最近のWebブラウザではJavaScriptコードの実行速度が評価基準の1つになっているが、"地球最速"をうたうOperaのほか、高速性を売り物に登場したChromeやSafariなどに比べてFirefoxの評価は低く、高速なJavaScript実行エンジンの実装が課題になっていた。米Ars Technicaの報道によれば、このFirefoxの高速化に、ライバルであるChrome/Safari勢がレンダリングコアにしているWebKitプロジェクト技術の一部を利用しようとしているようだ。

Firefox 3.5では、JavaScriptコードの一部をネイティブコードに変換して実行速度を高速化する「TraceMonkey」というエンジンが搭載されている。だがTraceMonkeyは実装に手間取ったためにすでに何度か採用が見送られたうえ、変換可能なコードが非常に限定的であるという欠点もあり、Firefox 3.7以降での採用が見込まれる「JaegarMonkey」でさらなる変換効率向上を見込んでいる。

だがArs Technicaによれば、こうしたJavaScript実行エンジンのさらなる高速化のため、MozillaがApple主導のWebKitプロジェクトから一部コード流用を計画しているという。WebKitで利用されるJSCoreのネイティブコード生成エンジンをTraceMonkeyと組み合わせることで、現状の実行速度をさらにアップさせる狙いがあるとしている。

Firefoxでは現在、SpiderMonkeyをJavaScriptエンジンのコアに、高速化技術としてTraceMonkey、ネイティブコード生成エンジンとしてNanojitを利用している。NanojitはもともとTamarinプロジェクトから派生したもので、AdobeがECMAScript 4実装のために改良したものだ。FlashのActionScript実行などでも活用されているJIT(Just-In-Time)コンパイラである。JSCoreのJIT部分はNitroと呼ばれ、その高速動作で知られている。最終的にはより変換効率を高めたJaegarMonkeyとNitroを組み合わせるのが目的とみられる。