沖縄の小さな島を舞台にした映画『真夏の夜の夢』のPR会見が17日、大阪市北区の沖縄居酒屋「島唄ライブ 琉球」で行われ、中江裕司監督と主演の柴本幸が出席した。

左から柴本幸、中江裕司監督

『ナビィの恋』(1999年)、『ホテル・ハイビスカス』(2002年)など沖縄の風土と人をいきいきと描く映画を撮り続けている中江監督の最新作となる『真夏の夜の夢』。シェイクスピアの同名戯曲をアレンジし、島を守るキジムン(=精霊)と人間の交流をファンタジックに描いている。

沖縄本島北部に浮かぶ伊是名島に昨夏、キャストとスタッフがおよそ1ヶ月半滞在して撮影されたという今作。柴本は「本島より沖縄の色の濃い離島に滞在して、みなさんの土地に対する愛情や先祖を大事にする思いが感じられました。島の人には独特のエネルギーがある。今回の映画にも出てくるキジムンを大事にすることによって、キジムンに守られているとも感じました。沖縄の自然は大好きなのでまた行きたい」と島の印象を。しかし、中江監督が「殺人光線が降り注ぐ(笑)」と表現する、真夏の沖縄ならではの厳しい日差しの中でのロケはかなりハードだったようで「長い時間立っていると頭がクラクラしてきて。できれば次は仕事ではなく、遊びに行きたいです(笑)」と本音? を漏らしていた。

東京から故郷の島に戻ったヒロイン・ゆり子(柴本)は、幼いころに森で出会ったキジムンのマジルー(蔵下穂波)と再会する

撮影のない時間は「スタッフのみなさんに手料理を振る舞ったり、きれいな夕焼けに360度囲まれる中で海に入ったり」と島の生活を楽しんでいた様子の柴本。島にすっかり溶け込み、地元の人とも仲良くなったようで「島の人は、4回ぐらい頼まないとひとつのことが通らないんですよ(笑)。民宿のお兄ちゃんに『○○はある?』と聞くと『あるある』って言う。それを用意しておいてと頼んでも、放って置いてどこかに遊びに行っちゃう。探し出してまた頼むと『あ、今から買って来ようねぇ』って言う。こんなことばっかりだったので、おかげで気持ちも大らかになりました(笑)」とのんびりした"島人"エピソードも明かしていた。

一方、沖縄在住の中江監督は、古くから島の人々と密接な関係にあった"キジムン"をテーマに据えた今作について「沖縄はここ10年ほどで風景が変わり、人の価値観も変わって日本の都会のようになってきた。そんな危機感を抱きながら撮りました」とコメント。「でも撮り終えてみて、沖縄の人は100年や200年の長いスパンで生きているのかなと思うようになりました。沖縄の人は何も失ってない。あらゆるものと生きるという昔からの感覚を忘れているだけで、50年ぐらい経てば思い出してまた風景も変わるのかもしれない」と沖縄への思いを語っていた。

NHK『ちゅらさん』(2001年)の"おばぁ"役で人気を博した平良とみ など沖縄のスターたちが脇を固める

キムジンをのびやかに演じる沖縄出身の蔵下を中江監督は「キムジンの血が8割ぐらい入ってんじゃないかな(笑)」と

『真夏の夜の夢』は7月25日より東京 シネカノン有楽町2丁目、シネマート新宿ほかで、8月15日より大阪 シネ・リーブル梅田、京都 京都シネマ、神戸 シネリーブル神戸ほかで公開される。

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