収集するといった行為は禁止となり、これはデータ収集とフィードバックを基本とした広告ネットワークをアプリ内に構築することを禁止する狙いがあるとみられていた。こうした広告ネットワークを構築するタイプの企業の代表として、Googleとの買収問題で揺れたAdMobが挙げられ、iAdをリリースしたAppleが他社の広告ネットワーク排除に動いたと考えるのが自然だ。

iAdは、今回のiOS 4とiPhone 4における最大の目玉の1つであることは間違いない。アプリ内にビジュアル要素とインタラクティブ性をふんだんに盛り込んだ"効果的な"広告であり、一般にクリック率が低いといわれるモバイル広告の効果を高め、広告支援による無料アプリや低価格アプリの利用を推進する役割を担うことになる。

モバイル広告自体の市場規模がまだほとんど大きくないこともあり、7月1日のiAd配信開始を前にすでに2010年後半の同売上がモバイル広告全体の半分に達する状態だという。その最大のライバルとなるAdMobを自社プラットフォームから排除しようとするのは、ある意味でiPhoneとAndroidというプラットフォーム戦争の前哨戦ともいえるだろう。