厚生労働省は22日、医薬品のネット販売規制について議論する検討会の最終会合を開いた。医薬品ネット販売を規制する省令については、2年間の経過措置を設けて6月1日から施行されることになったが、省令に反対する楽天会長兼社長の三木谷浩史氏は、会合後「訴訟を検討する」と話した。

22日開かれた「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」最終会合

2009年6月1日から施行が予定されている改正薬事法では、医薬品を「第1類」「第2類」「第3類」の3種類に分類。これに関し、2009年2月6日に公布された厚生労働省の省令では、第1類と第2類の医薬品のネット・通信販売を規制する内容となっている。一方厚労省では同日、医薬品の販売方法を再度議論するため「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」を設置した。

2009年5月11日に開かれた同検討会の第6回会合では、離島居住者や以前からの継続使用者に対して、伝統薬などの薬局製造販売医薬品と第2類医薬品の通信販売(ネット販売含む)ができるようにする「省令の一部を改正する省令案」(経過措置案)を厚労省が提示。この案について5月12日~18日にパブリックコメントが行われ、その結果を議論する場として、22日に検討会の最終会合となる第7回会合が開かれた。

パブコメの8割強が「医薬品ネット販売規制に反対」

検討会が行われた厚労省の会議室には、テレビ局や新聞社などから大勢の報道陣が詰め掛けた。これに関し楽天の三木谷氏は、「これだけの国民的議論になっているので、今回の会合はカメラの前で全て生で伝えるべきではないか」と提案。だが、北里大学名誉教授で座長の井村伸正氏が多数決をとったところ、出席した16人の構成員のうち賛成派は3人。厚労省側はカメラマンに退去を求めたが、なかなか帰ろうとしないカメラマンらに対し、「今後の取材に関しご相談させていただくことになりますので」などと話して退去させるなど、会合は冒頭から大荒れの模様となった。

予定時刻を10分すぎてようやく始まった会合では、厚労省事務局から、前回提示した経過措置案とほぼ同内容の措置案と、前回提示した経過措置案に対するパブリックコメントの結果について説明。パブリックコメントとして寄せられた総数9,824件の意見のうち、「経過措置に賛成」は42件、「経過措置に反対」は1,146件。「その他」に分類された「郵便など販売の規制をするべきではない」は総数の84.9%に当たる8,333件あった。

1,146件あった「経過措置に反対」の内訳は、「経過措置は不要」とするものが692件、措置の対象者をもっと拡大したり対象品目を拡大すべきなどの意見を含む「経過措置の内容に反対」が454件で、経過措置そのものに反対する意見と、賛成だが不十分であるとする意見が混在する結果となった。

國領氏は「規制すれば必ず脱法的なものがはやる」

これに関し楽天の三木谷氏は、「パブリックコメントをどう受け止めているのか」と厚労省事務局に質問。これに対し事務局は「パブリックコメントは数字を見るのではなく、原案になかったもので我々が気付かなかったものについて参考にするもので、骨子について変える必要はないと判断した」と回答。全国消費者団体連絡会事務局長の阿南久氏は「経過措置を不要とする意見が700件近くあるのに、なぜ経過措置を認めることになるのか分からない」と発言。これに対し事務局では「他のパブコメもそうだが、(行政が示した)原案でいいという人の意見は少ない。我々が気付かなかったことがあれば加えていく(のがパブリックコメント)」と回答した。

三木谷氏はまた、パブコメに寄せられた『離島に住んでいる人はよくて、山の中、例えば、薬局まで自動車で山道を1時間以上走らなければならない場所に住んでいる人は駄目なのですか』という意見を示し、「なぜ経過措置は離島に限っているのか」と事務局に質問。事務局は「離島の場合、陸上の交通手段による(薬局・薬店への)アクセスができないから」と回答した。だが、日本置き薬協会常任理事長の足高慶宣氏は、「『へき地』や『離島』といった概念がはっきりしているかのように議論するのはおかしい。経過措置案に反対だが、(施行するとしても)『離島』というような概念を入れるべきではない」と主張した。

その後は、医薬品のネット・通信販売を規制する根拠となる、厚労省が公布した省令の『対面の原則』を中心に議論が行われた。慶應義塾大学総合政策学部教授の國領二郎氏は「(厚労省が示した省令の運用で)病気になった本人だけでなく、代理の人が購入してもいいということであれば、対面の原則は崩れているのではないか。ネットをテーマに議論するからみんな頭に血が上るのであって、要はリスクコミュニケーションの問題ではないか。どうやったら本人にきちんと情報提供できるかを考えるべきだ」と述べた。

さらに國領氏は、「新型インフルエンザの感染拡大の真っ只中で、(対面販売を原則とする)省令を本当にこのまま施行していいのか。また、以前から言っているが、ネットでこういう規制をすると必ず脱法的なものがはやる」とも指摘した。

三木谷氏「厚生労働省に一般消費者の視点ない」

こうした議論の中、阿南氏、足高氏、三木谷氏、全国薬害被害者団体連絡協議会の増山ゆかり氏らが、経過措置案に対する反対意見をあらためて表明。一方、国領氏や日本チェーンドラッグストア協会副会長の小田兵馬氏は、消極的ながら「やむを得ない」として賛成を表明した。

会議後半、慶應義塾大学薬学部教授の望月眞弓氏は、経過措置案への反対の立場を明らかにした上で、「もともとこの案は、省令の施行により利便性を損なうという人のためのもの。そういう意味では、離島の居住者であることの確認や、施行前に医薬品を購入していたことの確認をきちんととっていく必要がある」と要請した。

青山学院大学経営学部教授の三村優美子氏は、「この検討会は、省令の円滑施行という目的で設置されたものであり、(省令は)今まで販売をできたものを一気に認めないとするものであるから、経過措置は最低限のやむを得ないものであり賛成。ネットもかってのような無法地帯でなくなる可能性も、この検討会で分かった」と話した。

7回に渡る会合の座長を務めた井村氏は、「経過措置案にコンセンサスを得るのは難しく、厚生労働省の責任でやっていただくほかない。このままの案でやるというのなら、望月氏が要請したような細かな点をきちっとやってほしい」と事務局に求めた。最後に井村氏は、「最後まで真剣に議論していただいて感謝している。安全な医薬品の供給がこれまでの議論の大前提なので、厚生労働省はぶれないで勇気をもって進めていってほしい」と述べた。

楽天の三木谷氏は会合後「弁護士と相談して訴訟も検討する」と述べた

経過措置は設けられながらも、基本的には対面販売を原則として医薬品のネット販売を規制する方針が固まったことに対し、楽天の三木谷氏は会合後、「アメリカもヨーロッパもアジアも認めているのに、まさしく時代に逆行するもの。厚生労働省がいかにひどい役所か分かった」と発言。さらに、「厚生労働省に一般消費者の視点は全くなく、今までの教訓も全く生かしていない。21日のシンポジウムで反対の意見を表明した国会議員や有識者、100万人以上集まった規制に反対する署名もあり、今後は弁護士と相談し訴訟も検討する」と話していた。

経過措置を定める省令案については、5月下旬に公布予定。2月6日に公布された省令とともに、6月1日から施行される予定となっている。