次に、資格取得に時間だけでなく費用もかかるSAP認定コンサルタント資格を取得することによるメリットを考えてみたいと思います。

SAP認定コンサルタント資格の取得によるメリットは、資格を取得したコンサルタント/SEの立場で考えてみると、個人のキャリアアップといえます。キャリアアップには、「転職時における有効性」と「学習の過程がもたらすスキルの向上」の双方から捉える必要があります。

まず前者ですが、SAP認定コンサルタント資格はSAPシステムに関する唯一公式の資格であり、転職時のレジュメ記載などでも有効です。

実例として、現在筆者が担当している海外法人でのSAP導入プロジェクトにおいて、現地でSAPコンサルタントの採用を実施した際のお話をしましょう。応募してきたコンサルタント/SEは全員がA4サイズのバインダーに、レジュメ以外にも、自身の保持するSAP認定資格の資格認定証、過去に参画したプロジェクトのクライアントからの推薦状などを入れて面接に臨んできました。もちろん採用する側も、応募者がSAP認定コンサルタント資格を保有しているからといって、SAPシステム導入を推進するための万全のスキル/経験を持っているとは考えません。ですが、少なくともSAPシステムの概要やベースとなる基礎知識を知っていて、SAPシステムの設定(カスタマイズ)がある程度できる人であることは判断できます。

一方、企業側にとっても、SAP認定コンサルタントを数多く従業員に抱えていることは、その企業の評価向上につながります。SAPジャパンのWebサイトに「パートナー別認定コンサルタント数」というページがあり、各SAP導入パートナー企業の資格認定数が多い順に表示されています。当然ながら、資格認定数の大小でSAP導入パートナー企業の実力のすべてをはかることはできませんが、SAPシステムの導入に力を入れていることや、導入を担当できるコンサルタントが多いことの証明にはなります。このため、SAP導入パートナー企業にとってみれば、SAP認定コンサルタント資格を有している応募者を積極的に採用したいのは事実です。

このようにして、プロジェクト単位でのパフォーマンス、そして企業としての実力の双方の観点から採用が決まっていくのです。

筆者が所属している日立コンサルティングでも、SAPコンサルタントの採用を積極的に行っていますが、やはりSAP認定コンサルタント資格を保持していることは、SAPコンサルタントとしての最低限の条件として考えています。つまり、SAP認定コンサルタント資格は個人のキャリアとして使えると考えてよいでしょう。