音楽やソフトウェアなどの権利者団体で構成される不正商品対策協議会(ACA)は15日、P2Pのファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策に関する説明会を開催し、今後の取り組みについて説明した。ACAでは、権利者団体や警察、ISPらと協力し、著作権侵害行為について強い態度で臨んでいく方針だ。ACAは、日本レコード協会、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)、日本音楽著作権協会(JASRAC)などの権利者団体が設立した団体。

一斉取り締まりで「Share」ノード数が1割減少

今回の説明会は、11月30日に全国10都道府県警察が行った、ファイル共有ソフト「Share」による違法アップロードを行った10人を逮捕(その後、1人を逮捕)した一斉取り締まりを受けてのもの。

ファイル共有ソフトを使った著作権侵害事例では、2001年11月から今年9月までで警察の摘発は26件あり、今回は一斉に11件の摘発が行われた。これまでACAは、P2Pソフト対策のワーキンググループを設置、さらにISPの業界団体であるテレコムサービス協会などと「ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会(CCIF)」を設立して協議してきた。それに加え、警察庁の総合セキュリティ対策会議では2008年にファイル共有ソフトを使った著作権侵害に関する提言を行ってきている。

ACAの取り組み

こうした取り組みの中で、ACAは「効果的な刑事摘発」を求めて警察と連携を強化。その結果、「ドラゴンクエストIX 星の守り人」などのゲーム、大塚愛やコブクロなどの楽曲データ、映画、アニメなどのコンテンツを無断でアップロードし、Shareユーザーにダウンロードさせていた11人を一斉に摘発することとなった。

この一斉取り締まりのあと、Shareのノード数は1割程度、約2万ノードが減少し、15日現在でもその状況が維持されているという。「一斉取り締まりのインパクトがいかに大きかったかと認識している」(ACAの後藤健郎事務局長)。

ACAでは、「悪質な著作権侵害行為は厳しく対処していく」(ACCS辻本憲三理事長)考えで、ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策プロジェクトとして、法制度の改善、効果的な刑事摘発の要請、民事的対応の検討、技術的対策の推進、注意喚起活動の推進という5つの方策を検討していく。

今後の取り組み

これに関してJASRACの菅原瑞夫常務理事は、フランスが推進している、3回目の警告でインターネット接続を遮断するいわゆる「スリーストライク法」を例に挙げる。ACAで具体的な話し合いまで進んでいるわけではないようだが、菅原常務理事は個人的な考えとしつつ、日本でも導入の是非について議論の必要性を訴える。

違法提供者は英雄ではなく犯罪者、啓蒙活動を強化

来年1月からは、改正著作権法第30条の施行により、これまでの違法アップロードだけでなくダウンロードも違法化される。従来は私的使用目的のダウンロードは罪に問われなかったが、今後は違法アップロードされたと知りつつダウンロードした場合、私的使用でも違法になる。

また、ISPも参加するCCIFでは、ファイル共有ソフトによる著作権侵害行為をするユーザーに対して警告を行っていく方針。

この第30条や警告については啓蒙活動も強化。特に若年層に対して著作権に関する意識の向上を目指す。今後も法改正や警告による影響を見ながら、第30条には盛り込まれなかった罰則規定の追加といった法改正を求めることも視野に入れているほか、プロバイダ責任制限法に基づく発信者開示を求め、ユーザーへの損害賠償請求も検討していく。

菅原常務理事は、「日本は世界で有数の通信環境はあるが、ほとんど(の帯域)がP2P利用者に消費されてしまっている。一般のインターネットユーザーにとっても迷惑」と指摘。さまざまな対策を検討しつつ、ISPとともに、継続的に違法行為対策に取り組んでいく意向だ。

「違法アップロードで(コンテンツを)提供することがあたかも英雄と言われることもあるが、英雄ではなく犯罪者。精神的にも経済的にも権利者に被害を与えていることを理解してもらいたい」(菅原常務理事)。