グーグルに訊く『Google Insights for Search』の使い方

1限目 - データを正しく読むための注意点
2限目 - 検索条件と結果の読み方
3限目 - 事例で学ぶデータのマーケティング活用法

Googleが提供している検索ボリューム動向調査ツール『Google Insights for Search』(以下、Google Insights)」は、単にある検索ワードの検索量を調べるだけでなく、プロモーションの効果測定や注目度の裏付けデータの取得など、様々な目的で活用することが可能だ。その基礎から実践までを誌上レクチャーでお届けしよう。講師をしていただいたのは、Googleのプロダクト スペシャリスト 水谷嘉仁氏だ。

Google Insights for Searchの正しい使い方、ご存じですか?

Google Insightsって何ですか?


――そもそもGoogle Insightsはどんなツールなんですか?

例えば、テレビや雑誌で見かける"話題の商品やブームになっているらしいもの"について、どの程度の人気があるのか、どの地域で注目されているのか調べたい場合に、どんな方法を使いますか? 単純にGoogle検索の検索結果を見たり、ブログやソーシャルメディアの書き込みを見たり、あるいはお金を使って全国でサンプリング調査を行うかもしれません。

Google Insightsはこうした調査と同じような内容を、検索動向を分析することにより、ある程度知ることができるサービスです。プロのマーケターでも一般のブロガーでも、世の中の人がいつ何を探しているのかを分析することができます。

――検索動向の調査なら「Google トレンド」がありますよね?

数年前から提供している「Google トレンド」に似ていますが、Google Insightsはそれをさらに機能を拡張し、細かいサーチが可能です。だからアドワーズの広告主やマーケター等がより専門的に分析を行うためのツールとして役立てられる、というのがこの二つの違いです。ただし、両者は同じ検索ボリュームを利用しています。

【用語について】

一般的に検索で使われる語はクエリ・キーワードなどと言われますが、ここではそれを下記のように定義します。

クエリ:ユーザーが検索を行うときに検索窓に入力する言葉
キーワード:広告主が検索されるクエリに対して広告を表示するためにアドワーズで設定する言葉

Google Insightsで何を調べるの?


――Google Insightsではどんなことが分かるんですか?

例えば、特定の日にある言葉の検索にどのような傾向が見られるかという、周期的な検索動向が把握できます。また、最近流行りだしている言葉を発見したり、日本国内の都道府県別でどのような傾向があるのかなど、パネラーによる調査のようなことができます。

これはオンラインに限りません。現在は、雑誌や街中の広告等オフラインで接触したものも検索されるようになっています。クロスメディアでアピールしたモノに対して市場がどんな反応をしたのかも、検索動向から推察することができます。

――それはどのように役に立つのですか?

広告主の立場なら、関連する用語として出てきたものから新たなキーワードを作ったり、年間・月間などで検索量の周期性を見つけ、キャンペーンを打つ適切な時期を見極めることに役立てられます。

例えば、「車」に関連していると考えられるクエリに"燃費"とか"チャイルドシート"などがあったら、これらは車を探すユーザーにとって「関心が高い事柄」だと考えられ、ひいては「需要」につながる要素だと考えられます。市場の関心を捉えることで、最適なマーケティングメッセージを作るときの裏付けデータとなります。

Google Insightsはあくまで"ツール"なので、使う側の"仮説"が大事です。「こうだろう」と考えたことに対して、それを裏付けるためのデータを取ることに活用してほしいですね。

データを正しく読むために


――Google Insightsを使う際の注意点はありますか?

実践に入る前に、正しく理解しておかなくてはならない3つのポイントがあります。

1.グラフ等の表示は「検索数(実数)」ではない
Google Insightsのグラフに表示される数値やパーセンテージは、検索動向を実数で捉えたものではなく、指定された条件からサンプリングしてきた結果に基づく推測値です。この点では正に一般的なサンプリング調査と同じです。

2.これらの数値は「正規化」「数値化」処理が行われた相対値である
ある言葉が検索された比率を指定された条件下で出し、それを期間・地域等の比較軸で並べたときに、最も比率の高い値を100として、その他の値を相対的に表示する――というのが正規化・数値化処理です。

正規化・数値化を東京都と香川県で「うどん」の検索量を比較した場合。総検索量は圧倒的な人口の東京(約1283万人)が香川(約100万人)より多いと考えられるが、正規化・数値化することで検索された比率を同じ土俵で比べることができる(※人口は総務省統計局 平成20年10月1日現在推計人口による)

検索回数全体の絶対値は毎年成長していますが、ここではその成長率の影響を取り去って見る、ということをしています。あるクエリの検索回数が横ばいでも、全体のボリュームが増加すれば相対的に割合が低くなりますよね。だから「グラフの下降線イコール検索回数の減少」ではなく、「全体の検索ボリュームの中で検索される割合が低下している」ということを示しています。

サンプル比較例

ちょっと難しいですが、グラフを読むときはこれを念頭に置かないと読み間違える可能性がありますので要注意です。

3.指定するクエリの同義語・単数複数形は含まれない
ひらがな・カタカナ・漢字表記も同様です。言い換えられる語があるなら、条件を追加して調べることでより正しい結果を選べます(条件の追加については次回詳しく)。

Google Insightsのデータから世相を想像してみるのもアリ(イラスト:よっしー)

――2限目では実際にGoogle Insightsの画面を見ながら、操作やデータの読みかたについて教えていただきます。

講師 : 水谷嘉仁 Google プロダクト スペシャリスト

1998年に早稲田大学を卒業後、NI系企業のネットワークエンジニア、SCM系ソフトウェア企業のアカウントマネージャー、セキュリティ系企業のプロダクトマーケティングマネージャー、システム運用系企業の社長室長を経て、08年5月よりGoogleに入社し現在に至る。