笠原健治 ミクシィ代表取締役社長

「過去最大の変革を起こすものになる」──。ミクシィ代表取締役社長 笠原健治氏は23日、東京都内で開催された「mixiアプリ カンファレンス 2009」において、SNS「mixi」で展開されるソーシャルアプリケーションプラットフォーム「mixiアプリ」への期待を語った。"コミュニケーションのインフラ"を標榜するmixiのさらなる進化のキーワードは「多様性」。従来は日記サービスがコミュニケーションの中心に位置したが、今後はmixiアプリによって多様なコミュニケーションサービスの提供を目指すという。同カンファレンスでは、mixiアプリに注目する多くの開発者に対し、公開スケジュールや開発支援プログラムなどについて説明が行なわれた。

ミクシィは、mixiのオープン化戦略「mixi Platform」として、mixi OpenID/ mixi Connect/ mixiアプリ(Open Social準拠)の提供を行なっている。その中でも「ユーザにとってわかりやすく、もっとも影響が大きい」(笠原氏)のがmixiアプリだ。ソーシャルアプリケーションと呼ばれるもので、ソーシャルグラフ(SNSのユーザ関係情報)を利用している点が一般的なWebアプリとは異なる。ユーザは今後、mixiアプリをmixi上に追加し、PCや携帯電話で実行できるようになる。マイミクシィのつながりを利用したカジュアルゲームや占いツールなどさまざまなmixiアプリの提供が考えられる。

mixiアプリの特徴

ソーシャルアプリケーションは、従来のWebアプリとは異なるタイプのサービスを提供できる

そうしたmixiアプリの開発はミクシィ1社が手がけるわけではない。笠原氏が「みなさんたちと一緒になって新しいコミュニケーションサービスを作っていきたい」と語るとおり、多くのSAP (Social Application Provider)がmixiアプリの開発に参入する。各SAPは、mixiアプリの開発にあたって以下のAPIを利用することができる(詳細は「mixi Developer Center」を参照)。

  • Person & Friends API:ソーシャルグラフ、プロフィール情報
  • Community API:コミュニティ情報
  • Activities API:マイミクシィ更新情報
  • Persistence API:データ永続化
  • gadgets. io API:外部Webサービス連携
  • Invite API(公開予定):利用中のmixiアプリに友達を招待
  • Photo API(公開予定):フォトアルバムにアクセスできるAPI

現在、mixiアプリ(PC)の開発者向けオープンβがスタートしており、8月には正式版としてmixiユーザ全体に公開される。9月にはmixiアプリ(モバイル)の提供が開始される予定だ。

mixiアプリの正式公開後の普及策としては、マイミクシィのアプリ利用動向(Activity)を表示したり、よく使うアプリを「マイアプリメニュー」として扱う枠を設けたりといった仕掛けを設ける。なお、mixiアプリは「インディーズアプリ」と、SAPの申請によってミクシィが認定する「認定アプリ」の2種類に分かれる。認定アプリは、カテゴリ掲載やランキング、検索の対象となり、利用者誘導などの点で有利な扱いが受けられる。

「mixiアプリ カンファレンス 2009」登壇者。写真左から、松本龍祐 コミュニティファクトリー代表取締役社長、浅沼誠 バンダイナムコゲームス NE事業本部 執行役員、辻野晃一郎 グーグル代表取締役社長、笠原健治 ミクシィ代表取締役社長、Jia Shen ロックユーアジア取締役、木村稔 リクルート メディアテクノロジーラボ 局長

mixiアプリの開発支援、収益還元プログラム

カンファレンスでは、SAP向けの支援プログラムも発表された。mixiアプリによる収益還元のエコシステムとして、広告モデル『mixiオフィシャル・アドプログラム』、課金システム『mixiペイメントAPI』を提供するほか、資金援助を行なう『mixiファンド』が用意される。

mixiオフィシャル・アドプログラムは、ミクシィが用意する広告をmixiアプリ上に表示し、その売り上げを還元するもの。1PVあたりの還元額を0.01円からとし、PV/UUに応じて還元率をステージアップする仕組みとなっている。本プログラムは認定アプリを対象に、9月から開始する予定。

ミクシィが用意した課金システムとしてmixiペイメントAPIも利用できる。ユーザがmixiアプリを購入すると、売り上げから決済手数料などを差し引いた8割がSAPに支払われる。課金システムは10月に開始予定。

mixiオフィシャル・アドプログラム

mixiペイメントAPI

mixiファンドは、「出資」「融資」「mixiアプリの買い取り」を通じてSAPを支援するプログラム。ソーシャルアプリケーションの企画開発力、収益力、マネジメント能力を基準に選定する。同ファンドの設立は4月8日に発表されており、今回のカンファレンスでは同ファンド適用第一弾として、コミュニティファクトリー(代表取締役 松本龍祐)への出資がアナウンスされた。同社が実施する第三者割当増資を、ミクシィが引き受ける。

「ソーシャルアプリケーション アワード」を開催

mixiアプリの開発コンテスト「ソーシャルアプリケーション アワード」の開催も発表された。グランプリは賞金100万円、応募期間は7月1日~8月31日、結果発表は10月1日の予定。審査基準や応募規約などの詳細は特設サイトを参照のこと。

mixiアプリ カンファレンス 2009には約400名が参加した。参加者からはmixiアプリを利用した新たなビジネスに対する期待感のほか、モバイル版mixiアプリに注目する声も多く聞かれた。登壇したグーグル代表取締役社長 辻野晃一郎氏も、mixiのOpenSocial対応を「有意義」と歓迎。「日本というモバイル環境が発達した国で、モバイルソーシャルのトッププレイヤーであるミクシィには、モバイル分野における仕様策定の面でも世界各国から大きな期待がかかる」と、ミクシィの役割にも期待を示した。