富士通の半導体子会社である富士通マイクロエレクトロニクス(FML)と台湾ファウンドリのTaiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)は8月27日、従来の40nmプロセス世代のロジックICの製造委託契約を拡張し、28nmプロセスの製造委託契約も取り交わしたことを発表した。最初のサンプル出荷は2010年末を予定している。

富士通マイクロエレクトロニクス 代表取締役社長である岡田晴基氏

FMLの代表取締役社長である岡田晴基氏は、「プロセスの微細化が進む中、開発コストの巨額化が進行しており、単独での開発投資が大変厳しい状況となっている。その解決策として、パートナーシップを組んで、共同で開発する道を選んだ」とTSMCとの協業の意義を語る。

同社の受注状況は、2009年2月に底を打ち、回復基調となっているものの、「2009年度第1四半期は計画を上回り、同第2四半期も上回る見込みだが、最悪期を脱した程度で、今後はなだらかな回復が続くことが考えられ、大幅な成長は見込めない」(同)としており、そうした意味でも、「不況下にある今が抜本的な改革を実行して、利益体質へと生まれ変わるためのタイミングとして判断した」(同)とし、ファブライト化のほか、費用構造改革の促進、商品ポートフォリオの見直しを含めた改革を実行していくという。

FMLの受注状況の推移

ファブライト化については、「FML型Fab-lite」としており、「先端微細プロセス対応の工場を持たないことで、投資の重点を"微細プロセスと製造"から"商品とIP"へとシフトすることができる」(同)とし、45nmプロセスまでの製品については自社の工場を徹底的に使い切ることを目指す一方、40nm以降の微細プロセスについてはTSMCとの協業を図っていくとすることで、「当社ならではのファブライトを作り上げていきたい」(同)とする。

FMLとしての個性を持ったファブライト化を推し進める予定

具体的には28nmハイパフォーマンスプロセスを両社にて共同開発をするほか、高性能化を実現するパッケージング技術の共同開発などを推し進めることで、「カスタマにとっての高い付加価値を提供する枠組みを築き上げる」(同)とする。また、グローバル規模でのM&Aや提携、協業も推し進めるとしており、すでにFreescale SemiconductorからRF技術のライセンスと開発要員を取得したことなどを明らかにした。

グローバルでM&Aや提携、協業を進めていく

一方、費用構造改革では、2009年度、2010年度の2年間で固定費を中心に800億円の削減に向けた取り組みを行っていく計画。主な部分としては、前工程ラインの見直しの実施が挙げられる。これにより、150mm(6インチ)ラインが3ラインから1ラインへ、200mm(8インチ)ラインが4ラインから3ラインへと集約され、2000名の人員の再配置のほか、処理能力も8インチ換算で従来の8万5,000枚/月から7万枚/月へと18%の縮小がなされる予定。

前工程の製造再編を推し進める

また、開発費の最適化検討による40nmプロセスの開発中止や不採算商品からの撤退、開発の凍結、間接部門のスリム化、材料と工程の見直しや海外展開によるローコスト化、人事施策などを行うことで、「中長期の利益を確保できる体質を目指す」(同)ほか、2009年9月からの単月の益転を見込むとしている。

40nmプロセス品の開発中止や不採算商品の見直しに伴い、同社の商品ポートフォリオも再編成も行うという。「商品が広がりすぎて利益が出にくい環境となっており、ASSPを重視した絞込みを行うことで、成長性と競争力の確保を行う」(同)としており、「モバイル/エコロジー」「自動車」「映像機器」「ハイパフォーマンス(産業機器)」の4分野を成長の柱と位置づける。このため、主要20商品のうち、14商品に注力することとなり、400名のエンジニアの再配置が予定されている。

ポートフォリオの見直しを行い、4分野に注力する

各分野への取り組みとしては、"モバイル/エコ"が携帯電話用RF ICの新規市場投入や、LCD用LEDバックライト制御用LSIのアジアへの展開などに加え、富士通研究所が開発したGaNを用いたパワーデバイスの量産技術確立を目指すとしており、2013年には600億円の売上を目指すとする。

"自動車"では、グラフィック・ディスプレイ・コントローラ(GDC)商品の拡充のほか、マイコンのラインナップに高耐圧技術による商品を追加させ、CAN対応マイコンによる新興市場などのボディ制御への採用を狙う。また、ハイブリッドカーや電気自動車向けにモータ制御マイコンを投入するほか、画像/映像処理技術を生かしたドライブアシスト機器向けソリューションなども展開することで、2013年に500億円、2015年には700億円まで売上の拡大を目指すとする。

"映像機器"では、画像ASSP「Milbeaut」とH.264コーデック技術をベースにロードマップの強化とシェア拡大および、フルHD録画再生分野でのトランスコーダとコーデックの製品展開に加え、監視カメラや車載カメラといったソリューションの開発を行うことで、2013年には1000億円の売上達成を見込む。

そして"ハイパフォーマンス"では、同社がこれまで製造していたSPARC関連が微細化を行った場合、TSMCでの製造にシフトすることとなるが、それらで培ったノウハウやIPラインナップとカスタマサポート力などを生かしていくことで、28nmプロセス採用ASICを世界で初めて提供することを目指すとしており、2013年には300億円の売上を目指すとする。

こうした構造改革および協業を進めることで、同社は、2009年度下期の営業利益黒字化ならびに2010年度の営業利益100億円の達成を目指すほか、2011年度では中核のロジックLSI事業の営業利益150億を達成し、その後も営業利益率8%を達成していくことで、「堅実な経営を実現できるようにしていきたい」(同)としている。

2009年度下期に益転を果たし、2010年度は通期での営業黒字化を目指す