第22/23次長期滞在クルーとして約6カ月間、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在し、6月2日にソユーズ宇宙船に乗り地球に帰還を果たした野口聡一宇宙飛行士は6月9日(米国時間)、滞在先の米国ヒューストンにて地球帰還会見を行った。

米国ヒューストンのJAXA駐在員事務所から衛星中継で日本と接続し、会見を行った野口聡一宇宙飛行士(画像提供:JAXA)

野口宇宙飛行士は始めに「約半年の任務を終えて、無事に戻ってきました。非常に貴重な体験をさせていただいて感謝しています」と、長期滞在に対する感謝の言葉を表明し、「日本人が今後もどんどん宇宙に上がっていく。私が1日1日積み重ねてきた喜怒哀楽を伝えたように、今後上がって行く彼らに対しても、そうした想いを伝えてもらって、より多くの人に宇宙で暮らす日々が近づいてきていることを認識してもらいたい」と今後に続く日本人宇宙飛行士らにエールを送った。

現在の体調については、「食事は問題ない」としながら、元来の肩こりが宇宙の無重力状態で解消されたものが、地上に戻って再び生じたことを告白、「半年分のツケを払わされた気分」とした。また、長期滞在中の精神的なことに関して、「元気だったり、そうじゃなかったり、日によって色々違ったが、地上と触れ合うことで安定が図られた」と、地上とのやり取りが心の支えの一部となったことを説明。その地上とのやり取りの中に宇宙からのTwitterがあるが、これについては、「自分が見た景色や風景を地上の人たちに伝えたかった。色々と宇宙の意義や目的を聞かれることがあるが、こうした取り組みを通じて、多くの人が自分も宇宙に行ける空間という認識を持ってもらうのが大切だと思ってはじめたし、みんな宇宙に上がったら、やはり地球の姿を見てみたいと思っているはず。そういった人たちの目の代わりとして、地球の人たちが見たかった映像を写せていたなら、幸いだ」としたほか、再開のめどについては「この会見を期に再開させるつもりだった。今後も少しずつでも情報を出していければ」と今後もTwitterでつぶやいていくことを約束してくれた。

また、約半年の間、眺めていた地球に対しては、「地球は本当にすばらしい星。色々な姿を毎日ちょっとずつ見せてもらって、本当に感謝している。カプセルに乗り込む直前まで写真を撮影していても、同じ風景を見ないほど、地球は見飽きない星」と表現したほか、帰還の際のソユーズ宇宙船(21S)に搭乗した際、「窓がすぐ横にあり、地球に降下するほんの5分程度の間に、窓の外がオレンジ色になり、ものすごい振動と音、そして荷重が一度にかかり、カプセルを揺すってきたことが非常に印象として残っている」とした。

さらに、地上に対しては、「カプセルのハッチを開けた瞬間の驚きはまだ覚えている」とし、「それまで居た世界(ISS)とは明らかに違う世界にきた驚きを感じた。特に、地平線と青い空、そして土と草の香りを嗅ぐと、宇宙のコロニーなどで生まれた人が地球に始めて降り立ったときに感じる驚きの一端を感じた気になった」と大地の様子を交えた説明を行ったほか、「まったく新しい星にやってきた感覚に陥った」としながらも、違和感は前回の短期滞在時の方が強かったとし、その理由を「自動車の車線は日本と米国で逆で、始めのうちは勘違いするが、行き来を繰りかえてしていると、順応するように0G、1Gという感覚も割りとすぐに切り替わった気がする」と述べた。

なお、野口宇宙飛行士は最後に、「よく子供のころ見ていた空想の世界が実現していないという話を聞くが、例えば2001年宇宙の旅そのものの世界にはなっていないけど、宇宙飛行士が撮った写真を携帯電話で即座に受けられるということは逆になかったことだし、鉄腕アトムの世界だって携帯電話から宇宙飛行士にメッセージを送るなんてことはできてなかった。そういった意味ではちょっとずつ未来に進んでいるのだと感じている」とし、今後のことはまだリハビリをこなすことで精一杯で未定としながらも、「どこかでもう一度ISSに行く気があるのかもしれないと感じている」と再び宇宙を目指す意思を示したほか、自分を活かしてくれる分野があるのであれば、その分野で日本のためになることをしてみたいと語ってくれた。