ジャストシステムは2月17日、法人向け日本語入力システム「ATOK CE(Corporate Edition) for Windows」を2010年3月12日より順次販売を開始すると発表した。

法人向けのATOKの活用としては、医療現場における電子カルテや新聞などの記者端末、役所などの公文書作成などにこれまでも活用されてきたが、個人向けと同様の「ATOK 2009」に各分野における「辞書オプション」を組み合わせた形などで販売を行ってきた。

ジャストシステム ライセンス事業本部の植松繁氏

「しかし、それだけでは痒いところに手が届かない面が多々出てきていた。オプションでの提供という形でも良かったかもしれないが、我々は個人と法人では使い方が違うと思っている。個人は、その人が使いやすいようにATOKを成長させていくが、法人ではその組織のパフォーマンスを向上させる付加価値が日本語変換ソフトに求められるようになっている」(同社ライセンス事業本部の植松繁氏)というカスタマ側の要望もあり、法人向けを新たに開発したという。

これまでもさまざまな法人で使われてきたATOKだが、有料の日本語ソフトを活用するということで、付加価値が求められるようになってきたという

法人向けとしては、例えば製品名を入力すると型番が自動で表示されるように、管理側で専門用語や業界用語を用意することでより簡単に日本語変換に対応できるようになるほか、社員番号や氏名、メールアドレス、内線番号などを紐付けることで、番号を打ち出すとメールアドレスが出るなど、組織の効率向上を可能にする工夫が施されている。

組織内の文章ポリシーや業界用語、製品名などを共有することで業務効率の向上につなげられる

実際のソリューション構成としては、「ATOK Business Solution(ABS)」という管理側のアプリケーションに辞書情報などを蓄積、各クライアントに配信して活用できるようになっているほか、クライアント側で良く使用している用語などを収集、分析、管理者側がそれを確認して、新たに辞書に登録して再びクライアント側に配信することができるような社内の循環サイクルを構築することが可能となる。

ATOK CEとABSを組み合わせることで、入力/校正/蓄積/配信のサイクルができ、それぞれの法人に応じた用語の活用が可能となる

ATOK CEを活用することにより、4つの業務フェーズ「評価」「管理」「運用」「活用」、それぞれのシーンでの効率向上が可能なるとするほか、企業内でATOKを活用する際、すべての機能を使う必要がない場合があり、その場合には余計な操作を覚える必要などがでてくるため、ユーザー負担が増すこととなる、そのため、あらかじめATOKで活用するメニューをカスタマイズすることにより、ボタンの削減やタスクバーへの入れ込み、メニュー表示の取捨選択が可能となった。

また、Active Directoryにも対応。Windows Group Policyによる統制が可能なため、グループごとに異なる仕様のATOKを活用することも可能となった。

Windows Group Policyにより、法人内やグループごとのATOK環境を一括して変更することが可能

さらに、社内の専用辞書を用意することで、その社内で必要とされる表現や固有ルールなどに対応することが可能となるほか、Webなどの外部情報を直接取得して、入力変換時にその情報を参照・活用可能な「ATOK ダイレクト」機能を、Excelファイルに対して利用可能にする「ATOK ダイレクト for Excel」を搭載。これにより、特定のフォルダにExcelファイルを置くことで、Excelファイル内のデータを入力の際に直接参照することが可能となる。加えて、Excelファイル内のデータを変更することにより、部門やグループごとでも更新した情報の共有が可能となる。

このほか、ATOK導入時と非導入時の入力効率や入力時間、確定した文字に関してバックスペースやDeleteキーの押した割合などをグラフ化することが可能であり、業務効率の改善率を可視化することができる。

ATOK導入時と非導入時の文字入力時間や誤字の割合などを可視化することが可能

価格は一般的な「JL-Standard」および何年間で何本購入するということをコミットする必要のある「JL-Excellent」が1ライセンスあたり9,000円(税別)のほか、既存ユーザーの優待版として1ライセンスで8,000円(税別)の提供が行われる(官公庁向けのJL-Governmentはオープン価格)。1年間のライセンス版も用意しており、そちらは1ライセンスで4,000円(税別)となっている。なお1ライセンスごとに1枚の作業ディスクが必要となり、1枚あたり2,000円(税別)で提供される。

また、ABSは「ATOK Business Solution 辞書配信システム5」がATOK CEを100クライアント購入するごとに1ライセンスの購入が必要となり、価格が10万円(税別)となっているほか、1年間の期間契約版が3万円(税別)となっている。一方の「ATOK Business Solution 用語管理データベース3」の価格が60万円(税別)。こちらも1年間の期間契約版が用意されており、価格は15万円(税別)となっている。

なお、対応OSはATOK CEがWindows XP(SP2)/Vista/7およびWindows Server 2003/2003 R2/2008/2008 R2。ABSのサーバ側環境がWindows Server 2003/2003 R2/2008/2008 R2の各日本語版となっている。