アートを通してエコを考える展覧会『エコ&アート 近くから遠くへ~アートを通して地球環境を考える』が開催中

関東平野の中央に位置する館林は、夏がもっとも暑い場所だ。西に位置する赤城山脈から吹き下ろす乾いた風によるフェーン現象と、東京からのヒートアイランドの熱風の影響により40℃を超えることもある。同市では「日本一暑いまち館林市暑さ対策本部」を設置し、熱中症対策をはじめ、温室効果ガスの削減、涼化対策など地球温暖化、ヒートアイランド現象への対応を総合的に進めている。

そんな、日本で最も暑い街と言われる群馬県館林市から地球環境やエコロジーについて考えるアート展『エコ&アート 近くから遠くへ~アートを通して地球環境を考える』が群馬県立館林美術館において開催。参加アーティストは国内外のアーティスト15組、写真やインスタレーションなど50点が展示されている。会期は9月23日まで。

群馬県立館林美術館へのアクセス

東武鉄道伊勢崎線で館林駅にて下車。浅草から特急りょうもう号で約60分。JR宇都宮線を利用する場合は、JR久喜駅で東武伊勢崎線に乗り換え、館林まで約30分。館林駅前から多々良巡回線バスに乗車して、バス停「県立館林美術館前」下車すぐ。東武線利用の場合、多々良巡回線バスも乗り降り自由の「ふらっと両毛 東武フリーパス」が便利だ。

館林美術館は、暑い暑~い館林の夏の、清涼剤のような緑に囲まれた美しい美術館だ

新興住宅地で伐採されることになった木を自作の舟に載せ、六甲アイランドまで運んだプロジェクト「舟島」が印象深い國府理氏は新作『typical biosphere』を出展。Biosphere2(バイオスフィア)計画に想いを馳せた作品で、展示室内に組まれた巨大な鳥かごのような構造物の中に、土を盛って大きな樹木が植えられ、光が照らされている。

Biosphere2とは1990年代に米国で行なわれた人工生態系の実験(巨大な密閉空間に8人の科学者が滞在して行なわれた)とその施設。実際には酸素や二酸化炭素、食料不足が起こり、実験は失敗に終わった。このことから、複雑な生態系を模倣するのは大変困難であることがわかった。これはBiosphere2計画が未熟だったということだけではなく、本来の生態系を保つことの難しさを示している。國府氏は「科学の限界ということにとどまらず、現在地球上に起こっているさまざまな問題そのものに思えてならない」とコメントしている。

國府理『typical biosphere』(2009年)

歩くことをもとに制作をおこなう写真家・篠原誠司氏は、群馬在住の民俗研究家・川島健二氏とともに、日本の環境破壊問題の原点とも言える足尾鉱毒の緩和のために100年前に水没し、いまは渡良瀬遊水池という大湿原へと変貌した谷中村を歩き、写真とテキストのコラボレーション作品『谷中の葦・考える葦』を出展している。

篠原誠司『谷中の葦・考える葦』(2009年)

近年では紙(ダンボール)を使った「明後日朝顔」を手がけるなど、テーマに自然が入り込んでいる日比野克彦氏が手がけるのは「草原、平原=PLAINをイメージ」した『DNA PLAIN』。500㎡の展示室の床に敷き詰められた100枚ものダンボール紙に、来場者が色紙のチップを貼っていくことで完成する。会期前に作品が仕上がっているのは当たり前だが「DNA PLAIN」は会期が始まっても未完成のままなのは「(これまでの美術に対する)僕のささやかな抵抗」と日比野氏は語っている

来場者の参加によって完成する日比野克彦の『DNA PLAIN』。壁面には岐阜から金沢21世紀美術館を経てやってきた「DNA RIVER」が

芝生から花壇、展示室へと緑が続く。日比野氏は「(中庭の)芝生から花壇、展示室へと緑がつながっていくイメージです」としている

チップを貼る作業は会期が終わるまで続けられるが、どこまで緑の平原を広げられるかは来場者の手にかかっている。7月29日には日比野克彦氏によるトーク&ワークショップが行なわれるので、ぜひ、足を運んで、色紙チップを貼る作業に参加してはいかがだろう?

展示室の入口に色紙チップと糊が用意されている。記者も1時間足らずだったが取材を忘れて貼っていると、いつのまにか緑や資源のことについて、自然と向き合っていることに気がついた

会期前には、地域の人々や地元の小学生、ブラジル人学校の生徒を集め、ワークショップが行なわれた。日比野氏が見守る中、熱心にチップを貼るブラジル人の子どもたち