少しずつ寒さもやわらぎ、「春眠暁を覚えず」の季節ももうすぐ。でも、景気のせいか、仕事のせいか、それとも何か他の原因があるためか、ぐっすりと眠ることができず、すっきりと目覚めることができないという人もいるのでは? 実際、日頃の睡眠に満足している人は意外と少ないのではないだろうか。どうすれば、睡眠の問題を解消できるのか。快眠セラピストの三橋美穂氏にコツを聞いた。

1.「眠り」は昼間の生活を反映している

まず、心がけたいのは規則正しい生活。人間の脳には「体内時計」があることは知られている。そのリズムを乱さないように起床・就寝時刻をなるべく一定にしたい。夜更かしや不規則な生活は、眠りの質を低下させるだけではなく、体調不良の原因にもなる。多くの人が「昼間=メイン」で、睡眠はサブ的なものと考えているかもしれないが、これは大きな誤り。昼の生活も夜の睡眠も同価値であることを、しっかりと認識すべきだ。なお、朝起きたら太陽の光を浴びる習慣をつけよう。心身ともにすっきりするだけではなく、体内時計もリセットされる。昼寝をする場合は、午後3時前に15分ほどが理想的。オフィスワーカーは昼休みにうたた寝をしておくと、午後の集中力が上がる。目を閉じるだけでも脳は休まる。

2.日中は体を動かすように心がける

昼間、運動したり、出かけたりなど、活動的に過ごせば、疲労を回復するために眠りの必要性が高まる。運動は、午後4時から8時頃までに行うと効果的。この時間帯に体を動かし体温が上昇すると、その後体温が下がり、眠くなってくる。オフィスワーカーの場合はなかなか運動する機会がないかもしれないが、歩幅を広くして歩くのがおすすめ。歩幅を5cm広げただけで、5分の運動量が7、8分に相当するようになる。できるだけ階段を利用したり、仕事の途中でストレッチをするだけでも効果はあるから、要は心がけ次第だ。お風呂はぬるめの湯(38~40度)に20分くらい入るといい。

3.夕食は就寝3時間前までに

食事も睡眠に大きな影響を与える。就寝時には消化を終えておくべきなので、夕食は就寝3時間前までには済ませるように。できれば1日のメインを昼食にして、夕食は軽めにしたいもの。和食を中心にして、ご飯と季節の食材をバランスよく食べるようにすれば、より理想的だ。カフェインやアルコールも控えめにするよう気をつけたい。寝酒は酒量が増え、睡眠も脳が整理されない質の悪いものになってしまう。ぐっすり眠れたというのは錯覚で、実際は「麻酔」にかかっていたようなものなのである。残業で食事が遅くなったときなどは、油が少なく水気の多い消化のよい食べ物、例えば温かいうどんやそばがおすすめだ。

4.ストレスはためこまないように

気がかりなことがあると緊張や不安のため、脳の情動中枢が興奮して寝つきが悪くなってしまう。精神的なストレスはためないように、自分なりの解消法を身につけておきたい。とは言っても、ストレスのため眠れない経験は誰にもあるはず。そんなときは、まず眠ろうと意識しすぎないようにしよう。「眠らなくては」というプレッシャーから解放されると、案外自然に寝入れるものだ。寝る前にその日一日の「よかったこと」や「達成できたこと」を思い出すのもいい。どんな小さなことでもいいから、思い出して前向きになれれば、体の緊張はほぐれ、いい眠りにつくことができる。

5.就寝前はリラックスをして過ごす

昼間の「活動モード」から「お休みモード」へは、すぐに切り替えることはできない。読書や音楽、ストレッチなど、1時間くらいはゆったりとリラックスして過ごすようにしよう。酒、タバコ、カフェインなどの刺激物は避け、照明は明るすぎないようにし、パソコン、メールなども控えたい。睡眠環境も重要だ。ベッドや布団、枕などの寝具は自分に合ったものかどうか。眠りに問題がある場合は、寝具を見直してみることも必要。ただ最近は、さまざまな寝具、快眠グッズがあり、迷ってしまうこともあるかもしれない。そんなときは専門家に相談するのが問題解決への近道だろう。

三橋美穂(快眠セラピスト)
寝具メーカー研究開発部門長を経て独立。睡眠を多角的にとらえ、わかりやすく実践的なアドバイスには定評がある。とくに枕は、その人の頭を触っただけで、どんな枕が合うかすぐにわかるほど。講演・執筆・個人相談のほか、ベッドメーカーのコンサルティングやホテルの客室コーディネイトなど、企業の睡眠関連事業にも多く携わる。著書に『ねこに教わる快眠レッスン60』(PHP研究所)、『幸せを呼ぶ 快眠ヒーリング』(日本実業出版社)、『快眠セラピー』(KKロングセラーズ)など多数。