Wi-Fi AllianceのMarketing DirectorであるKelly Davis-Felner

Wi-Fi Allianceは4月20日、都内で記者会見を開催し、Wi-Fiを用いたスマートグリッドの現状についての説明などを、Marketing DirectorのKelly Davis-Felner氏が行った。

Wi-Fi Allianceの認証を受け、Wi-Fi CERTIFIEDロゴを付与された機器は、「2009年で約5億8,000万台。2010年は前年比16%増の出荷台数を見込んでおり、その適用分野もPC以外に民生機器や携帯電話などあらゆる所で使われるようになった」(Kelly氏)と、その市場拡大を強調するも、「それでもWi-Fiの活用はまだ始まったばかり」とより幅広い市場での活用に向けた期待を述べる。

2009年のWi-Fi認証取得機器は5億台を突破。この内1/4が携帯電話だという

特に同団体が期待しているのがスマートグリッド分野である。米国エネルギー省によると、スマートグリッドが米国でその効果を最大限に発揮した場合、石炭火力発電所66カ所分に相当する4億4,200万tのCO2排出量削減が可能になるという試算も出されている。

スマートグリッドはさまざまな市場が期待を寄せており、スマートメータについては、2009年の運用台数が全世界で7,600万台だったものが、2014年には2億1,200万台へと拡大することが見込まれているほか、今後20年間で100兆円の市場規模に成長するという予測もある。

すでに多くのメーカーがスマートグリッド市場に参入しており、スマートメータの数も確実に伸びていくことが予想される

米国でのスマートグリッドへの関心は、オバマ大統領が電力送電網(グリッド)の近代化に向け計34億ドルの資金投入を決定したこともあり高まっている。ベンチャー企業への投資も活発化しており、2010年第1四半期における私的投資は合計19億ドルにのぼり、同四半期にクリーン/スマートエネルギー分野のベンチャー企業など19社がIPOを果たした。

こうしたスマートグリッドへの注目の高まりとともに日本企業の動きについて同氏は「その役割は非常に重要で、日本の電子機器メーカーやコンピューティング、家電メーカーなどが各デバイス/アプリケーションで、よりスマートが電力消費を実現するソリューションの革新を推進していることを考えると、日本こそがスマートグリッドを牽引していくと見ている」と、日本企業の取り組みが1つの核となるとの見方を示す。

また、Wi-Fiをスマートグリッドにどうつなげるのか、という点について同氏は、「スマートグリッド技術について、プライバシーとアクセスコントロールの実現は基本的な柱となる。それも家庭で実際に機器を使用するエンドユーザーのみならず、電力会社や設備メーカーなどそれぞれを別々に保護する必要がある」とし、WPA2によるセキュリティ保護を活用することで、それが可能になると強調する。

また、「Wi-Fiを活用することで、単なるユーティリティAMI(Advanced Metering Infrastructure)ネットワークへの接続のみならず、すべての家庭内の機器がインターネットにも接続することが可能となる」(同)ということも強調、「あらゆる機器の消費電力のデータがユーティリティネットワーク経由でレポートされるのは基本となるが、インターネット側にも考え方次第で面白いアプリケーションが無数に出てくる可能性があり、まだまだ未知の分野であるが、今後面白いことが起きるという期待感がある」と将来、Wi-Fiを活用することで予想もできないサービスなどが登場する可能性があることを示唆した。

Wi-Fiをスマートグリッド分野に適用させることで、単にユーティリティ側のネットワークに電力状況を伝えるのではなく、インターネットにもつながることで、より新しいサービスなどの構築にもつながるというのがWi-Fi Allianceの主張

さらに同氏はWi-Fiの屋外ネットワークについても言及した。ネットワークの広さとしては家庭内のHAN(Home Area Network)、家屋の近隣まで含めたNAN(Neighborhood Area Network)、より広域な通信網であるWAN(Wide Area Network)などがあるが、Wi-Fiの適用領域に基本はHANだ。だが、IEEEで策定が進められている802.11sのようなメッシュネットワーク向け規格の標準化が進めば、自己修復(self-healing)を行う大規模Wi-Fiネットワークに対応が可能となり、かなり広い範囲をWi-Fiでカバーできるようになるという。

このほか、同氏はWi-Fi搭載端末としての躍進が続く携帯電話や、新技術として仕様の策定が完了した「Wi-Fi Direct」に関する説明も行った。携帯電話については、2009年のWi-Fi出荷実績5億8,000万台中その1/4を占める規模となっており、「携帯電話のWi-Fi対応は今後も伸びることが期待されており、2014年には携帯電話のみで5億台を占める見込み」(同)とするほか、Wi-Fi Certified nとして認証を受けた携帯電話もすでに16機種となり、「2012年までにほとんどの携帯電話に802.11n対応のWi-Fiが搭載される見込み」とした。

一方のWi-Fi DirectはWi-Fi対応のさまざまなデバイスを、アクセスポイントやホットスポットなどを介さずにP2P技術を活用して、それぞれ相互に1対1、もしくは1対多で接続しようというもの。これにより、複数台の携帯ゲーム機とプリンタ、据え置きゲームを直接接続したりすることができるようになる。すでに対応機器の開発も進んでおり、2010年中にリリースされる予定としている。