OptiXの可能性~ラスタライズ法とのハイブリッドレンダリングの可能性も?
レイトレーシング法がいくら強健だと言っても、やはりリアルタイム性を重視した場合には現行主流のラスタライズ法が適している。
電気自動車がいくら素晴らしいと言ってもガソリンエンジンから離れられず、現在ハイブリッドカーが全盛であるように、今すぐラスタライズ法から逃れられないのであれば、局所的にレイトレーシングを使う「ハイブリッド・レンダリング」手法はどうか……という提案をParker氏は行っている。
例えば、複雑な反射についてはレイトレーシングを用い、ポストプロセスではラスタライズ法のパイプラインを用いるというスタイルだ(下図)。これは全体のレンダリング負荷に対して、レイトレーシングが占める割合が大きいハイブリッド技法だと言える。
一方で、最近流行の画面座標系のポストプロセスに局所的なレイトレーシングを持ち込むようなハイブリッド・レンダリングであれば、ラスタライズ法をメインとすることができ、パフォーマンス的にも安心が約束される。具体的には、レンダリング後のフレームとZバッファの奥行き情報を元ネタに、各ピクセル毎に数個の局所レイを飛ばして局所的なレイトレーシングを行うタイプのポストプロセスだ。ソフトシャドウなどはこの手法でかなり現実的な結果が得られそうだ。
主流のラスタライズ法の進化、すなわち現行のGPUのパイプラインの進化がDirectX 11以降、急に止むことはないだろうが、プロセッサの演算能力が劇的に進化していく中で、より優れた別のレンダリング手法の模索が進んでいくことは間違いない。
そして、レイトレーシング法は、その歴史の長さからいっても、これまでもラスタライズ法の有望な対抗馬となってきた。
今回のNVIDIAのOptiXは新しいプログラマブルシェーダの概念を導入して、このレイトレーシング法をシステマティックにまとめた点が興味深い。しかも、CUDA上に実装したことで、NVIDIAのGPUにおいて将来的にスケーラブルなパフォーマンスアップが期待できるという点で、NVIDIAのもう一つの高品位レンダラー「Gelato」(事実上のディスコン製品)よりも優れており、NVIDIAの本気ぶりがうかがえる。
また、今回のGTCで予告発表されたNVIDIAの新世代GPUの「FERMI」コアのキャッシュメモリシステムはOptiXのアクセラレーションに効果的に効くようにも設計されていると聞き及んでおり、そのパフォーマンスには期待が掛かる。
(トライゼット西川善司)