近年、米Appleが新製品の発表を行う際に、製品の特徴や価格とともに必ずアピールしているのが環境問題に対する取り組みだ。有害物質利用の有無やエネルギー標準への準拠、リサイクルへの対応など、その達成状況を逐次報告している。そんな同社の取り組みに対する理解をさらに深めようと、Appleは先週末に環境対策の詳細をまとめた資料をWebサイトに掲出した。

Apple and the Environment」という同社の専用ページにまとめられた資料では、環境対策でどれだけCO2のような温室効果ガスの排出を削減できたのか、その内訳や方法についての詳細が紹介されている。製品の一連のライフサイクルにおいて、まず明らかに改善が進んでいるのが生産面だ。iMacの遍歴で確認するとわかりやすい。1998年にデビューしたボンダイブルーのiMacから比較して、2009年の最新のiMacでは半分以下の重量となり、その分使用する素材を半分に削減できていることがわかる。また有害物質対策も進んでおり、初代MacBook Proでは鉛排除だけだったものが、現行製品では臭素系難燃剤(BFR)やポリビニルクロリド(PVC)といった物質の排除にも成功している。こうした要素を組み合わせ、製品の安全性ならびに製造時のCO2排出38%削減を実現したという。

それ以外にも、多くの環境対策における試みが紹介されている。たとえば、MacBookのパッケージングを工夫して初代モデルから現行モデルまでに3分の2程度にすることで、輸送コストの削減ならびにその際に消費する飛行機の燃料を減らし、CO2排出抑制を実現している。また新技術の導入や工夫で、Mac製品を使う際に消費する電力削減を実現し、代を追うごとに電力効率が向上している。特に電力消費におけるCO2排出削減は53%減と非常に大きい。またEnergy Star申請を行い、2009年時点ですべてのMac製品がEnergy Star 5.0に準拠したことを報告している。各製品における環境対策の取り組みや内訳は、PDF形式ですべて閲覧できる。対策における試みは製品だけでなく、AppleのオフィスやApple Retail Storeなどにも及び、電力効率の高い照明の使用、そしてモーションセンサーによる照明の自動オン/オフなどの仕組みが導入されている。

そして興味深いのがリサイクルの項目だ。Appleによれば、同社製品の販売されている世界の国々の95%でリサイクルプログラムを実施しているという。その結果、1994年から2008年までの間に8,300万ポンド(約3万7,600トン)以上を粗大ゴミによる投棄から減らすことに成功した。2008年時点では3,300万ポンド(約1万5,000トン)を再生し、リサイクル率が41.9%に達したという。同社では、このリサイクル率を2010年までに50%に引き上げることが目標だ。これを実現するため、同社ではリサイクルへの取り組みとともに、ユーザーにプログラムへの参加方法を紹介している。

こうした取り組みの紹介は、ライバルのHewlett-Packard(HP)やDellが同様の情報を公開し、積極的なアピールを繰り返していることに触発された可能性がある。特にNewsweekが最近発表した企業の環境対策への取り組みをランキング化した「Green Ranking Top500」の中で、HPやDell、そしてIBMなどがトップ5以内の上位にランクインされたのに対し、Appleは133位と大きく引き離されている。こうした評価を払拭するのが1つの目標となるだろう。