3月中旬のCTIA Wirelessで講演する米AT&Tワイヤレス部門CEOのRalph de la Vega氏。AT&Tの回線増強計画について語る

今夏の登場が噂される第4世代iPhoneでは、初となるCDMA版の提供が開始されるとともに、米国でこれまでiPhoneの独占供給を行ってきた米AT&Tだけでなく、その最大のライバルである米Verizon Wirelessからの端末提供が行われることになると言われている。だが独占供給停止とともに、貧弱な回線状況がたびたび指摘されるAT&Tから多くの顧客がVerizon側に流れるとの指摘がなされており、来たるべき日に備えてAT&Tでは回線の増強を急ピッチで進めており、顧客流出を最小限に留めようとしている。

同件については、米Wall Street Journalが31日(現地時間)付けの記事「AT&T Prepares Network For Battle」で報じている。以前にも、トラフィック激増と品質低下に耐えかねたAT&Tが料金プランの従量制への移行や容量キャップをほのめかした経緯がある。こうしたアイデアについては以後も何度かトップらが繰り返し主張しているものの、前述のようなVerizonとの競合もあり、短絡的な手段には訴えずに、まずは自身のネットワーク強化に乗り出し始めたという話が伝わっている。

WSJによれば、AT&Tは2009年12月に「100日プラン」という計画を立ち上げ、ニューヨークやサンフランシスコなど、非常に人口密度の高いエリアのネットワーク強化に乗り出したという。アンテナ設置や移動の他、指向性の微調整など、帯域確保のための急ピッチの作業だ。

AT&Tのネットワークの性質として、このような都市部では建物の影や内部、そして高層階でのつながりにくさやスピードの顕著な低下がある。高層階でユーザーがメールチェックを行った場合などに対応するため、アンテナの指向を上向きにするなどの調整が行われているという。一説によれば2009年の作業で同社のネットワーク容量は2倍にまで増大し、2010年にはさらに20億ドル以上の追加投資を計画しているという。

だがこうした労力にも関わらず、ユーザーからの評価は低い。ライバルのVerizonに比べて十分な品質を確保できておらず、一部アナリストらの指摘によれば、このような増設を行ってもなかなか改善には結びつかず、来たるべき日の到来でVerizonへのユーザーの大量流出につながる可能性さえあるという。