世界初の養殖サンゴの移植・産卵を成し遂げ、人間力大賞や環境大臣奨励賞、内閣総理大臣奨励賞を受賞した金城浩二さん。夢を追い続けた金城さん、彼を支え続けた妻の10年を描く映画が『てぃだかんかん ~海とサンゴと小さな奇跡~』だ。メガホンを取ったのは李闘士男監督。通常なら偉人伝になりがちな題材を、素朴で温かい"愚直でまっすぐな男の生き様"としてスクリーンに投影した李監督のこだわりとクリエイター魂に迫る!

李闘士男(り としお)
1964年生まれ。大阪府出身。日本大学芸術学部在学中に番組制作プロダクションでアルバイトし、アシスタントディレクターを務める。卒業後もバラエティー番組のディレクターとして、『とんねるずのみなさんのおかげです』、『サタ★スマ』、『タモリのジャポニカロゴス』(以上、フジテレビ系)など多数の番組を担当する。2008年には、2作目の監督作品として、『デトロイト・メタル・シティ』があり、2010年5月22日公開の映画『ボックス!』の監督と続く。撮影:石井健

主人公・健司(岡村隆史)とその妻・由莉(松雪泰子)のモデルとなった金城夫妻。2008年、知人の紹介で彼らに会った李監督は、数時間後には映画化を申し出たという。

李 : 「<言ってしまっていた>というのが正しいですね。金城さんご夫婦の話はいい話なんだけど、すごく人間臭かったんですよ。だから、話を聞いているうちに共振して、自然と映画化したいという気持ちになっていたんです」

映画監督を務めるのは本作が3作目となる。これまで愚直な人々のまっすぐな人生を描き続けてきた李監督。彼のこの作品に対する姿勢もまた"愚直でまっすぐ"。それは演出からもうかがわれる。例えば、サンゴの養殖をやろうと決めた健司が「子どもたちに綺麗な海を見せてあげたいんだよ」と言うシーン。普通なら盛り上げる演出をしたくなる感動ポイントだが、李監督は音楽を加えることもなく、まるで何気ない会話のシーンのようにサラリと流している。

李 : 「僕は最終的に外連を抑えた演出をするんですよ。テレビは情報を100%伝えなきゃいけないけど、映画は観る人が映ってないところまで感じるかどうかというのが大きいと思うんです。だから、僕はよく意外と大事なところでカメラを引いて撮影したりして、わざと見せなかったり、隠したりもするんです。最近の映画はロールプレイング・ゲームのように"これでもか、これでもか!"と足してくるけど、僕はよく引き算で演出をするんです。どんどん引いているうちに、その方法が合っている観客はどんどん前のめりになってくる。その方が観てる側もより深く共振できると思うんですよね」……続きを読む。

『てぃだかんかん ~海とサンゴと小さな奇跡~』STORY

幼いころから海の生き物が大好きだった金城健司(岡村隆史)は、故郷・沖縄でサンゴのあるバーを開店。店は大繁盛し、幼なじみの由莉(松雪泰子)と結婚して2人の子どもにも恵まれる。ところがある日、健司は店を畳み、サンゴを養殖して海に移植することを決意。「子どもたちに美しかったサンゴの海を見せてあげたい」――専門知識も何もない健司だが、由莉の大きな愛に支えられながら、無謀ともいえる計画にひたすら打ち込んでいく。