大日本印刷は6月22日、有機薄膜太陽電池として50mm角の大型サイズながら、エネルギーの変換効率4%以上を達成したことを明らかにした。また、結晶系の一般的な太陽電池向けの脱アルミタイプのバックシートも開発したことも公表した。

大型基板で高変換効率を達成

有機薄膜太陽電池は、これまでも5%程度の変換効率が報告されているが、それらは主に約2mm角程度の小型の試験用太陽電池であった。有機薄膜太陽電池は、大型化を行うと、エネルギーの変換効率が大幅に低下する問題があり、今回の50mm角サイズにすると、変換効率は約0.1%程度に低下してしまうことが知られていた。

DNPが開発したセルサイズが50mm角の有機薄膜太陽電池

同社では、大型化によるエネルギー変換効率低下の要因は、発電した電力を外周の電極まで集電する際に、透明導電膜に生じる発熱による電気エネルギーのロスによるものであると検討。印刷技術であるフォトエッチング技術を応用することで、透明導電膜に特殊な開口を有する補助電極を設けて、抵抗値を下げることにより発熱ロスを抑制し、エネルギー変換効率を高めることに成功した。今回開発したこの補助電極を使用することで50mm角サイズのセルでエネルギー変換効率4%以上を達成したという。

一般的な有機薄膜太陽電池の概略と新開発の大型有機薄膜太陽電池の概略

同社は今後、さらなる大型化とエネルギー変換効率の向上など有機薄膜太陽電池の量産化に向けた研究開発を進め、2012年度中にサンプル出荷を開始し、2015年度までに実用化を目指すとしている。また、PETフィルムなどのフレキシブルな基材を使用したロール・トゥ・ロールプロセスによる低コスト化などの量産化検討も進めていくとしている。

アルミ箔不使用のバックシート

一方、バックシートは、6月中のサンプル出荷を開始、認定を完了次第、量産を開始する予定としている。

太陽電池に用いられるバックシートは、水蒸気などから太陽電池セルなどを保護するために用いられるもので、高い水蒸気バリア性が求められることから、一般的にはアルミ箔を積層して構成している。しかし、アルミ箔は、発電した電気を集める配線と接触すると、電気的な不良を起こすため、アルミ箔の端面に絶縁処理を施す必要があり、その作業負荷が課題となっていた。

今回、同社が開発したバックシートは、高い水蒸気バリア性を持つ無機酸化物蒸着フィルムと高い耐候性を持つ接着剤を用いたコンバーティングプロセスを開発し、高い水蒸気バリア性と耐候性を実現した。これにより、水蒸気バリア性は、0.01g/m2・day以下を実現しつつ、量産価格はアルミ箔を用いたバックシートと同等程度に抑えることが可能になるという。また、絶縁処理が不要になるため、太陽電池モジュール全体として、コストダウンを図ることが可能になるという。

従来のアルミ箔構成のバックシート(左)とDNPが開発したバックシート(右)

同社では今後、モジュールメーカーにサンプルの提供を進めることで、2012年度で約50億円の売り上げを目指す、としている。