JR東日本は、従来の信号機に代わり、列車自ら位置検知を行い、無線を使って車上・地上間で双方向に情報通信を行うことにより列車を制御する新しいシステム「ATACS(アタックス)」を、宮城県の仙石線、あおば通-東塩釜間において、2011 年春に使用開始することを目指して取り組んでいることを発表した。

「ATACS」は、1995年にシステムの開発に着手し、1997年から仙石線の一部区間を使用して実列車走行試験を行ってきた。

従来の列車制御システムの多くは、レールに電流を流して列車が在線する位置を検知し(軌道回路)、信号機によって後続列車の運転士に対して走行可能な区間と速度を指示する方式を採っているが、この方式だと、列車は信号機で区切られた1区間(閉そく区間)に1列車しか運転できず、線路の周りに軌道回路・地上信号機・ATS・ケーブル類等の多くの地上設備を設ける必要があったという。

従来の閉そく式

一方ATACSは、走行する列車自ら線路内に一定間隔に置かれた地上子と速度計から算出した走行距離を基に自らの列車の位置を算出し、無線により自らの列車位置を地上の装置へ送信する。そして、地上の装置は全ての列車位置を把握し、各々の列車に対してルート及び停止位置を算出して、無線により各々の列車に送信する。

各列車は、受信した情報を基にデータベース上の車両性能、線路曲線・勾配等の制限速度条件を加味して速度照査パターンを作成し、列車速度がそのパターンを超えないようにブレーキ制御を行う。これらの仕組みにより、従来方式に比べ、設備費用を削減する効果が見込まれるという。

ATACS

また、踏切鳴動時間の適正化や、土砂崩壊、強風時等の災害防止用発報信号との連携、ダイヤ乱れ時の適切な情報案内や、乗り心地の良い自動運転などへ発展できるメリットがあるという。

JR東日本では、仙石線において2011年春に第1ステップとして列車走行に必要な最低限の機能を、2012年春に第2ステップとして列車走行の周辺の機能を導入していく予定だ。