東京ビックサイトで21日から23日までの3日間、日本鉄道模型の会主催の「第10回国際鉄道模型コンベンション」が開催された。鉄道模型を趣味とする64のグループおよび個人が自慢の作品を出展したほか、模型メーカーなどの企業による関連商品の展示・販売、工作教室などが行われた。

模型店や玩具店で鉄道模型の売り場に足を運ぶと、精巧にできた細長い車両の模型がずらりと並んでいる光景が目に入ってくる。一般の人が「鉄道模型」という言葉を耳にすると、このような模型を眺めたり走らせたりして楽しむ趣味、といった想像をするかもしれない。

それは間違いではないのだが、コンベンションの会場を見て回ると、店の模型売り場では見られなかった多彩な世界が広がっているのがわかる。鉄道車両だけでなくそれが走る街並みの作り込みに力を入れる人、実際の運行ダイヤに沿った走行を試みる人、懐かしい昭和の情景の再現を目指す人、実際に石炭で走る機関車に人を乗せて「運行」する人……小さなものから大きなものまで、「鉄道模型」というひとつの言葉の範囲に収まらないほど、楽しみ方はバラエティに富んでいる。

関東学院六浦中学校・高等学校SCSによる江ノ島電鉄をテーマにしたレイアウト。沿線住宅の軒先をかすめるように走る江ノ電のイメージが細かく再現されている

部分ごとに制作したモジュールをつなぎあわせて大きなレイアウトにする形態の「モジュールレイアウト」。これはジャパン・モジュール・レイアウト・クラブ(JMLC)による展示。仲間で持ち寄ってひとつの作品を作るのは楽しそうだ

早稲田大学理工学部職員鉄道模型同好会は、1回あたり70分かけて27本の編成を走らせるデモンストレーションを実施。ポイントの操作や機関車の連結・解放などはすべて遠隔で行われている

屋上展示場では石炭を燃料として走行する小型蒸気機関車の展示・試乗も行われた。上の画像は市川蒸気鉄道クラブの出展風景

自由で多様な楽しみ方が可能な鉄道模型

日本鉄道模型の会の古川享会長。元マイクロソフト日本法人の会長、最高技術責任者などを務めていたことでも知られる。「いろいろな楽しみ方をお互いに尊重し共存するという意味では、鉄道模型ファンはインターネットが普及する前からインターネット的なコミュニケーションをしていたとも言えるのでは」と話す

日本鉄道模型の会の古川享会長は、「鉄道模型の世界には、何が正しくて何が間違いということがないんです。この場で各自が自分の楽しみ方を主張しながら、みんな相互にそれを尊重している。始めるのにお金のかかる趣味と違って、木と紙だけでも作れるから年齢層は幅広いし、より高いものを使ったほうが勝ちということもなく、クラフトマンシップ、感性や技術のある人がスターになれる」と話す。多様な楽しみ方を許容し、このコンベンションのように一堂に会することができるのが、鉄道模型という趣味の大きな特徴だという。

10周年を迎えたコンベンションだが、模型メーカーなどの企業とアマチュアのファンが肩を並べて展示を行っているのも、このイベントならではだ。古川会長は「企業が主導するイベントでは、情報の送り手と受け手という役割がはっきりしていて、お客さんは企業からのメッセージを受け取るだけでしたが、このイベントではどちらも主役。10年間コンベンションを続けてきた中で『自分たちも情報発信をしていいんだ』ということに気付く人たちが増えてきたように思います」と指摘する。それも、単に自分の作品を見せびらかすということではなく、年に1度会う同好の士との情報交換や、来場客への説明といったコミュニケーション自体を楽しむ参加者が増えており、「場」としての活気が高まっているのが良い傾向だと見ている。

アマチュアと企業が同じフロアにブースを並べているのがこのイベントの大きな特色だ

コンベンションの特設ページでは、会場で取材した各社の新製品発表風景を動画で配信。撮影したのは鉄道模型の情報サイト「N-Gauge Information」さんで、iPhone 3GSを三脚に取り付けたものをビデオカメラとして利用した