ソニーは9日、フルハイビジョンでの3D表示に対応した「LX900」「HX900」「HX800」3シリーズのブラビア8製品を発表した。3Dモデルのラインナップ構成は、LX900シリーズが、標準で3Dに対応したモデルで、3Dメガネ2個が同梱しており、本体にはブラビアと3Dメガネとをシンクロさせるためのトランスミッターも内蔵している。

標準で3Dの映像が楽しめる「LX900」シリーズ

6度上向きに傾くモノリシックデザイン

標準の3Dメガネ「TDG-100」

HX900/800シリーズは、オプションの追加によって3D表示が可能となるモデルで、背面に、トランスミッターを接続するためのシンクロ端子を装備している。なお、3Dメガネは「TDG-BR100」(標準サイズ)「TDG-BR50」(小型サイズ)の2種類を用意。TDG-BR100は6月10日発売で、TDG-BR50は6月25日発売。ともにオープンプライスで、市場価格は1万2,000円前後と予想される。トランスミッター「TMR-BR100」は7月16日発売予定で、価格はオープンプライス。市場価格は5,000円前後と予想される。

(左)「ほかのカテゴリーやグループ会社との連携で、3DでのNo.1ポジションを目指す」と語る、ディスプレイマーケティング部統括部長 粂川氏と(右)ホームエンターテインメント事業本部SVP石田氏。新ブラビアのラインナップは「多用なライフスタイルに対応した商品群」と語る

新ブラビアの発表会で、まず壇上に立ったホームエンターテインメント事業本部SVP石田氏は、新ラインナップについて「3D、デザイン、ネットワーク機能の強化で、多様なライフスタイルに対応した商品群」と述べ、この中の3Dに関しては「映画館という限られた場所から解放し、家庭で楽しめるものにする。そのための技術開発は、ソニーグループ全体で取り組んできた。また、夏から秋にかけてプレーヤー、レコーダーを順次発売していく予定。さらに新ブラビアの発売と同時に、PS3のソフトウェアアップデートを実施し、家庭で3Dのゲームを楽しめる環境を作る」とし、3Dの普及にとって大きな要素となる、コンテンツをいかに揃えるかという点に対して、同社だけでなく同社グループ全体で取り組むという姿勢を明らかにした。

新ブラビアのデザインに関しては「モノリシックデザイン(一枚板のようなデザイン)、消えているときにはインテリアとして映え、映像を映しているときには映像の邪魔にならないシンプルなデザインを目指した。また、6°のアップフォアードスタイルは、ローボードやフロアへの設置を可能にするもの」としており、スタンドによる設置や壁掛け設置以外のテレビの置き方についての新しい方向性を示すものだとしている。モノシリックデザインを採用しているのは、LX900/HX900/NX800/HX700シリーズ。HX900/NX800用には、このモノシリックデザインを、より引き立たせるアルミ製の専用スタンドがオプションとして用意される(7月16日発売予定。オープンプライス:市場価格は46V型用が2万5,000円前後、40V型用が2万円前後)。

ネット技術の利用に関しては「サービスを通じた差別化」の一環だとしており、ブラビアインターネットビデを例にに挙げ、「たんにネットにつなぐだけでなく、ネットによる新しい価値の提案をしていく」と、今後の方向を示した。

続いて壇上に立ったのは、ディスプレイマーケティング部統括部長の粂川氏。新ラインナップの全体像として、「4倍速とLEDバックライト、3D」が大きな特徴とし、「今回発表したリビング向けのブラビアは、当社初の60V型の製品も含め。すべてが4倍速。そして、LX900、HX900、HX800、NX800の4シリーズでLEDのバックライトを採用しています。先日発表したZX5/EX700も加えると、6シリーズ16機種がLEDバックライトモデル」とLEDバックライト採用モデルの拡大をアピールしている。新モデルの搭載しているLEDバックライトは、3種類。HX900シリーズが採用しているLEDバックライトは、直下型配置で分割制御タイプ。表示している映像の内容によって、部分ごとに明るさを変化させることで、より高いコントラスト比を実現するものだ。そして、LX900/HX800/NX800シリーズに採用されているのが、エッジライト配置のLEDバックライト。液晶パネルの下ではなく横、あるいは上下から導光板を使用して光を当てる方式。直下型に比べると薄型化に有利という特徴を持っている。この中でもHX800シリーズのみ、部分制御可能なエッジ配置型LEDバックライトを採用。薄型化と高コントラスト化とを両立している。

オプションの追加で3Dが楽しめる「HX900」シリーズ。部分制御タイプのエッジライトLEDを装備する

3Dシンクロトランスミッター「TMR-BR100」。LX900の本体内蔵トランスミッターよりも、こちらのほうが検知範囲が広い

3Dメガネ「TDG-100」(左)と小型で2色のカラバリをもつ「TMG-BR50」

こちらもオプションの追加で3Dを楽しめる「HX800」シリーズ

テレビ背面の3Dシンクロトランスミッター接続端子

アルミベゼルにマウントしたNX800シリーズ

そして、3Dに関しては「ブラビアの3Dは、2Dでの画質クォリティをベースにしたものです。4倍速の技術とLEDの高発光技術により、クロストークの少ない3D映像を家庭のリビングで楽しむことができる」と述べている。

同社の3Dの方式は、フレームシーケンシャル方式とアクティブシャッターメガネとを組み合わせたもの。フレームシーケンシャル方式とは、右眼用と左眼用の映像を、1フレームごとに交互に表示するもので、そのタイミングに同期して、メガネに装備された液晶シャッターが開閉することで、3D表示を実現している。3D表示で問題になるのが、左右の映像が混ざってしまうという「クロストーク」だ。テレビの画像は、上から順に1ラインごとに表示されていく。そのため、一般的には、左眼用の画像を表示している状態といっても、左眼用のフレームをすべて書き終えた状態ということもあるし、まだ書いている途中ということもある。書いている途中の場合には、まだ書かれていない部分には、その前の右目用のフレームが表示されることになる。これがクロストークの原因だ。同社のテレビでは、以前より240Hz駆動の4倍速表示が採用されている。今回発表された3Dの方式は、この4倍速表示を応用したものだ。新ブラビアでは、240Hz駆動で、同じ映像を2度書きする。つまり、左眼用のフレームを2回書き、その次に右目用のフレームを2回書く。そして、1回目に左眼用の画像を書いているときと1回目に右眼用の画像を書いているとき、つまり、前のフレームの上に新しい画像を書いているときには、LEDバックライトをオフにする。そして、左右両方のフレームを2回目に書き込んでいるとき、つまり、画像の上に同じ画像を書き込んでいるときだけ、バックライトをオンにしている。これにより、バックライトがオンになっているときには、常に正しい画像が表示されている状態となり、クロストークの発生を抑えることが可能となっている。このため3D表示の場合には、バックライトは、2D表示に比べて、1/2の時間しか点灯しないことになるが、3D表示の場合、2Dの場合よりもLEDの明るさを上げることで、リビングでも十分な明るさの3D表示を実現している。

フルHD 3D表示/再生のしくみ

4倍速技術によるクロストークの低減

さらに「偏光板のないメガネを採用することで、照明器具などによるフリッカーが発生しない3D」とも述べている。これは、照明器具の種類によっては、3Dの映像と干渉を起こし、不快なちらつきが発生するといいう問題がある、プラズマ方式の3Dに対する牽制の意味も含まれているのだろう。

さらに、コンテンツに関しては、石田氏が述べた「グループ企業との連携により、映画、ゲームのコンテンツを備える」という点のほかに、「2D/3D変換機能」の装備について、その意義を語った。2D/3D変換機能は、リモコンに付いている「3D」ボタンを押すと、通常の2Dの映像がリアルタイムに3Dに変換されるというもの。最初から3Dで作られた映像ほどではないが、2D映像から作られているとは思えないほどの立体感を味わうことができる(初めから3Dで制作されている映像は、どちらかというと、被写体が飛び出してくるような印象を受ける一方、2D/3D変換された映像からは、奥行きがプラスされているような印象を受ける)。コンテンツが揃うまでの橋渡し役としては期待できる。なお、2D/3D変換は、外部入力にも対応しており、自分で撮影した映像などを3Dで楽しむことも可能だ。

モーションフロー 240Hz(フレームブリンキング) LX900/HX800シリーズ

モーションフロー 240Hz(ラインブリンキング) HX900シリーズ

また、3D以外の機能に関しては、LX900シリーズの装備しているインテリジェント人感センサーを「エコだけでない人感センサーの利用」として、取り上げていた。テレビへの人感センサーの装備は、人が近くにいないときに画面をオフにして消費電力を減らすというのが大きな目的だ。LX900シリーズには、採用されているのは、カメラセンサーを加えた「インテリジェント人感センサー」。インテリジェント人感センサーは、カメラのセンサーと同じように、顔認識を行うもので、人がいるかどうかでの省エネだけでなく、テレビを見ているかどうかで、より高いレベルでの省エネを行うことが可能だ。さらに、子供が画面に近づきすぎるとアラームで知らせる「近すぎアラーム」や、どの位置で見ているかを把握し、見ている位置にあった音質や音量、映像のγ値調整を自動で行う機能も搭載されている。

なお、同社では、新ラインナップのマーケティングに関しては、「3Dブラビア体験イベント」を全国11都市で開催するなど、実際に3Dを体感するイベントを中心としていくとのことだ。家庭で楽しめる3D映像が、どのくらいのレベルに達しているのか興味がある人は、参加してみてはどうだろうか。また、銀座のソニービルのソニーショールームでも、3月10日より3Dフロアが設けられる。

型番 画面サイズ 3D対応 発売日 推定小売価格
LX900 KDL-60LX900 60V型 標準対応 7月16日 58万円前後
KDL-52LX900 52V型 標準対応 7月16日 43万円前後
KDL-46LX900 46V型 標準対応 6月10日 35万円前後
KDL-40LX900 40V型 標準対応 6月10日 29万円前後
HX900 KDL-52HX900 52V型 オプションの追加で対応 7月16日 47万円前後
KDL-46HX900 46V型 オプションの追加で対応 7月16日 39万円前後
HX800 KDL-46HX800 46V型 オプションの追加で対応 7月16日 28万円前後
KDL-40HX800 40V型 オプションの追加で対応 7月16日 22万円前後