富士通は、企業ユーザー向けにウィルコムのPHSネットワークを利用し、遠隔操作によりノートPCのHDDのデータを消去する新たなソリューションを開発し、今年の第3四半期より提供すると発表した。

このソリューションは、富士通とウィルコムが共同開発したPHS通信モジュールを組み込んだ専用ノートPCで実現される。このモジュールは、ノートPCと別に独立したバッテリで駆動し、ノートPC本体のバッテリが切れた場合でも、1週間以上動作するという。

富士通が今年の第3四半期から提供する予定の盗難対策ソリューション

盗難等により、ノートPCのデータを消去しなければならない事態が発生した場合、システム管理者がインターネット経由でノートPCのIDやハードディスクIDを指定してデータ消去を指示。すると、管理サーバがウィルコムのPHS網を利用して、そのPCに対してデータ消去コマンドを発行する。

データ消去コマンド発行までの流れ

データ消去は、暗号化されたHDDの復号鍵を消去することにより行う。したがって、HDDが暗号化されていることが前提となる。これにより、HDD全体が消去され(システムファイルも)、いかなる方法でも復旧は不可能だという。

データ消去のプログラムは、BIOS上で動作するためWindowsの起動も必要なく、もし、PCがシャットダウンやスリープ状態でも、自動的に電源がONされて起動する。復号鍵の消去自体は、1秒未満で完了するという。ただし、プログラムの動作には、PC本体の電源は必要になる。

また、データの消去以外にPCをロック状態にして、起動させなくすることも可能で、データ消去が行われた場合は、結果をシステム管理者にレポートで報告するという。

データ消去が成功した場合、消去証明を発行

富士通によれば、電源オフの状態でもデータ消去可能なソリューションの提供は世界初だという。

富士通 経営執行役 パーソナルビジネス本部長 五十嵐一浩氏

サービス自体は富士通がノートPCのオプションで提供し、価格等は今後検討していくということだが、もし月額料金での提供の場合、数百円程度になるという。

富士通 経営執行役 パーソナルビジネス本部長 五十嵐一浩氏は、「2006年に比べ、2007年、2008年はノートPCの盗難や紛失・置き忘れによる情報漏えい事故は減っているが、これは企業がセキュリティ強化のためノートPCの持ち出しを制限しているためだ。これにより、『いつでも』『どこでも』『効率的に』というワークスタイルの革新も遅れている。これに対して、有効なソリューションを提供することは、パソコンメーカーの責務だ」と述べた。

ウィルコム 執行役員副社長 土橋匡氏

富士通では、グループ内の10万台規模のノートPCを順次この機能を搭載したものに入れ替えていく予定で、使い勝手などを検証していく。

また、今回のソリューションは、富士通とウィルコムが共同開発したものだが、ウィルコム 執行役員副社長の土橋匡氏は、もし要請があれば、他のパソコンメーカーに提供していくこともありうるとの見解を示した。