NECは6月18日、情報通信研究機構(NICT)の委託研究「ICTによる安全・安心を実現するためのテラヘルツ波技術の研究開発」の成果として、従来のものより2桁以上高感度なハンディ型実時間非冷却テラヘルツカメラを開発したことを明らかにした。同カメラと小型のテラヘルツ光源を組み合わせることで、ポータブルなテラヘルツ計測装置が構築できるようになる。

以前よりテラヘルツカメラはレーザのような高輝度の光源を検出することはできていたが、本質的に感度が低く、レーザ光源と組み合わせたテラヘルツ計測装置は大型で用途に制限があった。このため高感度非冷却テラヘルツアレイセンサ、テラヘルツ用光学系および画像信号処理の技術を開発することが課題となっていた。

NECでは、従来から開発してきた高感度非冷却テラヘルツアレイセンサに加え、テラヘルツ光学系用に特殊な薄肉レンズを開発、非冷却テラヘルツアレイセンサを封入した真空パッケージをテラヘルツカメラに内蔵させることと同時にテラヘルツ用積分機能(画素積分、フレーム積分)を追加開発することで、60Hzのフレームレートでさまざまなサンプルの実時間画像を取得できるハンディタイプの実時間高感度テラヘルツカメラを開発した。

NECが開発したテラヘルツカメラ(aが真空パッケージ、bが薄肉レンズ、cがテラヘルツカメラ本体)

また、光源とカメラを組み合わせた従来のテラヘルツ計測装置は事務机程度の大きさであったが、小型量子カスケードレーザ光源と組み合わせることで、ポータブルサイズのテラヘルツ計測装置を実現した。

テラヘルツ計測装置

同社は今後、NICTの自主研究の成果である量子カスケードレーザなどの光源とテラヘルツカメラを組み合わせることで、防災応用、半導体材料、複合材料および文化財などの非破壊検査の分野、また従来、酵素などの添加による発色や発光のような可視化手法を利用してきたタンパク質など生体物質の計測技術への応用、血液検査での利用、創薬といったライフサイエンス分野などに向けた用途開拓を進めていくとする。

なお、同社では今回開発したハンディタイプの高感度実時間非冷却テラヘルツカメラの製品化を進めていくとしている。