OS基本性能から、仮想化環境まで、多岐にわたり機能改善が行われている「Windows Server 2008 R2」。すでにリリースから3カ月以上が経過しており、簡単な紹介記事も数多く出回っているが、同サーバが本当に使えるものなのか確信が持てずに周囲の反応を見守っているシステム管理者は多いはずだ。

そこで、本誌はWindows Server 2008 R2の導入を5人のライターに依頼。その模様を体験記というかたちでレポートしてもらうことにした。

今回、導入/執筆を担当するのはFreeBSDのコミッターとして活躍する後藤大地氏。OSの機能については詳しいが、Windows Serverはほとんど触ったことがないという後藤氏に、FreeBSDには搭載されていないリモートデスクトップを触ってもらった。Windows Serverへの乗り換えを考えている方や、リモートデスクトップの導入を検討している方には参考にしていただけるはずだ。

Windows 7と同じコードベースの最新サーバ

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後藤
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Windows 7の販売が開始された10月22日、マイクロソフトは、同社の主力製品をもう1つ発売した。それが、本稿で取り上げるサーバOS「Windows Server 2008 R2」(パッケージ版)である。

実は、Windows Server 2008 R2とWindows 7は同じコードベースで開発されている。Windows Server 2008 R2は、前バージョンの名称「Windows Server 2008」に「R2」が追加されただけで、マイナーマージョンアップのように見えるが、実質的にはメジャーアップグレードバージョンに近いという。

Windows Server 2008 R2で注目されるのは、ターゲットに中小企業が含まれていることだ。特に日本においては、そちらへ向けたメッセージが強いように思える。というのも、Windows Serverを導入する割合をみると、日本は中小企業における導入割合が欧米諸国に比べて極端に少ない。そこで、中小企業に対しても同サーバのメリットを十分に周知すべく、大規模システム以外でも役立つようなさまざまな機能が取り上げられているのだろう。Foundationというエディションが用意された点も、中小企業への導入を促進する施策の1つと言える。

Windows Serverはうまく活用すれば、コストの削減、法令遵守、セキュリティの向上という、企業に求められる要望の多くを満たせる製品になっている。たしかに、プロダクト単体の価格は中小企業にとって安くないが、複数のユーザにデスクトップを提供できることなどを考えると、使い方次第ではコスト削減も見込める。

Windows Server 2008 R2は、180日間の評価版が提供されている。実際のハードウェアにインストールしても、仮想環境にインストールしても使える。そこで、筆者も、どんなプロダクトなのかインストールして調査してみようと思う。

エディションの選択

Windows Server 2008 R2には6つのエディションがある。まずはどれにするか決めなければならない。

エンタープライズ向けとあって決して安い買い物ではない。この不況下にあっては特に、誤ることなく、最も効果的なエディションを選びたい。

今回は、弊社で実際に導入することを念頭に置き、小企業向けのシナリオで進めていく。なので、ハードウェアの購入が小企業にとって現実的ではないItanium版は外すとしよう。その方針の下に、マイクロソフトの発表資料から該当エディションをピックアップすると次のようになる。

エディション 対象
Datacenter 基幹業務向けのエディション。高いスケーラビリティ信頼性を持ち、最大16ノードの大規模なクラスタを構築可能
Enterprise 大規模から中小規模までをカバーするエンタープライズ向けエディション
Standard 日常業務の効率化を実現するための機能とサービスを提供する、導入しやすいエディション
Foundation 15名以下の中小企業向けに日常業務の効率化を実現するための機能とサービスを提供するコストメリットの高いエディション(OEM提供のみ)
Web Server IISをベースとしたWebサーバ専用エディション
エディション 仮想OS数 パッケージ参考価格(税別) 備考
Datacenter 無制限 ボリュームライセンスのみ
Enterprise 4 720,000円 25CAL付き
Standard 1 188,000円 5CAL付き
Foundation - OEM提供のみ
Web Server - 85,800円
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後藤
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各エディションが提供している細かい機能を調べるならマイクロソフトのWebサイトに掲載されている「Windows Server 2008 R2 エディションの違い: Windows Server 2008 R2」がよくまとまっているので参考にするとよいだろう。

正直なところ、筆者の環境ではFoundationが魅力的だ。同時アクセス数が15以下だし、なにせコストが安い。ただしこれはOEM提供のみで、パッケージ販売はされていない。残念だが今回は見送りだ。

ここでは次の候補となるStandardを選ぶ。5CALで足りるかどうかは使ってみてわからないが、必要なら追加でライセンスを購入するとしよう。