三洋電機は、同社独自のウイルスウォッシャー機能を搭載した大空間向け空間清浄システムとして、新たにダクト式空調組み込みタイプを開発。「チャンバーBOX組み込み方式」と、「エアハンドリングユニット組み込み方式」の2モデルを、6月から受注開始する。

三洋電機のウイルスウォッシャー機能は、同社が長年培ってきた電解水技術をもとに、「水の力で、空気を洗う」というコンセプトに開発されたもの。浮遊菌、ウイルス、花粉といったアレル物質の抑制や、脱臭機能などに効果があるとして、2006年に空間清浄機に採用して以来、赤ちゃんのベッドサイドから、映画館などの人が集まる広い空間までを対象にしたさまざまな製品を投入している。

ダクト式空調組み込みタイプの大空間向け空間清浄システム。左下が電解水ユニット

電解水技術を採用した商品のラインナップ

水道水を電気分解→2種類の活性酸素による"電解水"

これまで同社では業務用として、据え置き型や、ルーフトップエアコン組み込み方式を投入してきたが、今回、発表した製品は、劇場やホール、大型商業施設などに設置されているダクト式空調に組み込むことが可能な製品として開発したもの。「従来の方式では、空調ダクトの吹き出し口に取り付けるなど、複数台の機器を設置する必要があったが、今回の製品では、機械室内に設置してメンテナンス作業を行うため、事業者が管理しやすいのに加えて、空気清浄機能が機械室内に設置されるため、施設を訪れる人にも不便がかからない」などとしている。

チャンバーBOX組み込み方式は、送風路上にある空気の混合および分岐などの目的で設置されるチャンバーBOX内部に除菌エレメントを組み込むもの。主にチャンバーBOXなどを設置することができる新規物件における採用が中心になる。また、エアハンドリングユニット組込み方式は、大型の空気調和機であるエアハンドリングユニット内部に除菌エレメントを組み込むもので、日本で使われている各種エアハンドリングユニットに対応できるように、除菌エレメントの標準化を行っているほか、省スペースで設置できることから、既存物件への設置にも適しているという。

ダクト式空調は、空調された空気をダクトを通じて各部屋に供給

送風路上にあるチャンバーBOX内部に除菌エレメントを組み込んだ"チャンバーBOX組込み方式"

エアハンドリングユニット内部に除菌エレメントを組み込む"エアハンドリングユニット組込み方式"

2種類の組込み方式で、場所を問わずに設置することが可能になる

三洋電機 コマーシャルカンパニー冷熱技術開発センターVWプロジェクト リーダー 樂間毅氏

三洋電機 コマーシャルカンパニー冷熱技術開発センターVWプロジェクト 樂間毅リーダーは、「人のくしゃみなどでウイルスや菌に汚染された空気が、リターンエアとして、ダクトに戻り、汚れた空気のままで各部屋に供給されてしまうという課題があったが、今回の製品を利用することで、一度の通過だけウイルス/菌などを99%抑制する除菌エレメントを通過し、空気を浄化して供給することができるようになり、空調空間という、閉じられた空間における空気をキレイにすることができる」とした。

1システムで冷房能力で、28 - 280kW/315kW(50/60Hz)にまでの空調機に対応。空調機の能力に応じてシステム増設も可能としている。

また、電解水を浸透させた除菌エレメントは、気化式の加湿器と同等の効果があり、除菌エレメントを通過した空気には適度な水分を含んでいる。そのため、乾燥する冬場には潤いを持つ高い加湿効果を得ることができるほか、夏場は加湿を行うことなく、快適な空間を実現するという。

電解水ユニットは、最大64台までの一括遠隔管理が可能であるほか、省電力化を実現。また、電解水循環方式により、使用水量の最大75%を有効利用し、省資源化を実現することができるとした。

三洋電機 空調事業部 副事業部長 星野典正氏

三洋電機 空調事業部 星野典正副事業部長は、「これまでの大規模空間における空間の空気は、冷暖房による温度中心の制御だったが、今回の製品投入により、大規模空間でも安心、安全な空気を提供し、より快適な環境を実現していくことができる。ウイルス、菌、アレル物質、ニオイの抑制に加えて、加湿によるうるおい効果も実現できるのも特徴といえる。今後、多様な施設/空間に向けて快適な空質を提供することに力を注いでいく」としている。

除菌エレメントユニットおよび電解水ユニットで構成される機器本体の価格は170万円。設置費用を含めると250万円前後の価格を想定している。

同社では、ワーナー・マイカル・シネマズの26劇場の全スクリーンにウイルスウォッシャー機能搭載の空間清浄システムの導入を進めており、「これまでに19劇場、178スクリーンへの導入が完了している。導入した劇場では、約90%の来場者が空気がキレイだと感じており、約97%が次に映画を見るときには、空気がキレイな映画館を選びたいと回答している」という。

また、同社の大阪・守口市の本社ビル2階フロアにおいて、南北4部屋の機械室にエアハンドリングユニット組み込み方式の空間清浄システムを導入。80%の社員が空気の違いを感じているという。

ワーナー・マイカルの顧客の声をまとめると「キレイな空気の劇場でもう一度!」

三洋電機の本社社員は80%が空気の違いを実感できるとのこと。さすが!

同社におけるウイルスウォッシャー機能を搭載した業務用空間清浄システムの事業規模は、2008年度が10億円、2009年度が20億円。これを2010年度には40億円規模に拡大する計画だ。

なお、宮崎県で問題となっている口蹄疫への効果については、「効果が発揮する可能性はあるが、実証しているわけではない。効果を測定する必要がある」(樂間氏)とコメントした。