IE6は顧客の選択なのか?

"憎まれっ子世にはばかる"ということわざがあるが、これはIT業界にも当てはまるたとえのようだ。米Betanewsの8月11日(現地時間)付けの記事「Microsoft may not kill IE6 until at least 2014」によれば、Microsoftは悪名高いIE6のサポートを2014年まで切ることができない可能性があるという。

IE6における特異なレンダリング構造は、長年にわたってWeb開発者を悩ませてきた。IE6 No More.comのような運動が典型だろう。IE6のサポートを止めるため、開発者らはサイト上に訪問者が使っているブラウザが古いものであることを掲示し、バージョンアップを促すチェックコードを埋め込むなど、YouTubeをはじめとする各サイトでそうした試みが進んでいる。

だがIE6はしぶとい。Net Applicationsの最新のWebブラウザシェア調査で最も高い数値を叩きだしたのはIE6の27.21%であり、IE6を置き換えるかと思われたIE7のシェアをむしろ減少し、そのままIE8へと横滑りしているだけという状態だ。IE6は専門家の多い開発者向けのサイトでさえ依然として高いシェアを誇っているといわれており、それだけ固定層が多いことがうかがえる。ではWeb開発者らは、いったいいつまでIE6用の特別サポートを続けなければいけないのだろうか。

この件について、米MicrosoftのIE8製品マネージャのDean Hachamovitch氏はIE Team Blogの中で同社の製品サポートへのスタンスを説明している。同氏によれば、個々の開発者やユーザーが新バージョンへの移行を望んでいることは理解しており、そうしたことで生じるユーザーの(パフォーマンスやセキュリティ、互換性上の)メリットやMicrosoftのサポート負担減という話もあるものの、IE6のブラウザベンダとしてこうした製品のサポートはなかなか切り捨てることはできないという事情があるという。実際、DiggのIE6に関するアンケートで17%ものユーザーがIE6からのアップグレードを望んでいないという結果が出ており、こうしたユーザーがいる限りそう簡単にサポートが切れないというのだ。また最も大きい理由として、IE6を利用する企業や団体ユーザーが新環境サポートのためのコスト負担増や新たなトラブルの火種になる危険性がある点だ。自由にブラウザを選択できる個人ユーザーとは異なり、こうした企業ではバージョン管理の責任はその企業自体が持っており、一概に移行運動が意味を成すとは限らない。

結局のところ、Microsoftがそのブラウザのサポートを止められるかどうかは、そのブラウザの乗るOSのサポートが続くかどうかにすべてかかっている。Hachamovitch氏によれば、そうした企業はOSのサポートが切れるその日まで現状のプラットフォームを使い続ける可能性があるからだという。前述の移行を望まない個人ユーザーも含め、こうしたユーザーの選択をできる限り尊重するのがMicrosoftのスタンスというのだ。Betanewsでは、このOSとはWindows XPであり、そのサポートが切れるのは延長サポート期間の続く2014年だと指摘する。つまり、もう5年間はMicrosoftがIE6のサポートを単純に打ち切ることはできず、少なくともその期間はIE6のシェアが一定数は存在することになるかもしれない。