ガートナーはこのほど、2010年以降に企業のIT部門およびユーザー部門に対し長期的に大きな変化を与える重要な展望をまとめたレポート「Gartner Predicts 2010」を発表した。同レポートでは、クラウドサービス、ソーシャルネットワーク、CO2削減対策などが、今後ビジネスの本質を変えるトレンドとして挙げられている。

フェロー兼マネージング・バイスプレジデントのDaryl Plummer氏は、「2009年は、数多くの組織が財源と予算の両方で課題に直面したが、これによりIT投資の判断における全般的なガバナンス態勢に重大な変化を引き起こし、説明責任と透明性に向けたトレンドが促進された。2010年は、ほとんどの企業が成長局面に戻るための準備を整えているが、財政面の厳しいチェック態勢が解かれることは当分ないだろう。ビジネス用語を用いて円滑にコミュニケーションを図る能力は、ITリーダーにとって必須条件になっている」と語っている。

以下、同社による2010年以降の重要な展望をいくつか紹介する。

2012年までにIT資産を自社で保有しない企業の割合は20%に達する

仮想化、クラウドサービス、ビジネスでの従業員個人所有のデスクトップ/ノートブックの利用など、複数のトレンドにより、企業のITハードウェア資産の減少に向けた動きが促進されると、同社では見ている。

ハードウェアの所有権が第三者へ移ると、IT予算の縮小、ITスタッフの削減や新たな役割に応じた再トレーニング、ハードウェア購入の新たな発注者の要件を満たすための変更など、大きな変化があるという。

2012年までにクラウド・アグリゲーター市場でインドを中心とするITサービス企業の占める割合は20%に達する

現在インドを中心とするITサービス企業は、市場で確立されたポジションと高レベルの信頼性を基盤に労働を基盤にした成長に直接関係しないモデルの実現を模索しているとともに、興味深い研究開発活動を展開していると、同社では見ている。これは特にクラウド・コンピューティングの分野で顕著だという。

2012年までにFacebookがソーシャル・ネットワークの統合とWebのソーシャル化のハブとしての役割を担う

数あるソーシャルネットワークの中で、Facebookはサイト内の情報を外部サイトで利用できる機能「Facebook Connect」や同様の仕組みを通じ、ソーシャルWebの発展を支援し、リードする役割を担うことになると、同社では見ている。

2014年までにほとんどのITビジネス・ケースにCO2対策コストが含まれるようになる

ビジネス・ケースにCO2対策コストを組み込むことで、節減対策をより進められるとともに、CO2排出に対するチェック態勢の強化に備えることができるという。

ビジネス・ケースにCO2対策コストを含めることで、置き換えサイクルは若干早まると考えられると指摘されている。通常のITの運用環境におけるCO2対策コストが企業のコスト全体に与える影響は、概算で1~2%増というのが妥当なところであることから、CO2対策コストは市場の規模ではなく、市場シェアの変化に影響を与えると、同社では見ている。

2012年、新しいPCの有効寿命全体を通じた温室効果ガス排出の60%はユーザーが初めて電源を入れる前の段階で発生する

一般的なPCにおいて有効寿命全体を通じて消費する化石燃料は、重量の10倍に上るが、エネルギー消費の約80%は製造と輸送時に発生している。ただし、今後は環境への配慮に対する意識の高まりと法的規制の強化によって、製造および利用時のCO2排出に対する認識も高まると、指摘されている。