下級生、同級生、先輩。ツンデレ、お嬢様、お姉様。

プレイヤー扮する主人公は高校二年という青春まっただ中の設定。上級生も下級生もいる高二。この微妙な年齢設定が面白い。頼れる女先輩がいて、頼ってくる女後輩がいて、さらに同世代の身近な同級生もいる。主人公は、高校生のくせに一人暮らしをしているラブコメにありがちな設定で、しかも、この街に越してきたばかりの転校生と来る。クリームソーダにサクランボが入るくらいの定番な組み合わせだ。

プレイヤーはゲームを始めるにあたって「名前」「誕生日」「血液型」「呼び名」を入力することになる。少々面倒だが「名前」は音読みベースの単漢字入力による漢字での入力が可能。「呼び名」については、実質的に、ゲーム中で三人のヒロイン達がプレイヤーの名前を音声で呼ぶ際の登録に相当する。オーソドックスな名前は結構登録されているようだが、「にしかわ」「ぜんじ」は登録されていなかった。読み仮名一文字を伸ばした「にーさん」「ぜーさん」的な一文字あだ名的な読み方は登録されている。フルネームで呼んでもらえない寂しさで、己の生まれの不幸を呪う人が続出しそうである。

プレイヤーは初登校でヒロイン達と遭遇するのだが、パンをくわえた美少女との衝突イベントではなく、ここには一工夫があり、いかにもありそうな学生生活・周辺イベントが描かれていく。

高嶺愛花。優等生な同級生

姉ヶ崎寧々。一年先輩のお姉様系

小早川凛子。1年下級生のツンデレ系

プレイヤーは、欠員が出たという理由から図書委員を教員から押しつけられ、成り行きで本の虫のツンデレ下級生「小早川凛子」と出会う。いうまでもなく、ツンデレ属性の方々向けのヒロインだ。また、本作での図書委員という設定は文化系クラブのニュアンスも色濃く顕れており、そのあたりの経験を持つ人への配慮という気もする。

現実世界において、図書委員と運動部を掛け持ちする人は少数派だと思うのだが、運動部に所属していた経験を持つ人への配慮なのだろう、プレイヤーは高二で転校してきていながら、主従関係の強い運動部、テニス部にも入部する。そしてそこでは同学年の女子部トップ選手「高嶺愛花」と出会う。学生時代は学年という仕切りがある関係で、主に同学年が恋愛対象となりやすいが、これはそうした好みへの配慮だろう。

そして高校生ながら一人暮らしをするほど家庭が裕福なはずのプレイヤーだが、「バイトもしなくちゃな」みたいな、とってつけたようなモノローグを放った後にアルバイトをすることを決心する。とんとん拍子で地元のファミレスで採用となり、そこで新人教育係の年上のお姉様「姉ヶ崎寧々」と出会う。もちろん舞台を学校周辺で結びつけるために同じ高校の三年、先輩という設定だ。彼女の存在はお姉様好きな人への配慮であるとともに、「ガキはイヤだ」という高年プレイヤー向けヒロインとしての側面もあると思われる。

初プレイ時、多くの人は「オレならば○○がいい」「オレは断然△△派だね」となることだろうが、逆にその時点で「誰も好みじゃない」という人も少なくはないはず。ただ、面白いモノで、ゲームを進めてキャラクターと接していくうちに、次第に「こいつがいいかな」となっていくのだ。

好みの娘がいないだって? そんなこといってられるのは時間の問題だ

誰にも経験があるはずだ。学年変わりのクラス替えでブ●ばかりのクラスになった春のガッカリ感。しかし、秋の文化祭や体育祭が終わったあたりには、その集団の中から一番自分好みの異性を見つけていたはず。

あのプロセスは『ラブプラス』でも起こりうるのである。

なお、『ラブプラス』のヒロイン達は基本的に●スではないので、ある意味「誰も好みじゃない」は、奢ってもらった寿司に「好みのネタがない」と言い放つくらい贅沢者の意見だ。

ちなみに、筆者。こういう「複数のナオン集合から自分の好みのヤツを選ぶ」という体験自体が中学時代でストップしている。思えば筆者、高校は男子校、大学は工学部に進み、サラリーマン時代は電機メーカーというナオンの少ない道をなぜか選び続け、今の仕事になってからは完全に一匹狼状態。「ナオン集合から自分に適した最良のサンプルを探す」行為自体に、思いのほか懐かしさを覚え、危うく沖田艦長ばりに涙するところだった……。

もうちょっと、詳しく、ヒロイン紹介をしておこう。

「小早川凛子」は一学年下の高一。プレイヤーと同じ図書委員。人付き合いが苦手で他人からの親切を受け入れられず、いつも虚勢を張ってしまう典型的なツンデレである。ちょっと不良気質があって無断早退も多め。プレイヤーにはちょっと惹かれているがそれを認められない"天の邪鬼"描写が凄い。「小早川、一緒に帰ろう?」「ヤダ。でも勝手に付いてくるならば止めないけど」の名台詞は歴史に残る予感だ。

「高嶺愛花」は同学年の高二。プレイヤーと同じテニス部の女子部員。テニスの腕前はトップ、成績も優秀。自宅では観るテレビ番組の種類に規制があって、さらに下校時の寄り道禁止の家訓もあるほどの箱入り娘。いわゆる典型的なお姫様的ヒロインで、自立しているプレイヤーに惹かれ始める。ただ、「男女交際は不良のするもの」という認識が彼女を奥手にしている。箍の外れた際に発した「オッス、愛花だよ」は愛花の数少ない名台詞である。

「姉ヶ崎寧々」は高三。プレイヤーと同じバイト先の先輩でもあり、同じ高校の一学年上の先輩でもある。見栄えが大人っぽいために周りから頼られがちなお姉様キャラを自覚しつつも疲れている。頼りなさそうに見えて意外に頼り甲斐のあるプレイヤーの気質に気がつき、好印象を抱いている。後半に飛び出した「よし、ネネちゃん可愛い! これならカレもメロメロだよね!」の独り言は、DSの前のプレイヤーを気まずくする名台詞として語りぐさになっている……。

振りまわされたいMNOに人気の小早川凛子。胸元にはいつもポータブルオーディオ

ゲーム中の3Dグラフィックスの高嶺愛花。リボンがチャームポイント

自分の美しいアングルを知り尽くした姉ヶ崎寧々。女としてのしたたかさが伺える