フランス最大手の通信会社France Telecomの職員の自殺が相次いでいるというニュースが、現地の労働組合や政府関係者も巻き込み、大きな騒動に発展している。

仏主要メディアの報道によると、9月11日(現地時間)に、同社の32歳の女性職員が、異動を告げられた直後にパリにあるオフィスの6階から飛び降り自殺。その2日前には、パリ東部のオフィスで技術者として働く48歳の男性社員が、異動を決める会議の最中に割腹自殺を図った。

同社の自殺者は、過去1年半の間に23人にのぼる。また、未遂も含めると、その数はさらに増えるという。同社の社員数は10万人とされるが、これは世界保健機構(WHO)が発表しているフランス国民全体の自殺者の割合が、男性10万人に対して26.4人、女性10万人に対して9.2人という水準に劣らぬ数字で、同社における自殺者の数がいかに尋常でないかが伺い知れる。

France Telecomは、日本で言うところのNTTのような旧国営企業。1997年に民営化されて以降は、固定電話中心のこれまでのサービス業態から、携帯電話、インターネットの普及による事業内容の転換により、配置転換やリストラ策など、かなりの過酷な労働環境の変化と負担が職員には強いられてきたことが今回の自殺者急増の背景にある。

こうした状況の中、フランス民主主義労働同盟(CFDT)など労働組合側は「これはFrance Telecomだけでなく、いまや国家的な問題だ」と声明を発表。10日には、労働総同盟(CGT)などが全国ストを実施する展開にまで発展した。また、事態を重く見た政府関係者側は、仏労相のXavier Darcos氏が、France TelecomのチーフエグゼクティブであるDidier Lombard氏を近く会談に召還しているほか、経済・産業・雇用相のChristine Lagarde氏は、同社に対して一刻も早く役員会議でこの問題を議論し、対処することを求めている。

これに対して、フランステレコム側は14日に、管理職クラスの職員3,000人を招集した緊急会議を開催したほか、職員の異動を10月末まで凍結することや、人事部門のスタッフを100人追加して、労働現場のストレスの相談に当たることなどを発表した。