自分をソ連の革命家レオン・トロツキーの生まれ変わりと信じ、自らが通う高校に改革をもたらそうと奮闘する少年を描いたコメディ映画『少年トロツキー』(2009/カナダ)の記者会見が23日、行われ、監督・脚本のジェイコブ・ティアニーと、その父でプロデュースを担当したケヴィン・ティアニーが登壇した。本作は現在開催中の第22回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されている。

監督・脚本のジェイコブ・ティアニー(左)とプロデューサーのケヴィン・ティアニー(右)

主人公のレオン・ブロンスタイン(ジェイ・バルチェル)は自らを20世紀初頭のソ連の因習打破主義者で赤軍のヒーロー、レオン・トロツキーの生まれ変わりと称し、モントリオール・ウェスト・ハイスクールで変わり者扱いされていた。ある日、レオンが縫製工場でハンストを始めた罰として、父親は彼をパブリック・スクールへと送る。学生自治会に新たな意義を唱えたレオンは、定められた運命を精一杯まっとうし、世界を変えることを誓う。

レオン役のジェイ・バルチェルは『ミリオンダラー・ベイビー』や『トロピック・サンダー/史上最低の作戦」などにも出演した期待の若手俳優

"トロツキーオタク"だというジェイコブは、「いや、トロツキーよりもホッケーファンなんだけどね(笑)」と前置きした上で「10代のいつぐらいから好きになったのかは覚えてないんだけど、彼の理念というよりは医学生だったのに、最後はメキシコで暗殺される、そんなドラマティックな生涯にすごく興味をもったんだ」とトロツキーに惹かれるようになったきっかけを語った。

ジェイコブの言葉を受けて父のケヴィンは「プロデューサーになる前は教師をやっていたんだ。ちょっと左寄りの思想を持った、ね。'74年にはアルジェリアの政治背景に興味を持って赴任したし、'82年にはジェイコブを連れて中国に行った。ジェイコブがトロツキーに興味を持ったのは、こんな左寄りの環境で育ったからかもしれないね」。

6歳から俳優としても活躍している

実の親子だけあり息の合った掛け合いを見せた

『少年トロツキー』は思想云々の堅苦しい作品ではない。「作り手としては社会主義を推しているわけじゃ全然なくて、純粋に楽しんでもらいたいんだよね。そして、レオンは自分の信じていることを周囲に信じてもらいたいというのではなくて、"参加"して何かを動かすことによって得られる進歩があるってことを伝えたかったんだ」とジェイコブが言うとおり、恋愛あり、家族のゴタゴタありの痛快青春コメディに仕上がっている。

「男子高校生が主人公の場合、すべてを成し遂げて最後に愛する人と結ばれますが、レオンは開始早々40分でベッドインしてしまいます。これは監督の実体験なんでしょうか」という質問には、「だったらいいんだけどね(笑)」と大笑い。「若者なんていかにHをするかしか考えていないけど、この作品を『アメリカン・パイ』みたいにはしたくなかったんだ。レオンだって男だから女の子を好きにもなる。でも彼は世の中を変えていける、って信念を持っているというのが第一だからね」。

コンペティションの最優秀賞「東京サクラグランプリ」の行方は、25日に行われるクロージング・セレモニーで発表される。

(C)2009 TROTSKY PRODUCTIONS INC.