宇宙から地球を眺めるとこれまでの人生観が変わる - 宇宙飛行士の体験談などを読むとよくこんなことが書かれている。だが、宇宙まで行くことができない我々も、この写真を見れば、人生観が変わるとまではいかなくても、何かが心に響いてくるのではないだろうか。

NASAの水星探査機「メッセンジャー(MESSENGER)」が2005年8月2日に地球に接近(フライバイ)したときに撮影された南北米大陸付近の画像。右側が南米大陸、左側が北米大陸。真ん中のブリッジにあたる中米を挟んで太平洋と大西洋に分かれる

水星探査機「メッセンジャー(MESSENGER: MErcury Surface, Space ENvironment, GEochemistry and Ranging)」は2004年8月に打ち上げられ、地球や金星で何回かのフライバイ(スイングバイともいう)を行った後水星に向かい、現在は水星でフライバイを繰り返しながら接近中、2011年3月に水星の周回軌道に乗る予定だ。フライバイとは、探査機の燃料を節約するために天体の万有引力を利用して探査機の方向を変更する方法で、たとえば土星探査機のカッシーニもフライバイを繰り返しながら土星に向かった経緯をもつ。

上の写真はメッセンジャーの最初のフライバイ時に、地球からの高度2,348km、対時速度が秒速約11kmという条件下、まさに一瞬の邂逅を捉えたものだ。右側の南米大陸で薄白く煙っているところは、アマゾンの熱帯雨林で起きた大規模な火災の煙である。頂点付近には、大西洋で発生中だった熱帯性暴風雨の渦(ハーベイ)が確認できる。

メッセンジャーは水星の地形や大気の成分などを探査し、太陽系形成の謎に迫るという重大なミッションを負っている。次はどんな画像を届けてくれるのだろうか。この写真のように地球に住む人びとにとって、すばらしいおくりものであることは間違いないだろうけれど。