エルピーダメモリは6月30日、都内で記者会見を開催し、経済産業省に提出していた「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」(産業再生法)における事業再構築計画が認定されたことを明らかにした。同法の認定としては第1号となる。

具体的な資金の内訳は、日本政策投資銀行(DBJ)に対する第三者割当増資により300億円を調達(この内150億円を資本金へ組入予定)するほか、別枠としてDBJより100億円の融資を受ける。また、政府の認定を受けたことで、同社と取引のある主要4行を中心とした協調融資が1,000億予定されているほか、Taiwan Memory(TMC)から第2次増資として第三者割当増資により200億円程度が拠出され、総額1,600億円程度の資金がエルピーダに投入されることとなる。

エルピーダの代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏は、同認定を受けたことに対する責任について「私が辞めてそれで責任がとれるのであれば、いつでもやめる覚悟はある。しかし、現実はそれでは単に逃げているだけで、私の役割としてはエルピーダが利益を再び上げられるようにすることであり、それが後に続く人たちのためにもなる」との見方を示し、得られた資金については、「半導体不況はDRAMにも多大な影響を及ぼしており、将来的に生き残るのは2~3社と見ている。しかし、ただ生き残るだけでは駄目で、市場が好況に転じたときに設備投資ができるかどうかがポイント」とし、基本的には今回の資金の使用を現状は留保し、将来の状況を見極めて活用していくとする。

都内にて会見を行うエルピーダメモリの代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏

事業再構築の内容は、PC向けを中心とした汎用DRAMの生産をTMCとの関係を強化し台湾へ移管、同社広島工場である300mmウェハ対応Fab「E300」は、プレミアDRAM向けの設計・開発・生産に特化し、「処理能力向上を図るのではなく、コスト削減技術や(45nmプロセス以降の実現に向けた)プロセスの微細化に向けた投資を行う」(同)としており、有形固定資産回転率を2011年度には2008年度比で157%以上向上させることを目標とするとしている。

坂本氏としては、「基本的にDRAMやフラッシュメモリで付加価値を取れるのは先行出荷時の6カ月程度」としており、将来的にはカスタマの問題を解決できるメモリソリューションメーカーとして成り立つことで、メモリを製造するだけのビジネスから、サービスなどを含めた総合的なビジネスモデルへの発展を図っていくことを目指すという。

また、TMCとの関係は「非常に良好。メモリ開発も一部でスタートしている」(同)としているが、最終的な両社のポジションについては、「どの方向に向かうかはまだ協議の途中」(同)としている。株式の持合についても検討しており、「比率については決定していないが、筆頭株主になるほどではない」(同)とした。

なお、坂本氏は「今後3年程度でDRAM業界は韓国メーカー1社、日本-台湾連合で1社、米国-台湾連合で1社。もしくは韓国1社とその他連合1社になる可能性がある」と指摘、そうなった場合でも、日本にDRAMを残すことで、国内電機メーカーの最終セット製品の付加価値の維持、ならびに国内の半導体製造装置/材料メーカーの技術的アドバンテージの確保などを達成していきたいとした。