昨年比25%増の71971人が来場し、過去最高の来場者数となった「SIS 東京スペシャルインポートカーショー」(東京ビッグサイト、6月19日-21日)。今回もヨーロッパやアメリカなどの輸入車をベースとしたドレスアップやチューニングのトレンドが感じられる3日間となった。会場では、6月に日本で発売されたばかりの欧州プレミアムセダンをいち早くドレスアップし披露するショップや、日本上陸第1号、2号となるピュアスポーツカーを並べる販売代理店などが多くの注目を集めていた。そこで、ユーロ(欧州車)、アメリカン(アメ車)のグループ内で盛り上がりを見せていた展示から、公道走行可能なレーシングカーや面白ネタまでをまとめ、今年のSISの3日間を振り返ることにしよう。

W212 E-Class(スポーツサービスロリンザージャパン)

ブラバスやAMGと同じく、メルセデス・ベンツのチューナーとして知られるドイツのロリンザーは、今春登場したばかりのメルセデス・ベンツEクラスをベースとしたデモカー、W212 E-Classを展示。ロリンザーの十八番ともいえる、"エア抜け穴"付きフロントフェンダーも健在。左右2本づつの角型のリアマフラーも全体の印象をシャープに引き締めている。

アルティメイト112(ブラバス)

C-B63S(ブラバス)

ドイツの自動車雑誌「auto motor und sports」で、 "ベストブランド2009人気チューナー部門" 4年連続1位に選ばれているブラバスは、アルティメイト112やC-B63Sを展示。スマート フォーツー カブリオをベースにしたアルティメイト112は、ブラバス最小最強のスーパーカーということで、最高出力112psを発生させるターボエンジンを搭載し、その数字にあわせて112台の限定販売となる。いっぽう、メルセデス・ベンツCクラスをベースとしたC63ANGをさらにチューンしたC-B63Sは、C63AMG比で73psアップの530psというハイパワーを発生させるエンジンを搭載している。

560psというと、最近の話題としては、ランボルギーニ「ガヤルドLP560-4スパイダー」が5.2LのV10エンジンで発生させるパワーだ。数字だけでみると、C-B63Sは、あのスーパーカー・ランボルギーニと肩を並べる"モンスター4ドアセダン"だということだ。

エートスのラッピング例

日本BBSのRE-Vの装着例

小さなドレスアップ系ショップも負けていない。富士スピードウェイの近くにオフィスを構えるエートスは、車両マーキングや広告デザイン、レーシングカーのロゴなどを手がけるメーカーで、今回は、特殊なカッティングシートに包み込まれたスマート フォーツーを展示。曲面の多い同車に、見事に貼りこまれている様は圧巻。若干の歪みも見受けられない。ピンク系の鈍く輝くボディが、会場の遠く離れたところからでも発見できるほど目立っていた。スタッフによると「どんなラッピングでも相談にのる」という。

いっぽう、硬派なドレスアップの定番として親しまれているドイツのBBSは、ニューモデルであるRE-Vを、今春登場の新型BMW Z4に履かせて展示。アルミ鍛造1ピースホイールで、スポーク状にVラインをつくる新デザインだ。BBSの強くて軽く、スタイリッシュなホイールはどんなクルマに履かせても似合うが、欧州のスポーツカーにはすこぶるマッチする。

ハマーH2 DURAMAXディーゼルターボ(ハチハチハウス)

07y HUMMER H2 SUT MUTBLACK(ブームクラフト)

ロイヤル(左)とWHAワールドのガルウィングタイプのハマー

ユーロの次はアメリカンということで、話題のハマーに注目してみたい。アメリカGMのハマーブランドが、中国の機械メーカー・四川騰中重工機械に買収される模様を伝えるニュースがいろいろと流れているが、会場内にはそんなニュースを忘れてしまうほどのド派手なドレスアップが施された実車がいくつも展示され、賑やかな雰囲気だった。

ランクルやハマーなどの大型4輪駆動車のチューニングなども行うハチハチハウスは、「世界初!ディーゼルエンジンを搭載した右ハンドル仕様のH2」という看板を立てたハマーH2 DURAMAXディーゼルターボを展示。H2の巨大な身体を6.6L V8ディーゼルターボエンジンで軽快に操る楽しさがあるという。その最高出力は500ps。

また、ブームクラフトは、H2のボディをつや消しブラックに塗り、オレンジのタイヤを履かせた07y HUMMER H2 SUT MUTBLACKを展示。まるでNBAのバスケットシューズのようなデザインに一瞬ギョッとさせられる。WHAワールドやロイヤルのブースでは、ガルウィングタイプのハマーが展示され、その左右のドアを高々と天へ向けて広げていた。

2008年にクライスラーから登場した3代目チャレンジャー。70年代に生まれた初代は大ヒットモデルとなった

多彩なアメ車ベースのドレスアップカーのなかでも、今年はダッジ チャレンジャーの展示が目立った。関係者いわく、「登場当時の異常な盛り上がりが落ち着き、ベース車も最近やっと納入しやすくなった。だからアメ車系のチューナーがこぞって同車をフィーチャーしたのでは」と話していた。

そして、子供から大人まで世代を問わずワクワクさせてくれたクルマたちが、公道走行可能なレーシングカーたちだ。まず、輸入車販売代理店ズームは、オーストリアKTM社初の4輪車であるX-Bowを2台展示。この2台、日本に上陸した第1号と2号で、白いボディカラーのほうが価格840万円の最下グレードでストリートと呼ばれる。X-Bowは、ダラーラ製のカーボンモノコックによって車重はわずか790kg。エンジンはアウディ製の2.0L直4 DOHCインタークーラー付ターボで、最高出力は240ps。「インターナショナル エンジン オブ ザ イヤー」5年連続1位に輝くアウディTFSIエンジンに6速MTが組み合わさる。この類のクルマはオーナーが一部を組み立てるキットカーが多いが、こちらのX-Bowはラインで生産されている。

KTM X-Bow ストリート フロント(ズーム)

KTM X-Bow ストリート リア(ズーム)

さらに、輸入販売代理店エス・ティー・オーは、イギリスのラディカル社のスポーツカー、SR4-1.5、SR8-LMを展示。ルマン24時間レースのLMPカーを彷彿させるスタイルだが、堂々と公道を走ることができるクルマだ。こちらは4-5年前に日本上陸を果たし、すでに数台が日本どこかの道を走っているはずだ。価格はSR4-1.5が1100万円、SR8-LMが2200万円。安いほうのSR4-1.5には、エンジンはスズキ隼用のものにパワーテックが手を加えた1.5L直4 DOHCで、最高出力は250ps。走行シーンはYou Tubeでも公開されていて、その動画から聞こえる、運転席後方から響く吹け上がりの音やエグゾーストノートはまさに大型バイクのそれそのものだ。

ラディカルSR4-1.5(左)とSR8-LM(エス・ティー・オー)

SR8-LMのコックピット(エス・ティー・オー)

さて、こうしてSIS 東京スペシャルインポートカーショーの一部を見てきたわけだが、世界不況の渦中にあり、不振にあえぐ自動車業界の、"ドレスアップ・チューニングの世界"は衰退するどころか年々盛り上がりをみせている。新車のドレスアップや、力や速さを強調するチューニングばかりでなく、旧車のレストア、スーパーカーのメンテナンス、そして最近話題の痛車ネットワークまでに至る、クルマに対する楽しみ方が様々あることを実感した。ひょっとしたら、こうしたショーの中に自動車の人気再燃のカギが潜んでいるのかもしれない。

最後に、会場でおっ!?と思った変り種をアルバムにしてレポートを終えよう。

ハッピーは1972年式のロータスのFRPボディのメンテナンス技術をPRするためにロータス・ヨーロッパのボディでボートを製作

電装系カスタムを得意とするブリースはナイト2000仕様のトランザムをデモカーとして披露。インパネ周りもテレビのものとそっくり

ミニ専門店のインペリアルクラフトはテフロン加工フライパンのような鈍い輝きを放つ"つや消しブラック号"を展示

ミニデルタは、MINIクラブマンのエクステリア・インテリアにオーク材をあしらったカントリーマンのキットを装着したものを披露