日本IBMは2月9日、200G FLOPS超の処理能力を誇る新CPU「POWER7」と、同CPUを搭載した新サーバ4モデルを発表した。

POWER7のチップ、セラミックモジュール、オーガニックモジュール

POWER7の大きな特徴は、最大8コアを搭載でき、32MBの大容量L3キャッシュを「eDRAM(embedded DRAM)」としてCPUに内蔵する点。1コア当たりの実行可能スレッド数も4スレッドと、従来のPOWER6に比べて2倍に向上しており、8コア搭載した場合は従来比8倍の、1CPU当たり32スレッドの並列処理能力を備える。

POWERプロセッサーの進化

POWER7のチップ概要

POWER7のコアテクノロジー

また、CPUに組み込まれたeDRAMにより、L3キャッシュへのアクセス速度は6倍にまで向上。さらに、SRAMに比べて、スペースは3分の1、待機消費電力は従来の5分の1、ソフトエラー発生率は250分の1に抑えられている。

CPU内蔵の32MBのL3キャッシュ

加えて、POWER7では、AIXとの組み合わせにより「Active Memory Expantion」(以下、AME)と呼ばれる新技術を実現している。AMEを利用すると、アプリケーションが使用するメモリ量を圧縮でき、メモリ容量を実メモリーの最大10倍まで仮想的に増量させられるという。

AMEの概要

そのほか、POWER6/6+との互換モードが組み込まれており、POWER6/6+とPOWER7の間でバックアップリストア無しで双方向のLive Partition Mobility移行が行えるうえ、後述する8コアPOWER7搭載サーバ「Power 780」では、「TurboCore」という新機能を搭載しており、1コア当たりの処理能力を高めたい場合に、4コアを休眠させて32MBのL3キャッシュを4コアで活用できる仕組みになっている。

POWER7ではPOWER6とのLive Partition Mobility移行機能が搭載されている

TurboCoreは「DBアプリケーションや科学技術分野の計算処理などで重宝する」(日本IBM システム製品事業 パワーシステム事業部 システムズ&テクノロジー エバンジェリスト 岩田恵氏)が、Webアプリケーションのように多数のユーザーを同時並行的に扱う必要がある場合には、「8コアすべてを活用する通常の『MaxCore』に切り替えて利用することができる」(岩田氏)ため、日本IBMでは、クラウドコンピューティング時代の多様なシステム要件にも柔軟に対応できると説明している。

TurboCoreの概要

POWER7を搭載したサーバは、省エネ対応の中規模ビジネス向け4Uラックマウントモデル「Power 750」、HPCクラスタ向け4Uラックマウントモデル「Power 755」、ハイエンド機並みの信頼性を持つ中規模/大規模システム向けラックマウントモデル「Power 770」、TurboCore機能を備える「Power 780」の4機種。各機種の主な仕様は以下のスライドのようになっている。

POWER7搭載サーバ4機種の主な仕様

Power 750/755の外観(写真はPower 755のもの)

Power 770の外観

Power 780の外観

なお、Power 750と755に関しては、サーバーとしては初めて米国EPA(Environmental Protection Agency)の省エネルギー認定制度「ENERGY STAR」を取得している。

日本IBMでは、これらのサーバと併せて管理の自動化を実現するソフトウェア製品群「System Director Editions for Power Systems」も提供する方針。POWER7搭載サーバと管理ソフトウェアを統合したソリューションの特徴を表すキーワードとしては、「仮想化無限大」、「ダウンタイム・ゼロクラス」、「ダイナミックなエネルギー最適化」、「自動化された管理」の4つが挙げられている。

System Director Editions for Power Systemsの概要