NTTドコモの山田隆持社長

NTTドコモは29日、2010年3月期第3四半期(2009年4月1日~12月31日)の決算を発表した。営業収益は前年同期比4%減となる3兆2,424億6,400万円、営業利益は同5.9%減の7,026億5,300万円、税引前純利益は同1.1%減の7,016億8,700万円の減収減益だった。

ただ、第3四半期(9月~12月)に限定すると28%の増益となり、通期での営業収益4兆2,760億円、営業利益8,300億円、税引前純利益8,250億円の予測は変更しない。同社の山田隆持社長は、「パケット料金を成長させることが最重要」と指摘。米Appleが発表した「iPad」に関しては「興味は強く持っており、是非前向きに取り組みたい」と話している。

今回の減収は、前年上期に新販売モデルを導入したことで一時的に端末販売が上昇したため。前年に比べて端末販売収入は848億円のマイナスとなった。さらに音声ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)も減少を続けており、今期は1,875億円減だった。このうちの1,000億円程度は、バリュープランを導入したことによる影響だという。

2010年3月期第3四半期の結果

それに対し、パケット収入は592億円のプラス。端末販売減少により販売費用が996億円のマイナス、効率化などによるネットワーク関連コスト906億円の減少、その他の収入増が766億円、その他の費用が980億円の増加となったことで、全体として営業収益は1,364億円のマイナス、営業費用は923億円のマイナスだった。

パケット料金は、パケ・ホーダイやパケットパックなどから、パケ・ホーダイダブルへの移行や月額料金の下限引き下げが影響して200億円程度減少したが、契約数やパケット利用の増加で600億円程度のプラス。さらにスマートフォンやPCデータ通信が増加したことで100億円、iモード付加機能使用料の値上げでも100億円のプラスが発生しており、全体でパケット収入は592億円の増加となった。

パケット収入

端末収入では、累計販売数が12%減の1,301万台、収入は1,283億円の減少となった。通信設備使用料や減価償却費などのネットワーク関連コストを906億円削減し、端末販売に関わる収支が改善したことで、減少分の大半を取り戻した。また、前年同期比では6.9%減と減少幅が小さくなっており、山田社長は「下げ止まり時期に来たのではないか」と推測する。また純増シェアは累計で26.7%の2位、MNP流出、解約率も減少傾向にあり、流出傾向は落ち着いてきていると見る。

端末収入とコスト削減

解約率の推移

端末の総販売数

純増シェア・MNPの状況

ほかにも、新販売モデル導入に伴い、端末の利用月数が「36カ月程度」(山田社長)まで伸びたことで、故障件数が増加。端末修理などのコストが200億円程度増加した。月額315円で紛失や全損時などに端末を交換する「ケータイ補償お届けサービス」は、契約数が増加したことで収益と費用がほぼ拮抗しており、「決算への影響はない」(坪内和人財務部長)という。さらに、通販のオークローンマーケティングを連結子会社化したことで収益は350億円増、費用は300億円増となっている。

これらの結果、通期予想に対する進捗率は84.7%となり、「予定通りで着実に進捗している」(山田社長)状況だ。

音声とパケットをあわせた総合ARPUは6.5%減の5,440円で、パケットARPUは3%増の2,440円だったが、音声ARPUの3,000円(13%減)を取り戻せなかった。こうした点を踏まえ、山田社長は最重要課題としてパケット利用の拡大をあげており、「稼ぎ頭」(同)のiモードに関しては、ヘビー・ミドルユーザーには「BeeTV」などの動画コンテンツの拡充などを図り、ミドル・ライトユーザーには、まずパケ・ホーダイダブルへの加入を促進し、その後の利用拡大につなげていきたい考えだ。

ARPUの推移

利用拡大に関しては、地域密着型コンテンツを提供したり、iモードの使い勝手や利便性を向上させるという「2本柱」(同)の取り組みを実施していく。地域密着型コンテンツでは、12月に契約数310万を突破した「iコンシェル」をさらに充実させる。オートGPS機能の追加で、スーパーのそばを通ったらセール情報が自動的に配信される、といったよりパーソナル化された情報が提供できるようになっており、こうした地域コンテンツをさらに充実させていく。

ミドル・ライトユーザー向けのパケット利用促進のための施策

PCデータ通信では、1,000円からの2段階定額制や「ドコモはネットワーク品質がいいと評価されている」(同)ことから利用が増加しており、「販売に勢いがついている」(同)状況。通信モジュール内蔵PCも5メーカー・20機種に増え、通信端末は月間5万台ずつ増えており、シェア30%を狙って力を入れていくという。

スマートフォンについては、これまでの取り組みに加え、4月からはパケット定額制を充実させ、山田社長肝いりの新端末「Xperia」を投入する。ITリテラシの高いユーザーだけでなく、一般ユーザーが簡単に使えるスマートフォンを実現していきたいという。今後、スマートフォンの新端末は「5プラスマイナスぐらい」(同)投入することを検討していくそうだ。

新端末では、山田社長は自ら米Appleの「iPad」に関して言及し、「iPadは洗練された通信モジュール内蔵PC、高級なネットブックと思っている」との認識を示した。また、まだ勉強中と前置きしつつ、「(iPadでネットワークを提供する)AT&Tはインセンティブを出していないと言われている。SIMフリーの端末なので、ドコモも(同様に出したい)という形で、前向きに取り組んでいきたい」と強い興味を表明している。

米AmazonのKindleやiPadで注目を集める電子書籍についても、「新たな波が出てきている」と話す。こうした状況について山田社長は通信業界の環境が「ダイナミックに動いている」(同)と指摘し「変化を商機ととらえ、新たなチャレンジを実行していきたい」と意気込んでいる。