ガートナー・ジャパンは10月9日、「クラウド・コンピューティングに関するガートナーの見解」という題名のレポートを公開した。そこでは、同社のクラウド・コンピューティングに対する定義や、現状について触れられている。

同レポートでは、クラウド・コンピューティングを「スケーラブルかつ弾力性のあるITによる能力を、インターネット技術を利用し、サービスとして企業外もしくは企業内の顧客に提供するコンピューティング・モデル」と定義。そのうえで、「必要な時に必要なサービス、リソース、情報もしくは環境を、低コストかつ低エネルギーで提供する仕組み、およびそこから提供されるサービス、リソース、情報もしくは環境」と補足している。

また、現在の状況については、「この1年でクラウド・コンピューティングへの関心と期待は急速に高まっており、ガートナーのハイプ・サイクルでは、現在クラウド・コンピューティングは『過度な期待』のピーク期に位置付けられている」とし、「これは、市場が過熱気味であり、混乱も多く見られる状況であることを示している」と説明。今後、継続的にトレンドを注視し、導入に際しては十分に検討を行うよう注意を促している。

同レポートの全文は以下のとおり。

クラウド・コンピューティングに関する見解

この1年でクラウド・コンピューティングへの関心と期待は急速に高まっており、ガートナーのハイプ・サイクルでは、現在クラウド・コンピューティングは「過度な期待」のピーク期に位置付けられています。これは、市場が過熱気味であり、混乱も多く見られる状況であることを示しています。

ガートナーでは、クラウド・コンピューティングを「スケーラブルかつ弾力性のあるITによる能力を、インターネット技術を利用し、サービスとして企業外もしくは企業内の顧客に提供するコンピューティング・モデル」と定義しており、「必要な時に必要なサービス、リソース、情報もしくは環境を、低コストかつ低エネルギーで提供する仕組み、およびそこから提供されるサービス、リソース、情報もしくは環境」として説明しています。> 現在語られているクラウドのうち、消費者向けのクラウドは継続的な進化の過程にありながらも、既に利用可能な状況となっています。一方、企業ビジネス向けのクラウドについては、ほとんどが発展途上であり、利用に当たっては慎重な調査と判断が求められる状況にあります。企業ビジネス向けのクラウドは、大きく分けて、外部クラウド・サービス・プロバイダーが提供するサービスの利用を前提とする企業外クラウドと、企業内にクラウド・サービス・プラットフォームやインフラストラクチャを構築し、そこから企業内や企業グループ内にクラウド・サービスを提供する企業内クラウドに分類できます。企業外クラウドと企業内クラウドともに、現在、考え方、テクノロジ、実装、提供されるサービスなど、すべてが発展途上であるため、どちらが優れているといった比較が容易にできる状況ではありません。

クラウド・コンピューティングに関して、ガートナーでは次の見解を示しています。

2009年に入り、企業内クラウドに特に注目が集まっています。一方、企業外クラウドが多くの企業のニーズを満たすようになるには長い年月を要します。したがって、2012年末まで、IT部門は企業外クラウド・サービスの購入よりも、企業内クラウドへの投資を優先する可能性が高いでしょう。企業内クラウドに適切に投資していれば、今後、企業外クラウド・サービスが成熟した際に、必要に応じて企業外クラウドを段階的に利用することが容易になります。

クラウド・コンピューティングは、これから10年をかけて、ITの提供、利用など、ITに関するすべてを変えていく可能性を持つ重要な概念でありテクノロジです。この観点で、先行ユーザーは自らスタディと試行を開始しています。しかし、 「クラウドとは何か」が理解できていない状況も多く見られます。ベンダーやインテグレーターは、クラウドを新たな商材ととらえ、ソリューションや製品の提供に躍起になっていますが、まだまだ混乱や未消化の部分も多く、本質的な変化をとらえ切れていない側面が見受けられます。ベンダーやインテグレーターには、これからのクラウド時代におけるビジネスとテクノロジの在り方を、経営上の重要課題として、十分に検討することが求められます。

クラウドは、これからさらに進化していきます。すべての関係者は、企業外クラウド、企業内クラウドおよび消費者向けクラウドの発展について、トレンドを継続的に注視しておくことを推奨します。

なお、ガートナー・ジャパンでは、11月11日~13日に同社主催のカンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo 2009」を開催する予定で、そこでもさまざまな角度からクラウド・コンピューティングに関する見解を発表するという。