宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月28日、筑波宇宙センター(茨城県つくば市)において、宇宙ステーション補給機「HTV」の運用管制室を報道向けに公開した。9月11日の打上げを前に、本番さながらのシミュレーション訓練が行われており、その模様が公開されたもの。

JAXA筑波宇宙センター

HTVの運用管制室(HTVMCR)

HTVは、国際宇宙ステーション(ISS)に必要な物資(実験試料や食料・日用品など)を運ぶための無人の補給機。日本にとって、過去最大の宇宙機を打上げるために、新型ロケットの「H-IIB」も開発された。HTVもH-IIBも打上げは今回が初めてだが、輸送物資は実際に積み込まれている。

今回公開されたHTV運用管制室(HTVMCR:HTV Mission Control Room)は、HTVの飛行を安全に制御、および監視するための設備である。HTVの運用中は24時間体制となり、管制官は1チーム18人で、1日3交代の任務に当たることになる(全部で4チームあるそうだ)。

3列目の「Flight」がリーダーであるフライトディレクタの席

公開時には山中浩二フライトディレクタが指揮を執っていた

HTVMCRから出された指令は、米テキサス州ヒューストンにあるISS管制局、米ニューメキシコ州ホワイトサンズのTDRS地上局、データ中継衛星「TDRS」を経由して、HTVに届けられる。ISS近傍では、TDRSからISSを経由する場合もある。

HTVはH-IIBロケットによって、高度200km~300kmの楕円軌道に投入される。打上げ時刻は、軌道面がISSと同じになるよう設定されており、高度を徐々に上げながら、ISSに追いつく形となる。打上げごとに異なるが、HTV技術実証機(HTV-1)の場合は、フライト7日目にISSにランデブーする。

HTVの運用概要。ISSにドッキングしたあと、大気圏に再突入して終わる

ISSとの相対位置。赤い枠内が今回のシミュレーション訓練の範囲

今回のシミュレーション訓練は、8月26日9時から29日12時まで、75時間をかけて行っていたもので、ロケット分離から高度調整マヌーバ(HAM0)でISSより3.2km低い軌道に入れるまでを模擬している。実際には6日間かかるが、要点のみを実施するため、それよりも短くなっている。

会見に応じたJAXAの麻生大フライトディレクタは、「これまでの100回の訓練で、良いチームワークを築けた。日本の宇宙開発の集大成であるHTVを成功させられる自信がついた」とコメント。今回のシミュレーション訓練についても、「完璧だった。私が見る限り、何も失敗はなかった」とのこと。

麻生大フライトディレクタ。4人いるフライトディレクタの1人

HTV技術実証機は、H-IIBロケット試験機によって、9月11日午前2時4分頃に打上げられる予定。その後は毎年1機ずつ、2015年までに合計7機の打上げが計画されている。