The 88がiPhoneで録音したシングル「Love Is The Thing」をiTunes Storeで販売している。

The 88が春にB-52sの前座としてツアーしていた時に、バンドメンバーの1人がiPhoneのApp Storeでマルチトラックの録音アプリ「FourTrack」(App Store価格: 1200円)を見つけた。ツアー中に楽曲のアイディアを録り貯めるために購入したものの、使ってみるうちに、どれだけプロフェッショナルなサウンドを引き出せるかに興味がわいたという。

録音は、iPhoneにヘッドフォンを接続、テンポを決めて最初にアコースティックギターを録り、ボーカルをかぶせて曲の大まかな枠組みを作成した。そして、おもちゃのドラム、シルバートーン・アンプにつないだギター、ピアノ、スピーカー内蔵のヤマハのキーボード、バックボーカルなどを録音。電子的に出力を調節できないドラムは全体に布をかぶせて音をミュートし、最適な録音レベルを得た。FourTrackは名前が示す通り4トラックだが、バウンス機能を備えているため、クラッシュシンバルや手拍子などの効果音も含む14トラックからミックスダウンした。

出来上がりを聞いたところリードボーカルが十分前面に出てこなかったため、最終的にはiPhoneにマイクとヘッドフォンの両方を接続し入力レベルの調節を可能にするAlesis ProTrackを使ってボーカルを整えた。

プロによる"iPhone録り"は音楽にとどまらない。Showdown ProductionsがiPhone 3GSで撮影したBJSRのミュージックビデオ「Play」、Steve Ellingtonが撮ったミュージックビデオ「Technologic Overkill」なども話題になっている。

サードパーティのアプリや周辺機器との組み合わせで機能が強化できるとはいえ、iPhoneのマイクやカメラはプロ向けではない。これまでのところ、そうした制限の中でプロがiPhoneを使ってプロフェッショナルな作品を作る話題性がプロモーションに利用されている印象だ。iPhoneだけで録音または撮影した作品という話題は一時的なものだろう。一方で常にユーザーと共にあるiPhoneのようなモバイル機器には、これまで残せなかったオーディオや映像を記録できる可能性や、ユーザー同士のつながりなどのメリットがある。今後は、こうした今日のモバイル機器の特徴をプロが利用した作品が出てくるのではないだろうか。