Intelの32nm世代プロセッサは、まずClarkdaleベースのCore i3/i5/i7が先陣を切って投入されたわけだが、これに続き、いよいよ6コア構成であるWestmere-EPをベースとした製品が登場することになった。このWestmere-EPをハイエンドデスクトップ向けとしたのが、Gulftownとして知られる「Intel Core i7-980X Extreme Edition」である。まだ正式な発売日や日本での価格は未公開だが、これに先立ち製品を試用する機会に恵まれたので、その性能などをお届けしたいと思う。

ベースはWestmere-EP

今回の製品試用に先立ち、ISSCC 2010にてIntelはWestmere-6C/2Cの詳細を発表しており、Westmere-6CではCoreに加えてL3キャッシュとQueue UnitにもClock Gatingを採用したことが明らかにされている(Photo01)。今回IntelからGulftownのダイ写真も発表されているが(Photo02)、どう見てもPhoto01と同一であり、GulftownはWestmere-6Cと同じものであると考えていいだろう。ちなみにWestmere-6Cについてはダイサイズ240平方mm、トランジスタ数11.7億個、Core電圧範囲は0.72V~1.20Vで、TDPは60~130Wとされている。Nehalem-EPはそれぞれ262平方mm、7.31億個、0.75~1.25V、60~130Wとされており、ほぼ回路規模を1.6倍に増やしつつダイサイズを10%減少させていることになる。プロセス微細化を考えればもう少しダイサイズが小さくなるかトランジスタ数が大きくなっても良い計算になるが、そもそも内部構造が完全に同じではないから、そうそう規則正しく減るものでもないだろう。余談ながら、Nehalem世代ではCore部(つまりCPUコアとL1/L2キャッシュ)に搭載されるSRAMは信頼性を重視して全て8T SRAMで構成するという話があったが、WestmereではL2は6T SRAMで構成されていることも、やはりISSCCで明らかにされている。

Photo01: ISSCC 2010でIntelが行った"Westmere: A Family of 32nm IA Processor"のDIGEST OF TECHNICAL PAPERSより抜粋。NehalemではUncoreと呼ばれる「CPUコア以外」は全て同一の扱いだったが、Westmere-EPではL3キャッシュとQueue Unitは「V-UncoreG」とされ、Clock Gatingが施される(QPIやMemory ControllerはClock Gatingの対象外)。

Photo02: ということで当然ながらQPIは2本あるが、このうち片方だけを使えるようにしているのはNehalemの場合と同じ。

さて話をGulftownに移す。パッケージは相変わらずのLGA1366であるが(Photo03)、裏のコンデンサの配置などは大分異なっている(Photo04,05)。動作周波数は、定格は3.33GHz動作。L1/L2キャッシュの構成はNehalemまでと同じだが、コアの数は6つになり、またL3キャッシュは12MBに増量されている(Photo07)。ちなみにTDPは従来のCore i7のExtreme Edition同様の130W、USでの価格も$999と発表されている。ただし動作周波数こそ従来のCore i7-975 Extreme Editionと同じだが、Intel Turbo Boostの動作がちょっと異なっている。同じ3.33GHzのCore i7-975 Extreme Editionの場合、表1の様に1-Coreの場合のみ2bin Upの3.60GHz動作で、それ以上だと1bin Upの3.46GHz動作が上限であったが、Core i7-980X Extreme Editionの場合は表2の様に2-Coreまでの場合で2bin Upがサポートされるようになっている(Photo08)。

Photo03: 相変わらずのES品。表から見ると、刻印以外は全く差がない。

Photo04: 裏面のコンデンサの配置は大分異なっている。

Photo05: 比較のためにCore i7-975を並べてみた。右がCore i7-980X。

Photo06: ここでは一時的に24倍の3.2GHz動作となっているが、本来は3.33GHzとなる。

Photo07: 面白いのはL3キャッシュで、容量は12MBと1.5倍なのに構成は16-way set associativeのままなこと。かつてConroe→MelomではL2キャッシュが16way→24wayにset associativityが増やされていたのとは対照的である。

Photo08: BIOS SetupにおけるTurbo Boostの設定画面より。ご覧のとおりデフォルトで2-Coreまでが27倍可能に設定できる。

■表1
定格 ×25(3.33GHz)
4-Core ×26(3.46GHz)
3-Core
2-Core
1-Core ×27(3.60GHz)
■表2
定格 ×25(3.33GHz)
6-Core ×26(3.46GHz)
5-Core
4-Core
3-Core
2-Core ×27(3.60GHz)
1-Core

ところでネットでは発売当初はWhiteboxのみでパッケージ販売は無いといった噂が飛んでいる様だが、Intelによれば発売の際にはちゃんとリテール向けパッケージも用意されるとの事(Photo09)。このリテールパッケージには、新しいDBX-BというCPUクーラーが付属するようになった。ちなみにこのDBX-B、寸法はW100×D95mm×H133mm(ファンガード含まずの実測値: ファンガード込みだとW115×D100mmほどになる)と、巨大化する昨今のクーラーからすればやや小さめ。重量はバックプレート込みで646gであった(Photo11)。ちなみに取り付けはやっとネジ式になったのは喜ばしい(Photo12)のだが、バックプレートはプラスチック製で、この結果取り付けるとマザーボードが相変わらず撓むあたりはもう少し改善の余地があるように思う(Photo12)。

Photo09: パッケージデザインは従来と大きく変わらないが、CPUクーラーの変更により形状はちょっと異なるものになった。

Photo10: 最大負荷時でも35dB以下という低騒音をウリにしているが、実際使ってみると騒音の低さを明確に感じられる。

Photo11: ちょっと見えづらいが、CPUクーラー上面には回転数切り替えスイッチが設けられ、Q(Quiet)とP(Performance)を選べる。今回はPのまま利用したが、十分騒音は低かったように思う。

Photo12: 基板の裏側にはLGA1366ソケット用のバックプレートがあり、今回のクーラーはそのバックプレートをまたぐ様に取り付けられる。ちなみにIntelのDBX-Bの紹介ビデオによれば、取り付けには「軸の長いNo.2のドライバーを用意せよ」とあるが、一応ドライバ無しで、手だけで取り付けることも可能ではある(ドライバを使ったほうが確実かつ容易だが)。

OS起動後は、こんな具合に12個のCPUが動作しているように見える(Photo13)。Windowsエクスペリエンスインデックスでは、CPU性能は7.7と評価された(Photo14)。

Photo13: デスクトップで12個のCPUというのも、これはこれで壮絶なものがある。ちなみにHyper-Threadingを有効にしているから6CPU×2=12という計算。

Photo14: ちなみにCore i7-975の場合、CPUスコアは7.4となった。